心の在処
ジェシカモノローグ
どこが好きかと言われると困ってしまう。
はじめは女の子のようでかわいいと思った。
物おじしているけれど、キラキラした目で自分を慕ってくれて。
出会って次の日にはもうお別れだったけど、それからも忘れられなかった。
次に会ったのは2年後。
溺れかけたのを助けてくれた。
まだ華奢だったけど、見違えるように大きくなっていた。
また出会って翌日にはお別れだった。
そのはずだったが。
ケガをした双子の兄になりすまして城にあがった。
そこで彼が王子である事を知って愕然とした。
そして、今まで触れ合った少年とはまるで違う少し冷たさすら感じる様子に驚いた。
誰にでも公平で適切な距離を保つ事は王族としては必要な立ち居振る舞いだったのだろうけれど、あの日の人懐っこい少年ではなくなったようで切なく感じた。
それでも側近として仕えるうちに、何事にも真面目に取り組む姿に好感を覚えた。その頭の良さも、剣術の稽古に真摯に取り組む様も。
入れ替わりが露見した。
王子が、気づいてくれた。
いや、アンソニーがやらかしたからだけど。
それでも、国王夫妻に掛け合って二人とも側近にしてくれた。
もう側近生活も終わりだと悲しく思っていたから、とても嬉しかった。
これでもっとそばにいられる、と。
穏やかな日々が、温かく過ぎ去る。
ルーフェとシルビィで競争したこと。
城壁の上、星空を共に眺めたこと。
冷えた手を重ね温めてくれたこと。その距離感が心地よかった。
けれど、ある夜、嵐は突然訪れる。
気持ちが追いつかないままに…身体が重なる。
熱い愛を受け止めて、はじめは怖かった。
でも、いつしかそれも当たり前になっていた。
それどころか、もっと欲しいと思う自分がいた。
夢で自分以外の誰かが王子の横で笑っているのを見たとき。
当たり前が失われるかもしれないと思ったとき。
とても怖かった。
当たり前じゃないんだと。
ただ受けるばかりではダメなんだと……。
この想いにきちんとした名前はまだつけられない。
でも。
ただ一つ確かなのは、あの人を失いたくないということだけ。
心の在処はあの人とともにある。
ある夜以降のジェシカのうだうだです。




