王国編概略 人物概要
初期プロットです
幼年期
ワーズウェントとブレイグの王弟が共に過ごしたのは8~11歳の間の事。
ワーズウェントの王子はまだ庶子として認められておらず、母親と共にブレイグ首都辺境の母の弟の家の側に暮らしていた。
ブレイグの王子は村境の見晴らしがいい丘の上に息抜きに来ていた。
ここで、二人は互いの出自を知らぬまま出会う。
遠慮のないブレイグの王弟にワーズウェントの王子は子供らしさを出すことを許され、その後の窮屈な王族の生活では味わえない、開放的でかけがえのない時を過ごす事となった。
しかしワーズウェントの王子はその出自が判明し、王宮に呼び戻される。王位を継ぐ後継として。
この直後、ワーズウェントとブレイグは開戦している。
ブレイグの王弟もワーズウェントの王子の身元を知り、彼に自らの出自を明かし別れを告げるのであった。
少年時代
突然の友との別れに戸惑うワーズウェントの王子は、失意のまま国元に帰る。その旅路の途中で太陽のような剣士を目指す少女と出会い、その後の指針を与えられた。
王に認められ徐々にその重いその立場を理解する事となるが、二国間の友好関係を回復させる事を目標に、勉学や剣術の修行に打ち込むのだった。
王子が14歳の時、オニクセル侯爵家の兄妹が側近として王城に上がる。
妹は後に王子妃となり、兄は後にワーズウェントとブレイグが勝敗を決した戦に帯同する事となる。
決意
ブレイグとの和平を父王に勧める王子であったが、当のブレイグ王が和平に応じず、戦火は拡大。
両国の消耗は凄まじく、ついに王子は自ら前線に赴く事を決意する。
侯爵令嬢と誓いを交わしたわずか半年後の出陣であった。
短期戦でブレイグ王城を陥落させる戦略は、まるで魔法でも見ているかのように劇的に進められた。
あまりにあっけない様に、両国の民衆や兵士は今まで表舞台に上がらなかった王子に恨み事を呟かずにいられなかった。
結末
王子の初陣…彼の生涯ただ一度の出陣は、圧倒的大勝利で幕を閉じた。
後の世にまで長く語り継がれた彼の栄光の戦い。
しかし王子が本当に守りたかった者は、彼自身の手で失う結果となる。
ブレイグ郊外の丘の上で再び二人は邂逅する。
ブレイグの王弟は、己の責任を果たす為に、剣を交えけじめをつける事を望む。
ワーズウェントの王子は、運命の皮肉を呪いながら、二人が出会った同じ場所で剣を交えるのだった。
辛くもこの戦いに勝利したワーズウェントの王子はブレイグを併合後、王位継承権を返上しブレイグ大公として、その生涯の間、争いのない平和な世を導いたという…。
*********
ロブはグレンに様々な軍事戦略書を見せ、語り合った。
中には門外不出の物もあり、その度にグレンは遠慮したが、ロブは「お前は、俺の家来になるんだからかまわない」と強引に、見せられた。
正にこれが国の命運を分ける結果になろうとは、誰も知るよしもなかった。
この事があったから…ワーズウェントの王子は最後まで出陣を拒み、ブレイグの王子は敗戦の責任を痛感し、己が命で償ったのだ…。
しかし、それが故に戦禍の拡大が最小限であったとも言えるのだった。
誰もが称えた栄光の戦い…
中には今まで表舞台に上がらなかった王子に何故もっと早く出陣しなかったのか、責める声もあった。
「僕は卑怯ものだから…」
何がどう、とは続けず、王子は呟き寂しそうに微笑むのが常だった。
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◉王国編人物
グレン・ワーズウェント(グレン・ブレイグ大公)
ワーズウェントの王子。
12歳まで母の出身であるブレイグの辺境で王子である出自を知らぬまま過ごす。
彼の母はワーズウェントの王妃の侍女の一人だったが、王妃しか纏わぬはずの香水の瓶を零してしまったことで、ある晩、酔った王と関係を持ってしまい子を身籠ってしまう。
時期を同じくして実家に不幸があり、里帰りをした際に懐妊を知り、王の子を宿した事実に恐れ戦き、そのまま弟が暮らしているブレイグの辺境の村に身を隠したのだった。
弟の支援を受け、質素に暮らしていたが、やがて病に倒れてしまう。
偶然にも村を訪れた王の側近が、王の幼い頃の面影を残したグレンに出会い、彼の母を訪ねたところ、昔王妃に仕えていた面識のある侍女だった事から王の子ではないかと問い糾した。
死の淵にあった彼女は逃げられない運命を悟り、王の子である事を告げ、この世を去った。
親友のロバートに相談した。このときロバートもブレイグの王弟である事を打ち明けている。
もうじき2国間が戦争になるので、身の上が知れれば人質になる可能性が高いことから、急ぎワーズウェントに帰るべきと諭され、王の側近とともにワーズウェントに旅立つ事となった。
ワーズウェントの王都への旅路の途中、オニクセル侯爵領に立ち寄った際、後に側近、王子妃となるジェシカに出会う。
まだ王に認められた訳ではないため、旅人の少年と領主の娘としての出会いだった。
王都リバースの城に到着するやいなや王、王妃、王女に謁見ののち、即王子と認められ、教育を受けることになった。その際香水の匂いで間違えてできた子という衝撃の事実をサラリと告げられた。
グレンは母から作法的な事を教わるとともに、村の学校に少し通った程度だったが、教師が絶賛するほど飲み込みが早く、結果教師の熱が入りすぎてしまうほどだった。14歳になる頃にほぼ政務もこなせる状態までに至っている。
しかし、元は平民として育った身の上。常に王子ならどう考えるかと思考を置き換え王子の仮面を被り過ごす事となった。
星が落ちてできたという王都の湖で、ジェシカと再会。その後、オニクセル侯爵領の子息アンソニーが王子の従者となった。彼は、ジェシカの双子の兄だった。
中性的な顔立ちはジェシカとそっくりで驚いたが、のちに怪我をした兄になりすましたジェシカ本人であったことが判明する。
本来ジェシカはアンソニーが復帰した段階でオニクセル領に帰る予定だったが、結局男装のまま城に仕えることになった。
国も母も親友も失い、思想も環境も違うワーズウェントで素の自分を出せずに生きていたグレンにとって、ジェシカは唯一、自分を出す事ができる存在だった。
共に過ごす日々に形にならない思いが積み重なる。
5年のち、グレンから熱烈にプロポーズし、王子妃に迎えるが、側近としては大変有能な彼女であったが、社交はまったく役にたたなかったらしい。王子の仮面が維持できなくなるほど余裕を無くす様子もしばしば見られた。
婚姻後、1年もたたないうちにグレンの出陣が決まり、ブレイグへ向け挙兵することとなった。
その際もジェシカはアンソニーと入れ替わり、こっそりとブレイグまで従軍した。
国で一番の剣士を目指していただけあって、能力的には何の問題はなかった。
その戦場でジェシカはグレンの命を振り切り敵陣へ突撃。劣勢を覆すも捕らえられ…その先で狂王の罠に落ち、意識のない中で王弟ロバートに抱かれることとなる。
数年に及んだブレイグとの戦火は、王子出陣から2ヶ月あまりでワーズウェントの勝利に終わった。
その際、親友であった王弟ロバートとは一騎打ちにより、グレンが勝利している。
戦争終結のため友をその手にかけ、妃はそうと知らず親友の子を宿す…。その苦悩を一人の胸に収め、グレンは王子の仮面をかぶり続ける。
ブレイグはワーズウェントに併合され、王子夫妻は戦後処理で再びブレイグに赴任することとなった。
その後、王子妃は双子の男子、そして娘を二人出産している。
旧ブレイグ領はワーズウェントの助力はあったものの、医療、医薬の分野で目覚ましい発展をとげ、大公領として自治権を獲得する。
初代大公には王位継承権を返上したグレンが大公を叙爵された。
のちは長子であるロビンが跡をつぎ、次子のアレンが宰相となっている。
第3子エルンは医療分野の先駆者として後に近代医学の祖と言われる存在になる。
年の離れた末子レベッカは自由気ままにお忍び旅好きで、平和の世を満喫した。
晩年はジェシカと二人穏やかに過ごしたという。
ロバート・ブレイグ
ブレイグの王弟。
母親は没落した男爵家の出身だったが、父王の目に留まり側室に召し上げられる。
男爵家の離散により後ろ盾を失い、肩身の狭い日々だったようだ。
亡くなる間際、精神を病んで夜な夜な王城を徘徊していたため、より周囲から忌み嫌われていた。
ロバートが2歳の時に亡くなっているため、彼は母親の事はほとんど覚えていない。
幼子を持て余した王は、年老いた侍従にロバートの養育を託し、近隣の村に小さな屋敷を与えた。
ロバートは幼少期からの少年時代をこの屋敷で過ごすこととなる。
妾腹の王子とはいえ、世継ぎの王子はロバートの兄フレデリック一人きりのため、侍従からひそかに後継者教育を受けることになる。
ただ、屋敷からでたら、ただの腕白小僧でガキ大将だった。
生い立ちとは裏腹に非常に明るい性格で、唯一かわいがってくれた兄を大変慕っている。
隣の村に住んでいたグレンとの出会いは、彼が住む村での事だった。
小高くなった丘の上からは遠くに王城も見え、いくつかの村と、森と、山々が見渡せ、大好きだった。
木の上の登ると更に良く見える。
そこへ泣きべそをかいたグレンに出会う。銀色の髪。細く華奢な体つき。
大きな紫の瞳から大粒の涙がこぼれていたが大変愛らしい少女に見えた。
一目ぼれだったが、声をかけて3秒でロバートの初恋は終わった。
病弱な母を支えながら日々暮らしているという。寂しい境遇につい自分を重ねてしまう。
「俺も母上は死んじゃったし、父上とも別々に暮らしてるんだ。お前、俺の弟分になれよ!」
ロバートはそう言って半ば強引にグレンを連れ回し、親友だからと国家機密を得意げに共有した。
兄王には遠ざけられて、騎士になる事も許されなかった為、村の自警団員として働く。
兄王の後添いとなった第二王妃へ義姉として交流を重ねていたが、子を残す能力のない兄王から、兄王のフリをして第二王妃や以降娶る王妃たちを抱くように強要され、従う。
戦禍で疲弊しきったブレイグ。ある日自警団に捕らえられた懐かしい面影の銀髪の青年に、親友が、かつて自分が伝えた知識を使い、戦争を終わらせるために戻って来たことを悟る。
しかし、兄王の罠により、第四王妃と言われ抱いた娘が親友の妃である事を知り、ようやく兄王とブレイグに終止符を打つことを決意する。
秘密通路を抜けて来た親友に己の過ちを全て告げ、丘の上での決着を望み、グレンに討たれた。
丘の上に向かう前、第二王妃と短いながら思いを交わし合い、つかの間の幸せな日々を過ごした。
ジェシカ・オニクセル
オニクセル侯爵家の双子の妹。
母とは幼い頃に死別。
双子の兄と常に一共に過ごし、男の子のように、育ってしまった。
城下町に出ては腕試しをしていたため、町の荒くれ者は大体舎弟のようなものだった。所詮辺境で国境の町である。
野党討伐にも率先して出かけ、荒くれどもを無理やり更生させていた。
ガラの悪い男たちは居場所を見つけると口が悪いだけの気のいい連中になり、良い働き手になった。
夢は、国一番の剣士になる事だった。
14歳になり、オニクセル領に訪れたグレンと出会う。身分を隠しての来訪だったため、王子と知らず親交を深めた。
その2年後、アンソニーが王都に上がることになったが、骨折と発熱により登城が難しい事を理由にジェシカが代わりに王都へ向かった。この時点では身長も変わらずほぼ同じ見た目だった事、実績を示すいい足がかりになる事が彼女を駆り立てた。
登城する前に王都リバースに滞在。人目を忍んで水浴びしているところ溺れて、グレンに助けられた。
再会したグレンはまだ細身だが見違えるように大きくなっていた。しかし人懐こい様子は変わらず、微笑ましい交流を持てた。
いよいよアンソニーとして登城した日、ジェシカは衝撃を受ける。仕えるべき主君として紹介されたのは、故郷で出会い、湖で再会した少年だった。
王子は物静かで怜悧な印象だった。
まるで違う印象に非常に戸惑ったものの、アンソニーとグレンに面識はなかったため、そのまま王子と従者として過ごすこととなった。
ぎこちないながら、従者としての日々を過ごすうちに、仕えるべき主として尊敬の念を抱くようになる。
しかし、ある日突然、令嬢に扮した兄アンソニーがジェシカとして登城してきてその日々に終止符が打たれる。
その場を取り繕おうとするも、ジェシカに違和感を抱いた王子についに入れ替わりが露見してしまった。
王子のはからいで城に残ることを許されたジェシカは、以降王子に忠誠を尽くし、週の三分の一を王子の従者として、残りを騎士団所属で過ごすこととなった。
城に上がって5年。父から絶えず縁談が持ち込まれていたが、ろくに話も聞かずにやり過ごしていたところ、酒の席で相手は王子だと本人から聞くことになる。
断ってもいいと前置きされた求婚に、あんまりだと号泣。
思いが通じて口づけを交わし合うが、その事実を忘れるという失態を犯す。
王子に聞いても昨日の事は忘れてほしいと言われ、釈然としないジェシカ。
男が忘れてほしいなんて事は一つだ!酔った勢いで色々したんだろう!とカオスに突き落とす兄アンソニー。
断片的に思い出した王子の口づけから、一夜を共にしたと勘違い。忘れてほしいと言われたことから失恋確定と誤解し、せめてもう一度、思い出に一夜を共にしたいと「もう一度お願いします!」と王子に強要して、再度の求婚を受ける。
誤解を都合よく解釈した王子に見事籠絡される。
うだうだ色々あった後、無事に誓いを交わし、晴れて王子妃になる。
しかし、幸せな日々も一瞬で過ぎ去り、政務から遠ざけられ寂しい日々を過ごす。
王子の出陣が決まり、待ってて欲しいと懇願されるも、アンソニーと入れ替わり従軍。
戦乱の折、単騎で劣勢を覆す活躍を見せるが、敵将と激戦の末に捕らえられる。
この時の戦いぶりは後にブレイグ戦役の鬼神の伝説として語り継がれる。(アンソニーの活躍という事になっている)
ブレイク王へ和平を訴えるが、その狂気に触れ説得を断念。処刑宣告を受ける。
意識のない間にブレイク王の策略により王子の親友でもあるブレイクの王弟に抱かれるという悲劇が襲う。
救出のため王城に潜入した王子が自分が抱いたと偽装したため、後に本人は知らず父親違いの双子を産むことになる。
親友である王弟をその手で討った傷心の王子に寄り添い、戦後処理で向かったブレイグで出産。その地で一生を終える。
双子の男児の下に女児が二名産まれている。
子どもはそれぞれ大公、宰相、近代医療の祖、そして気ままな旅人になる。
エリザベス・ブレイグ(リーザ、ベス)
外伝ヒロイン。本編は第二王妃とだけ言及。
暴動で妻子を失ったブレイグ王に、第二王妃として輿入れする。
しかし、その実情は第二王妃としての務めではなく王からの虐待に耐える日々であった。
月に一度城を訪れる王弟との語らいを唯一の慰めとしていた。やがて待望の子を身籠るも、王からの虐待による負荷から二度流産してしまう。
いつの頃からか、自分を優しく抱く存在が王ではないことに気がついていたが、その欺瞞の幸せに生きる意味を見いだし、真実を知りながら口を閉ざすことを選んだ。
王弟がブレイグ王を手にかけ、別れの挨拶に訪れた際にその気持ちを初めて吐露し、王弟と真実心を通わせ、3日間の短い幸福の時を過ごす。
王城陥落、王弟死亡の折、死罪を願いいれるも敵であるグレンから王弟の生きた証として生きるよう諭される。第二王妃は陥落時に自刃した女剣士を身代わりに葬りさられた。
その後、一人息子を出産。孫の成長を見届けるまで長く生きた。
アンソニー・オニクセル
オニクセル侯爵家の双子の兄。
妹と野党討伐で活躍し、「オニクセルの双星」の異名をとる。
王城への出仕が決まった直後足を骨折。寝込んでいる間に妹が身代わりで出仕したと知り、身動きが取れない状況と行動が軽い父と妹に苛立ちを募らせ、意趣返しで自分もジェシカとして過ごすという暴挙にでる。
怪我が治り、後日王都に来たアンソニーは、ジェシカと入れ替わっても分からないほどよく似ていた。性格はだいぶ違うが。
入れ替わっている間、自分もジェシカの服を着ているうちに色々目覚めたらしく、公式の場以外はオネエ言葉になっていた。
ブレイク戦乱において、王子から置き去りにされた失意の妹に、再度の入れ替わりを提案し、戦地へ送り出す。
数年前ならいざ知らず、ゴツい王子妃姿で、やりたい放題だった。それでも、対外的には出陣に同行したのはアンソニー、王子妃ジェシカは城に残っているという体裁を貫き通した。
ちなみにここでアンソニーは王女クラウディアと意気投合し、仲を深め一年後に婚姻の運びとなる。
王配として社交もオネエ言葉のまま制した。
形にハマらず性別も気分で柔軟に使い分け、ありのままの自分で生き抜く。
クラウディア・ワーズウェント
グレンの姉。元は後継者教育を受けていたが、それを息苦しく思っており、グレンの出自が判明してからは彼にその立場を喜んで譲り渡した。
即決即断の高い政治能力を持っており、グレン出陣の折は政務を代行。その能力の高さを証明した。
グレンは王位継承権の放棄を頑なに主張し、ついにクラウディアが折れる形で女王に即位。グレンは大公へ叙爵する事となった。
王子妃になりすましたアンソニーと公私ともに意気投合。王配に迎える。
王子二人を産む。
概略はこのとおりグレンとロバートがメインだったのですが、書き始めてみればグレンはジェシカに夢中になってしまって、なかなか丘の上にたどり着きませんでした。
人物概要は執筆中にまとめていたものです。
ロバートは描けなかったエピソードがありますね。
いつか外伝で書くかも…。




