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媚薬に酔う2 外交の使者の罠

性的描写あり

苦手な方はご注意ください。


媚薬シリーズ第2弾

お気楽にご覧ください。



「こないで。いまちょっと抑えられる自信ない」


 王子はそう告げた。

 今日は南国から外交の使者が訪れており、王子は晩餐の宴に参加していた。

 ジェシカは先程まで、別の案件の対応があり、宴には参加しておらず、戻ってきたところでフラフラした王子に出くわしたところだった。

 顔が真っ赤で肩を上下して息が荒い。


「何言ってるんですか。そんな具合が悪そうなのに!私につかまってください!」


 忠告に構わず、ジェシカは王子に駆け寄り肩に手をまわした。

 王子はびくりと反応する。

 そして深々とため息をついた。


「具合が悪いわけじゃない。油断して薬を盛られたんだ。お願いだから離れて」


「薬って…」


 ジェシカは訝しげに呟いた。意味が解らず首を傾げているようだ。


「媚薬。だから離れて。」


「!!!」


 王子は苦しげにジェシカから目を反らす。

 以前ジェシカも、キャラバンの舞姫にそれと知らずもらい、飲んだことがある。 

 フワフワして身体が熱くなり、我慢できないと王子の部屋まで行き、大胆な事をしてしまったアレだ。


「ええと…なんでまた?」


 ジェシカは意味がわかったようで、ようやく肩から手を離し一歩離れた。

 しかし、気まずい様子を見せながらも気になるようで上目遣いに聞いてきた。


「色仕掛外交しようとしたんだろ。あいにく興味ない…」


 王子は視線を反らしたまま、眉間にシワを寄せた。 

 いいから早く部屋に帰してほしい…。

 ジェシカを前にこんな事を思う日が来るとは。 


「はぁ!?私の王子になんて事を!!」


 ジェシカは憤慨して叫んだ。


「私の?」


 まずい、なぜこうも煽るような事を無防備に口ずさむのか…。そう思う気持ちとは裏腹に嬉しくて口元が緩む。


「あ、と、とにかく許せません!明日断固抗議します!」


 ジェシカは自分の口が滑ったことに気がついたようで、誤魔化すように叫んだ。


「よくある事だから流しておけばいいよ。さあ、僕はもう部屋に戻るから。」


 毒味もすり抜けたと言うことは、城の中に、同様の思惑を持つものがいるという事だ。

 気を抜いた自分の自業自得だ。


「よくあるんですか!?」


 ギョッとしたようにジェシカが叫んだ。 

 ジェシカはその立場の微妙さから外交絡みの席はそれとなく遠ざけられており、殆ど出席する事がなかったので知らなかったのだ。


「いちいち気にならなくなる程度には…」


 媚薬のせいで判断力が鈍っている事を痛感し、王子は舌打ちした。


「そんな…知らなかった。いままでも…」


 かなりショックを受けたようでジェシカは呆然と呟いた。


「さあもう離して。ほんとに…まずいから」


 これ以上口を滑らすのは避けたい。

 目の前の大事な人を、欲望に負けてめちゃくちゃにするのも。


「大丈夫なんですか?」


 ジェシカはなおも心配げに聞いてくる。


「まぁ、今日は流石に眠れそうにないけど…」


 男装しているジェシカには、絶対手を出さないと決めていた。

 切り替えないと、色々支障がでるからだ。

 だが、こうやって見上げてこられると、そんな決め事はなんの役にもたたない。


「そんな…どうしたら…」


「そりゃ、発散させるのが一番だから、どうにかするよ」


 媚薬の熱を鎮める方法なんて、一つしかない。

 開放してくれないジェシカに若干突き放すように言う。


「どうにかって?」


 ジェシカはショックを受けたように聞いてきた。

 大丈夫と言っておけば良いのに、また、余計な事を言ってしまったようだ。

 全然頭がまわってない。


「それは…聞かないで…」


 自分で処理するしかないではないか。

 ジェシカがあまりにも初心過ぎて、恨めしくなる。


「どうにか…」


 ジェシカは下を向いて口元に拳を当ててブツブツ呟く…。


「あの…私…お手伝いします」


 ジェシカは、意を決したように王子に訴えた。

 あれ?意味がわかってた?

 王子は目を丸くしてジェシカをみる。しかし…。


「やめたほうがいい…。優しくできる自信ないよ。余裕ないんだ」


 いつものようにゆっくりと慣らすことなどできないだろう。加減する余裕もない。


「構いません」 


 すがるような目でこちらを見るジェシカに、王子もとうとう抑えが効かなくなった。


「もう…。後悔しても知らないからね!」


 王子はジェシカの手首を掴むと、早足で歩き出した。



 王子は別棟にある自室まで行かず、最寄りの執務室に飛び込んだ。

 後ろ手に鍵をかけると、ジェシカを壁際に押し付け、噛みつくように唇を覆った。

 柔らかい唇が一気に理性を吹き飛ばし、舌をねじ込んだ。


「んんん!!こ、ここでっ!?」


 すでに、ジェシカの覚悟の範疇を軽々超えているようだから、笑ってしまう。

 しかしもう止まれない。

 ジェシカとのやり取りが無ければ何とかなったろうが、自室のベッドまでとても持たない。

 せめて鍵がかかる部屋といったら、ここしかなかった。


「無理、ほんともう無理だから、悪いけど我慢して!」


 王子は悲鳴のように叫んだ。

 自分だって、いつも仕事をしてるこの部屋でなんて、避けたかった。これから思い出すたび、滅入りそうだ。


「は、い…」

 

 ジェシカはたじたじになりながらも返答した。

 



 ジェシカは、壁に寄りかかったままうっすら目に涙を浮かべ、呆然としていた。

 相当衝撃だったようだ。

 服を全部脱がないのも、立ったままも初めての行為だった。


「ごめん…。その…ひどい事したね……」


 その痛々しい姿に、王子は苦い顔をしてジェシカにあやまった。やはり、振り切って部屋に帰ればよかったのだと、激しく後悔した。


「い、いえ!お願いしたのは私ですし…。あの、あの…もう、終わり、ですか?もう、平気なんですか?」


 ジェシカは我に返ったように、おずおずと聞きかえしてきた。

 手が、小刻みに震えている。


「うん、もうだいぶいいから。媚薬が切れるまでもう少しかかると思うけど、あとは何とかなるから…部屋に戻ろうか…ほんとごめん。」


 まだ燻るように疼く熱があるが、これ以上、ジェシカにぶつけるのは忍びない。


「何とかって…お願いですからほかの子を呼ぶくらいなら私にしてください!」


 ところが、ジェシカは意を決したように王子に訴えてきた。


「ええ!?ほかの子!?」


「だって、部屋に戻ったら、紛らわすために誰か呼んぶんでしょう?そんなの嫌です!」


「はぁ?何だってそんな事…」


 思いもよらない非難を浴びて、王子は目を丸くした。


「この前廊下で聞いたんです!王子の部屋づきの子たちが、この前は王子と、部屋で熱い夜を過ごしてたって盛り上がってたの」


「部屋づきの子たち?いや、そんな、まさか」


 身に覚えが全く無い事を追求され、王子は大混乱だった。

 だかそう言えば…。

 この前、ジェシカが王子の部屋で過ごしたとき、ジェシカがしどけない姿で眠っている間に侍女が部屋に来て、真っ赤になって出ていったっけ…。

 王子はベッドの上に裸で上半身を起こしており、ジェシカは背中側が見えていたと思う。


「ああ、もしかしてあれ…」


 腑に落ちた様子の王子に、ジェシカは更に半泣きになってたたみかける。


「そ、それにさっき、どうにかするのを…聞かないでって…」


「いや、それはその…自分で処理するって意味だよ…察してくれるかと思って…」


 ゴニョゴニョ呟く。


「っ!!!!えええっ…!」


 誤解に気がついたのか、ジェシカは真っ赤になった。


「それと、熱い夜を過ごしたってのは君と僕のこと見られたからかと」


「他の子じゃないんですか!?み、見られた…?見られたっ!?そんな!」


「多分君とは気づかれてないから…」 


 どうやら、部屋に誰か呼んでると疑われたらしい。心外だ。


「ごめんなさい…」


 ジェシカはその場にペタリとへたり込んだ。それどころではないのだが、上衣からむき出しの足が艶めかしい。


「そんなに心配、してたの?」


 王子は、服を整え、自分もその場にしゃがんだ。


「王子は元々経験豊富そうでしたし…もてるから…」


 ジェシカはうつむいて呟いた。

 経験豊富って言われるほど、女性遍歴があるわけでもない。嗜みとして何度か手ほどきを受けさせられただけだ。座学で。


「僕は君が良いっていったじゃないか。僕には君だけだよ」


 王子は必死になって訴えるが、ジェシカは顔を上げない。


「だって…こんなに手慣れてるじゃないですか…」


 ジェシカは、両腕をぎゅっと抱きしめながら言った。

 アレコレ頑張ってみたのが、かえって信用を無くしてしまったようだ。


「嗜みとして前に手順の手ほどきを受けただけだって。信じて?」


 王子はジェシカの肩に手を置き、顔を覗き込む。ジェシカはようやく目だけを王子に向ける。


「ほんとに?ほかに誰もいませんか?」


 尚も疑り深く念を押され、信用のなさにがっくりと来たが、こんな不名誉な誤解はなんとしても解かなければ。


「いない。君だけだ。だいたいそんな事なら色仕掛外交に素直に応じてるって」


「それもそうですね…。私…ずっと勘違いしてて…」


「悩んでたの?」


「はい…。」


「君は割と早とちりだよね…」


 ひとまず誤解が解けたようで、王子は胸を撫で下ろした。


「でも、そうか。考えてみれば部屋のそばに待ち伏せされてる可能性は高いなぁ…。あのまま帰ったら危なかったかも…」


 媚薬に浮かされた状態でハニー・トラップを仕掛けられたら、かなりきつかっただろう。


「今夜は、ここで寝るかな…」


 応接室ではないので簡素なソファしかないが、横になれないではない。


「あの…私の部屋に来ますか?」


「えっ!でも…」


「だってここじゃ、ちゃんと休めないじゃないですか。」


「いや。だけど流石に、まだ媚薬が残ってるから…。一緒にいたら我慢できそうにないんだけど…」


 どのみちまったく休めない。


「だって、私もあれだけじゃ…」


 ジェシカがぼそっと呟いた。そして真っ赤になる。

 なるほど。確かにあんなに一方的な身体の重ね方では、満足できたものじゃないか。

 彼女が求めているなら、遠慮する理由もない。


「それじゃ…お言葉に甘えてお邪魔しようかな?」


 ジェシカの髪をかき上げ、今度はゆっくりと甘い口づけを落とす。  

 媚薬の熱がぶり返すのを感じながら。


「早く行こう…。いつもより激しいと思うから覚悟して?」


 そして、その言葉どおり、今までで一番熱い一夜となった。

今回はグレンが媚薬に苛まれるお話です。

ケダモノ化の本領発揮です。

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