07話 ミミックの魔石
F級の魔物は、俺達の相手にならないのは確認済みだから、何度か戦闘を経験してから、速度を上げることにした。
4階迄、ほとんど出てくる魔物は変わらなかったが、アイツが出てきた時は、ちょっと感動したな。
スライム、身体がゼリー状のアイツだ。
この世界のスライムは、ゲームで見慣れたものに近かった。
基本固形で、ボヨンと丸い姿をしているが、液状化して飛びついて来るので、外で出会ったら意外と危ないかもな。
酸性持ちだったし・・・。
これまでに出会った魔物は、蛙戦士、蛙弓兵、スライム、骸骨剣士、大蝙蝠、ゴブリンだった。
大体30体は倒したか、ホントは仲間として復活させたいんだけどな。
正直、スライムもスケルトンも復活させたいんだが、家に連れ帰るのがな・・・。
今は、俺とブラウの強化に充てるしかないかな。
レベルは1上がって、今レベル4だ。
1階を踏破するのに、戦闘を含めても20分も掛からない。4階まで来て、まだ1時間強しか経っていない。マナはまだ、四割くらいはある。
「ダンジョンって、深く潜るほど、1階の大きさも広がるんだよね?」
「ええ、基本はそうですよ。敵も強くなりますし、地形も罠も気を付けなきゃいけません」
「そっか、肝に銘じとく」
もう少しで4階も終わるかなって時に、狭い横穴を見つけた。
これは、いかにも怪しい。
行ってみるか。
ダリオも入って来れるのを確認して進むと、小さな小部屋があった。
それと、奥に木製の宝箱が、樽や木箱と共に粗雑に置かれてあった。
「どう思う?」
「完全に罠ですね。5階迄に、宝箱なんか出ませんよ」
「ミミックで合ってる? 強いかな?」
「良く知ってましたね。強さは木製なんで、そこまでだとは思いますけど、
恐らくEかD級と考えた方がいいですよ」
「・・・ダリオ、ヤバかったら手伝ってくれ」
(ブラウは手を出すなよ。危険すぎる)
(了解っす。気を付けて下さいっす旦那)
「やれやれ、しょうがないですね。初動を気を付けてください。
噛まれれば、終わりです」
ダリオの真剣さが伝わる。全部、闘気に回して戦おう。
ミミックは、特殊な魔物だ。
前世の記憶が、アイツを倒せと言ってくる。
俺は、剣をグッと握り込む。
「ふぅ・・・行くぞ!」
俺は有りっ丈のマナを、闘気に注ぎ込み、飛込からの全力の真向斬りを、ミミックに叩き込んだ。
ドギャッ!!!
「ギギィイイイイイアーーーーーー!!!」
「うおっ。 うっせーよ!」
俺の剣は、鈍い音と共に、宝箱の上部を襲ったが、ミミックは健在だった。
拉げて血を流してはいるが、箱がガバッと開いて、奇声を上げてきた。耳にくる音だ。
俺はすぐに飛び退いて。体制を整える、
口がこえー
ギザギザの大きな歯が、箱の縁にビッシリと生えていて、デカい舌が飛び出ている。箱の横からも手が突き出ていて、実際に見ると、ゾッとする姿だ。
「ギッシャアアア!!」
ミミックが、手を巧みに使って俺に飛び掛かって来るが、キレが無い。最初の一撃がしっかり効いているようだ。
俺は、側面に躱してミミックの手を斬り付ける。 ズバ! っと片手を斬り飛ばしてやった。
これであいつは跳べなくなったぞ。
でも、油断はしない。というより出来ない。あの口のせいで余裕なんか無い。
「ギッシュウゥ・・・」
暫くの攻防を終え、ミミックは力尽きた。血を流し過ぎたようだ。舌を斬り飛ばしたのを最後に、体が霧散していった。
こいつ、魔石以外何も残さないのかよ!
あの前世の俺は何だったんだ。
にしても、地味な攻防が疲れた・・・ビビり過ぎだったかもしれない。
「はあぁ、緊張したーー」
「お見事、お見事」
「もっと前に出れば、早く終わってたんだけどね」
「得体のしれない相手には、アレくらい慎重になった方がいいですよ。
まあ、途中からはもっと攻めてもよかったですが、
要は、機を逃しちゃ駄目って所ですかね」
「成程、ありがとう」
ダリオの有難い言葉を忘れないようにしよう。
何はともあれ、ミミックの魔石ゲットだ!
俺達は次の階層主に向けて、この小部屋でしばらく休憩することにした。
村で買ってきた肉を頬張りながら。
石牛の肉旨いな。塩味が疲れた体に沁みる~。
1時間くらいかな。俺はダリオとブラウに警戒を任せて、体を伸ばしていた。身体に、マナが多少戻って来た。それにダリオが気付いたようだ。
「そろそろ行けますか?」
「大丈夫そう。ありがとね2人とも」
「階層主とは言っても、E級の魔物が出てくるだけですよ。
本番は6階からです」
「オッケー。じゃあ行こうか」
4階を降りると、すぐに扉が見える。
この先は、ボス戦って訳か。
ダリオ曰く、チュートリアル的な感じのようだから、気負わず行こう。
ダンジョンを造った神様とは、気が合いそうだ。命の危険はあるけどね。
扉を開くと骸骨剣士が4体、その後ろに何か居る。ローブで姿がよく分からないけど、足が無いのは分かる。
・・・ゴーストか?
大丈夫。E級の霊体でも対処法は簡単。
強力な闘気で削るか、魔力を纏えば斬れる。
俺の今の状態じゃ、闘気はきつい。魔力一択だ。
(ブラウ、骸骨剣士は任せたぞ。無理しなくていいからな)
(任せて下さいっす!)
ブラウが先に走り出した。骸骨剣士が4体共、ブラウに釣られてる。
チャンスだ!!
俺が、速攻でゴーストを倒せば、後は楽勝だ。
ゴーストに走る途中、敵の手に光が宿ったのが見えた。
やばっ! ボウッ!! という音と共に、火球が俺に向かって飛んでくる。
「ウアッ!」
コイツ、魔法使うのか!? 魔力で覆ってて良かった。
あっちいな! 嫌な事思い出しただろ!!
俺は止まらず、ゴーストに突っ込んだ! 霊体だからか顔も見えない。
下がりながら、次の魔法を撃とうとしてるけど、間に合わないだろ! ゴーストに追いついて、敵のの体を縦一直線に斬る。
「ウゥーーー」
ゴーストは響くような悲鳴を上げるが、まだ生きてる。でも終わりだ。続けて切り上げる。
ゴーストを倒してブラウを見ると、骸骨剣士は後2体になっていた。
あ、後1体になった。
引いては噛んでの繰り返しで、ゴーストと同じ戦法で戦っている。いいぞブラウ。
最後の骸骨剣士を倒したようだ。
お! 身体が熱い。レベルが上がったぞ。
しかし、ゴーストの魔法はちょっと危なかったな・・・。
ゴースト達を倒すと、部屋の中央に魔法陣が出てきた。
ここから、外に出るか、次に進むか選べるようだ。
今日は帰ろう・・・ミミックでマナを使い過ぎたもんなぁ。
帰りに、ダリオに運が悪かったですね、と言われた。
何のことかと聞くと、5階の階層主に魔法を使う相手は、あまり出て来ないと云う。
あそこランダムなのかよ!
・・・ゴーストの魔石、まだ欲しかったな。