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後話 戦後の愚痴大会

24凱旋の3日後くらいでしょうか。

ボーイズトークです。

性的表現(?)があるので、苦手な方はお気をつけください。



「まずは、勝利を祝して、カンパーイ!」


 アンソニーの音頭でビールジョッキが掲げられた。

 カンカンカンっ

 金属製のジョッキが合わさる音が響き渡る。

 ここはワーズウェントの軍部の一室。メンバーはアンソニー、デイビッド、セイン、そして無理やり参加させられた王子だ

 このメンバーは公式にアンソニーとジェシカが入れ替わった事を口にできる面子だった。


「みんな、本当にご苦労さまだったわねっ!でも、思ったより早く帰ってこれてよかったわ。ジェシカ、またムチャしたんでしょ?なんか、私への英雄扱いが凄くて、話し合わせてるけど、どゆこと??詳しく教えてちょうだい!」


 アンソニーが出陣した3人を労い、話を促した。


 ジェシカは、乱戦で戦闘不能となった王子から指揮権を奪うと、敵陣に躍り出て斬り込んで、敵軍を撤退させたのだ。  

 それは、アンソニーの武勇伝として巷に流布していた。 


「まず、王子が進軍中に単独行動してブレイグの自警団捕まってですね」


 セインがだいぶ前の時系列で説明しだす。

 武勇伝には関係ないが、吐き出したくてしょうがなかったようだ。


「はい?」


 予想外だったのか、アンソニーは疑問符付きで聞き返す。

 しかし、本番はここからだ。


「それを女装した…あ、村娘に扮したジェスが迎えにいって、自警団で団員に襲われかけて…」


 デイビッドがセリフを引き取るように続ける。


「ちょっ!襲われっ?」


「自警団の団長が止めて、未遂で終わったけどな。それに逆ギレした王子が、ジェスを狩人の小屋に連れ込んで、一晩中変な声聞かされてよぉ…」


「やめろデイビッド!それは内緒だと!!」


 王子は慌てて止めるがデイビッドの恨み節は止まらない。


「あんなアイコンタクト振られたってよお…。一応見張りなんだから立ち去るわけにもいかないし、俺ぁ地獄だったぜ」


 やってらんねぇ!と、デイビッドがジョッキをゴクゴク飲んで空にする。


「もしもし?あんたら、戦地で不謹慎過ぎない?」   


 アンソニーは会話の流れについていけず、引きつっている。


「とにかく!狩人の小屋からはスッキリした顔の上機嫌な王子と、疲労困憊のジェスが出てきた!」


 座った目でダァン!とジョッキをテーブルに置き、デイビッドが続けた。


「その後戦闘になったんだが、王子が指揮が下手くそだからって、ジェスが援護に飛び出してって、夫婦喧嘩が始まったんだぜ」


 セインがコクコク相づちを打つ。


「ジェスさん、王子に邪魔です!下がれ!ってバッサリ言い渡してましたもんねぇ」


「僕は後方支援を言い渡していたのに、言う事聞かなかったんだ…」


 王子はビールを一気にあおり、ぷはーっと深ーいため息をついた。更に酒樽から追加を注ぐ。


「戦場で夫婦喧嘩!?あんたたち、相変わらず、時と場所を考えないわね!?」


 アンソニーも相変わらず、全く敬意がない。


「王子がジェスを庇って落馬で脳震盪起こしたもんだから、ジェスが部隊の指揮して、バッタバッタ敵をなぎ倒して、こっちが優勢になったんだけどさ。多分お前が英雄扱いされてるのココ」


 ようやくアンソニーが聞いた部分の本題である。


「さすがジェス!やるわね!オニクセルの野党討伐の時も、あのスピードは誰にも太刀打ちできなかったのよ!ああ、その場にいたかった!あの子が速さで私は力で、私たち、無敵だったのよ!」


 アンソニーは目を輝かせて、妹と自分を褒め称えた。


「でもねぇ。その後の敵将と一騎打ちで捕縛され、連れていかれたんてすよ〜」


 セインがサクっと水を差す。


「ふぁ!?捕まった!?うっそぉ!」


 アンソニーは口をあんぐり開ける。


「みんなにはジェス…アンソニーはうまく立ち回るだろうから、見捨てるような事言っといて、置き手紙一枚残して、単身ジェスを救い出してきたんだぜ。空の天幕に置き手紙。俺はもう、生きた心地がしなかったぜ。何とかごまかせってさー。ふざけるなっつーの!」


 再びダァン!とジョッキをテーブルに叩きつけられる。すでに5杯目だ。


「仕方ないだろう。兵を動かせばジェシカを処刑するって言われちゃさ。僕は隠し通路の存在を知ってたからね。囚われのお姫様を助ける絶好のシチュ!」


 王子も珍しく結構飲んでいる。鉄面皮の顔がへら〜っとした。


「だからってふつー、単身で行くかっつーの!無事だったから良かったものの…」


 デイビッドは呆れ顔でツッコミ、セインはコクコク頷く。


「王子!あんた、ジェスを危険にさらしたばかりか、戦場で総大将がなにやらかしてんの!!だから意地張らずに私たち二人とも連れていけば良かったのに!まあジェスを救い出したのは褒めてあげるけど!?」


 アンソニーは真っ赤になって憤慨し、王子を羽交い締めにして、グリグリと頭にゲンコツをくれる。

 

「あだっいたたっ!ごめん、ごめんて!僕も色々ダメだったって反省してるよっ」


 王子はゲンコツが痛いのか、何故が悲壮な顔になった。


「完璧な救出劇のはず…、だったんだけどなぁ…」


 そして。誰にも聞こえない小さな声でボソッとつぶやいた。


 その後は深夜までデイビッドやセインのグチや、アンソニーがいかに王子妃として楽しんでいたかで盛り上がり、すごい勢いでビールが消費されていった。

 当然、翌朝は皆、二日酔いでひどい有様。オニクセルの子息は例にもれず、記憶がすっぱり飛んでいた。

 セインって自警団の最初の方で出てきたモブ中のモブ(笑)

 一応腹心の部下設定なので入れました。


 グレンと部下が珍しく交流する姿もかけてよかったです。鉄面皮は相変わらずだけど、ちゃんと部下のガス抜きにも向き合ってあげる、できた上司です。

 実兄に妹の濡れ場の話はどうかと思うけど。


 AIにテキスト貼って感想を聞いてるんだけど、何故かAIさんがデイビッドをいたくお気に召して、彼の心の声を創作したいと言ってきたので、やってみ?と言ったところ、面白いのあげてきたので貼っときますね↓↓





『内心実況中継』シリーズの締めくくり、デイビッド視点での「地獄の一夜」を執筆します!


【デイビッドの内心実況中継】

File :狩人の小屋にて(見張り役の悲劇)

王子とジェスが小屋に入っていくのを見守る:

(ああ、入っていった…。なんで俺が、こんな真夜中に、敵地の森の中で、あの二人の痴話喧嘩(の可能性大)の後始末を見守らなきゃならんのだ。俺は騎士だぞ。子守りじゃないんだぞ)


小屋から口論らしき声が聞こえる:

(ほら、始まった。声がでかい、王子。いや、あんなにキレてる王子、初めて見たな…。ジェスも負けてないけど。…ん?今、俺の名前が聞こえなかったか?気のせいか。いや、絶対気のせいだ。俺はここにいない。いいね?)

(※作者注 二人はデイビッドの名前とか一言もだしてませんよ?)


口論が止み、別の声が聞こえ始める:

(お、静かになった。仲直りしたか?なら、さっさと出てきてくれ。体が冷えてきた。…ん?なんだ、今の声。すすり泣きか?いや、違うな。もっと、こう、甘いというか、切羽詰まったというか…)


全てを察する:

(…………マジかよ。嘘だろ、あんたら。ここで!?今から!?俺、すぐそこの茂みにいるんですけど!?総大将と側近が、敵地で!?ああ、もう、聞きたくない!俺は何も聞いていない!俺の耳は飾りだ!)


夜が更けていく:

(長い。長いよ。もう月がだいぶ傾いてる。ていうか、あの王子、体力どうなってんだ?いや、ジェスの方か?どっちでもいい!寒い!腹減った!帰りたい!俺は、一体、何を聞かされているんだ…!これは拷問か何かなのか!?)


明け方、ようやく静かになる:

(…静かになった。終わった…のか?終わったんだな?ああ、聖女キャロライン様、ありがとうございます。俺は、生き延びた…)


二人が小屋から出てくる:

(出てきた。なんだよ、あの雰囲気。ジェスは少し憔悴してるけど、なんか、スッキリした顔してるし。王子に至っては、やけに清々しい顔で、こっちに合図まで送りやがって…。あの涼しい顔!絶対に確信犯だろ!)


二人を迎えに行く:

(はいはい、お迎えですよーだ。心配しましたよーだ。俺が、あんたらのせいで、どれだけ精神をすり減らしたかなんて、あんたらにはわかるまい!ああ、もういい。二人が仲直りしたなら、それでいいさ。…明日、絶対、一番良い酒を飲んでやる…!)

『内心実況中継』シリーズ、これにて完結です!

不憫なデイビッドの、可笑しくも切実な心の叫びは、うまく表現できていましたでしょうか。シリーズの締めくくりとして、楽しんでいただけていれば幸いです。


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