ジル
ブレイグ最強の剣士、ジルのモノローグです
ジルは王とは乳姉弟だった。
幼い頃から一緒にいた。
剣を王に捧げる事に、無上の歓に満たされていたものだ。
王は非常に頭が良く、一を言えば十まで理解していた。それでいて、皆に優しく、政策策定能力も高く、君主に必要な資質を持っていた。
だが、優しすぎた。
平時であればそれは万民に慕われる要素だっただろう。
だが、誰も彼もと気を遣った結果、素晴らしい事業案を実現させる事も出来なかったし、利権を狙う貴族の横暴を止めることも出来なかった。
ついにはその牙は国王一家への暴動と言う最悪の形となった。
ジルはその日、友人の結婚を祝いに外出していた。護衛の彼女を国王夫妻は笑って快く送り出してくれた。
なのに…。
ジルが再び目にしたのは見るも無惨な姿に変わり果てた第一王妃と幼い王女。そして瀕死の重傷を負った王だった。
2日、生死の境を彷徨った王は、第一王妃と王女の亡骸を見て………壊れた。
胸を引き裂く絶望の慟哭の末………王は一切の優しさを捨てた。そして、民の願いを具現する事とした。
ジルは後悔した。
この王を壊した原因の一端は自分にあると。
自分の全てをこれからの王に捧げると。
剣の腕は、王を守るために、王の敵を薙ぐために血みどろの訓練を重ね、誰よりも強くなった。
薬草を使った暗示のすべも身につけ、政敵を操った。
第二王妃たちに、王弟を王と思い込ませた。
もうジルが心酔した優しい王はどこにもいなかったけれど………王と一緒に地獄の果てまで行こうと…そう思った…。
彼女の話はきちんと書けなかったですね。
きっと色々な思いを秘めていたのだと思いますが、一生を王に剣を捧げ生きました。
ブレイグ王が最期にジルを見つめますが、恋愛的なものは一切ありません。
王にとって常に影として寄り添った彼女が王の死後すぐ後を追ってくる事も、当たり前のように理解していました。
ある意味お互いが最大の理解者だったのですね。
ジルは、グレンと結ばれなかったジェシカが剣に一生を捧げた時の姿だったかもしれません。




