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女湯の男の子

下町の銭湯【日の出温泉】

戦後間もないころから営業している、老舗の銭湯。

脱衣所も浴室も男女別。

レギュラーキャラやモブキャラ問わず、いろいろな人が出入りしている。


クラスであまり目立たない中学生の私、モブ子は友達と老舗の銭湯に来ていた。


「最近、モブ太くんといいことあった?」

「ひみつ。」


黒髪二つ結びのゆるふわちゃん。

金髪ツインテールのギャル子ちゃん。

黒髪ショートボブの麦ちゃん。

黒髪おかっぱの私。

それと


「蓮くんこんにちは。」

「恥ずかしがってるね。」


麦ちゃんの後ろに隠れているのは、弟の蓮くん。

保育園の年長さん。

麦ちゃんの後ろではにかんでもじもじしている。


「ほら、お姉ちゃんたちにこんばんはって。」

「…こんばんわ。」


「こっちおいで。」

「大丈夫だよ。『女湯に男児がいるザマス!』って非難する淑女は、下町の老舗の銭湯にはいないから。たぶん」

「たぶんて…」


常識のお姉さん「蓮くんお姉ちゃんと一緒に来たの?」

常連のおばさん「よかったねー。」

常連のおばあさん「小さい女の子も男の子も、おばちゃん達が子供や孫のように見守るからね〜。」



「あ、れんくんだ。」

「蓮くん、麦ちゃん。こんばんは。」


「今晩は。さっちゃんもこんばんは。」

「むぎおねぇちゃんこんばんわー」


蓮くんのクラスメイトの佐智ちゃんとお母さんの鈴鹿さん。

「って、今問題なんじゃあ…」


「大丈夫よ。お姉ちゃんも一緒だし、お母さんは共働きで一緒じゃないことも多いけど、その分教育はしっかりしてるから。」

鈴鹿さんがフォロー。


「セクハラや痴漢をしないように、お姉ちゃんが眼を光らせてるから。ね?」

「わたしはおにいちゃんがいるからだいじょうぶだし、ここだとれんくんのほうがアウェーだし。ね?」


「う、うん…」



「れんくん、さっちゃん、こっちであそぼー。」

「はーい。」


ギャル子が子供たちと一緒に遊ぶ。


「子供に優しいギャル。」

「ギャップ萌え〜」

「末っ子だから弟か妹が欲しかったの。」


「ギャルこちゃんはおっぱいちいさいね。」

「やっぱり可愛くなーい!」



常連のお姉さん「スカッとニッポンみたいな再現ドラマで、『たとえルールを守ってるにしても、女児の安全の為に反対ザマス!』って非難するお客さんがいて、男児と男児ママが困ってるところに、かっこいいおばさまが論破して、常連のおばさんやおばあちゃんが諭して、お客さんが出て行くシチュエーションとかありそうだけど。」


常識のおばさん「諭したり嗜める勇気は、おばさんにはないわ〜」

常識のおばあさん「おばあちゃんもこう見えて事勿れ主義だしね〜」


「麦ちゃんも蓮くんもいい子なのは、おばさんが保障するから。もし淑女たちが何か言ってきたら、男児ママで女児ママの私がガツンと言ってやるわ!」

力こぶを作る鈴鹿さん。



ガラガラ


40〜50代くらいの貴婦人を思わせる風格の女性が入ってくる。

鍛えていると思われる、引き締まった体。

モブ子(綺麗。でも…)


貴婦人「失礼。」

洗い場に座る。


「おばさんのせなかにかるたがかいてある。」

「はなふだのいのしかちょうだよ。」

(見ちゃだめっ)


背中に花札の猪鹿蝶の紋様。

浴室以内に緊張が走る。


「お嬢ちゃん、花札知ってるの?」

「はい。しんせきのおばあちゃんやいとこたちがしてるのをみてました。」

「ママはよくわからないけどねー。」

「サマーウォーズみたい。」


「そう。」

貴婦人は優しい笑みを浮かべる。


「若い頃にいろいろあってね。」


若い頃にいろいろあったらしい貴婦人さん。

いろいろが何なのかは聞かなかった子供たち。



しばらく穏やかな時が流れる。


「『男児がいるザマス!』と非難する淑女が出てこないね。」

「出てきてほしくはないけどね。」

「公衆の場で騒ぐ人はいないでしょ。」

「条例のルールは守ってるしね。お姉ちゃんも坊やの面倒を見れてえらいわよ。」

貴婦人が優しいまなざしを麦ちゃんに向ける。


「はい。ありがとうございます。」

照れつつも、安堵した表情の麦ちゃん。



お風呂から上がり、ご当地のコーヒー牛乳を腰に手を当てて飲む。


「ぷはーーっ」



「れんくん、またあしたねー」

「うん!さっちゃんまたあした」


「れんくん、男湯にはいつ頃から入る?」

ギャル子が尋ねる。

「しょうがっこうにはいったらおとこゆだけど、ひとりではいるのはもうすこし大きくなってからだって。」

「危ないからね。」


「ハダカはガッツリ見てたよね。」

「まぁ、見るくらいなら…ね。」

「蓮くんなら大丈夫でしょ。」

人を見る目が厳しめのゆるふわちゃんが言うなら大丈夫かな。


「それよか、れんくんとさっちゃんが気になるよねー。」

「ああ、あの子は担任のつばめ先生が好きだから。」


「王道きたー」



それから、猪鹿蝶の貴婦人さんは銭湯の常連になり、休憩室で花札を教わったりしている。




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