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28話 確保

 父上は、侵入者達の移送の為、到着した領兵と町へ戻ていった。ダリオには、俺の手伝いをして貰う為に残って貰った。

 これは、後日聞いた侵入者の話だが、土の牢獄が崩されて、解放された時、酷く憔悴しきっていた彼等だったが、太陽の光を拝めた事を、領兵に感謝してきたらしい。このまま放置されて死ぬか、魔物に食われるか、と恐怖と戦っていたようだ。

 確かに、真っ暗な闇の中で、自由が利かず、外には自分達を襲った魔物が取り囲んでいると考えたら、精神的に堪えるだろうな。まあ、自業自得な訳だが。

 因みにだが、俺や、フーコ、癒術士は姿を見られてはいない。遠くから確認して、回復させていたからな。見られたのは、大蜘蛛と死骨鳥だけだ。

 ウチの配下は、誰も死んではいないが、大蜘蛛が、魔法の攻撃で負傷していた。適当にばら撒いた、雑な攻撃だったらしく、致命傷を受けた者は、誰も居なかった。それは良かったが、魔法はやっぱり危険だな。ちゃんと対策しておきたいところだ。


 さて、俺には、やらないといけない事がある。

 それは、ボレアスの竜圧で気絶してしまった、あの4人の処遇を決める事だ。勿論、父上にも話は通してある。

 1人は兵士であったが、あの侵略者の中で、他の3人は毛色が違った。恐らく冒険者だと思われる。というか、タグを持ってたし。

 何というか、彼等には、悪い印象は無いのだ。侵入者の一員ではあったが、あの状況、先に結界装置の傍に転がっていた男、(カーシュだったか)を助けに来たことが分かる。

 俺だったら、どうだったかな。恐ろしい咆哮に、雷鳴。もしかしたら、逃げ出していたかもしれない。だから、興味がある。ただでは帰せないが、依頼を受けただけなら、殺す程じゃない気がするしな。

 一番の理由は、俺や、ボレアスの姿を、見られたからなんだが。別に、世に噂が広がっても、困りはしない。が、極力隠してはおきたい。以前、父上も言っていたが、俺が強くなるまでは、ってやつだ。

 ということで、彼等と話をして、情状酌量の余地があるか、ないかで、契約の内容を決めようと思っているのだ。

 契約って言うのは、ただの紙の上での取り決めではない。魔法ギルドで、近年開発された魔術契約紙。契約内容が遂行されなければ、神の天罰を受けるという、恐ろしいものなのだ。

 神の天罰と聞くと恐ろしいが、契約を結ぶには当人の意思と、魔法ギルドの受理が必要なので、無理やり契約させるとか、奴隷契約だとか、そんな悪用は出来ない。


 ダリオを連れて、ガンド特性の牢獄に放り込まれた、冒険者達の元を訪れた。こっちの牢獄は、陽の光が入るようになっているので、憔悴はしていないだろう。大蜘蛛の糸で、手、足、口の身動きは出来なくしてあるので、牢を開けても安心だ。周りには配下も待機してある。

 ガンドに牢獄を開けて貰うと、既に彼等は、目を覚ましていた。

 開かれた牢獄に、安堵の表情を一瞬浮かべたが、その表情は、各々ですぐに変わった。カーシュは、俺を見て、何で子供が出て来るんだ? という困惑の顔をしていたが、残りの3人は、やや引き攣った顔をしていた。 

 

 何て失礼な奴等だ。 あの時、俺は、何にもしてないだろ!

 

 ・・・まあいい。俺は、彼等と話をする為に、口の糸を解いてやった。

 

「やあ! 初めましての人も居るけど、いや、まあ、全員、初めましてと変わらないか。

 あらためて、俺はギルバート。この森の、...管理人をしているんだ。

 早速、君達の話を詳しく聞かせて貰おうか? こっちにも事情があってね。後で、契約もして貰うから、そのつもりで。君ら3人は冒険者でしょ? 何で、そこの兵士の一団と、一緒に行動していたのかな? それとも、君達が主犯なのかな? あの装置の事知ってたの?」

「ま、待て! 待ってくれ。 い、いや、違うんだ。...俺達は、確かに依頼は受けたんだが、今、これは、どういう状況なんだ? 俺には、何が何だか」

「落ち着いて、兄さん。兄の代わりに、私が話します」


 カーシュは、混乱中の様だ。そう言えば、この人、ずっと気絶してたしな。

 ドラゴンに襲われ、気づけば糸で縛られ、ようやく人が出て来たと思ったら、何やら捲し立て始めたから、自分が何か、不味い状況にある。とは気付いたようだ。

 話はこっちの、リーアにして貰おう。カーシュとは兄妹のようだ。もう一人はジェス。名前は気絶している間に、調べておいたのだ。

 どうやら、俺の事が本当に不気味なようだ。こっちの機嫌を損ねないように、すらすらと答えてくれた。

 リーアの話によると、先ず、彼女達3人は、いろんな所を転々としている、流れの冒険者で、アジノ領に来たのは、偶々だったらしい。

 この時点で、犯人は決まったな。

 隣で、話を聞いていたダリオが、物凄く悪い顔をしていた。

 そこで、森に慣れた冒険者を探していると、アジノ家の兵が話しかけて来たらしい。曖昧な依頼内容だったが、いい報酬だったので引き受けた。と、そう言う事らしい。話の中で、カーシュのスキルも注目されたようだ。

 これは、端っこで大人しくしていた、アジノ領の従士、ベリトが肯定していたので、彼女等がただの冒険者だという事は、分かった。

 結界装置の事も、良く分からないまま起動した、と。ふんふん成程。

 次はベリトの話だが、彼が、あの時隊を離れたのは、結界措置の確認をする為と、カーシュを助ける為だった、と云うではないか。

 アジノ家に仕えているにしては、中々まともな人間かもしれない。

 俺も、アジノ家の兵だからって、全員、悪い奴だなんて思っちゃいない。彼らは命令に従うものだし、基本、逆らえない。余程の事でもない限りは。


「ねえ、ダリオ。この4人は、どうすればいいと思う?」

「契約で口を縛って、罰金でも払って貰いますか。依頼とは言え、ウチからしたら、そいつらは一応共犯ですからね。まあ、面倒なら、首を刎ねてもいいですが。

 そっちの若いのは、向こうの従士みたいなんで。捕虜として、後で町に連れて行きます」

「その罰金って、幾らくらいが妥当なのかな?」

「大森林の氾濫ですからねぇ。その被害を考えると、...とても個人で払えるような額じゃないでしょうね。

 そいつらが、何も知らなかったとは言え、片棒担いじまったんだ。覚悟をしとくんだな。お前さん達」


 しれっと、とんでもない事を言うダリオだが、あながち間違ってもいないのが恐ろしいな。暗に、お前達は死ぬしかないぞ、と言っているのだ。

 話を聞いていた3人の顔色が、みるみる青くなっていく。素直に話せば助かると、そう思っていたに違いない。

 今までの話の流れから、俺やダリオが、貴族の関係者と分かっている筈だ。

 もう助からない。そんな顔をしている。

 しょうがない。俺が助け舟を出してやろうじゃないか。


「君達、払うお金はあるの? 大金貨何枚になるかは、まだ分かんないけどさ」

「そ、そんな大金、俺達には、...無理です」

「そうだろうね。でも、借金奴隷も、死ぬのも、どっちも嫌でしょ? なら君達、俺の組織で働かないか?」

「「「組織?」」」


 3人の声だけじゃなく、ダリオの声も混ざっているが、話を続けよう。


「そう! 魔術契約で縛りはするけど、ウチの組織で働くなら、金も、命も取らないよ」

「あのー、坊ちゃん、組織って何の話で?」

「この森の拠点だけじゃなく、ウチの土地を守る裏組織さ! 秘密組織でもいいけど。因みに、今日発足したばかりだから。ウチで知ったのは、ダリオが第一号だね」

「ほう。ふざけている様で、坊ちゃんが言うと、なかなか現実味のある話ですね。

 その組織の名は何て言うんです?」

「いやいや、そこは組織の構成員にしか教えないよ。

 で? 君達、どうする? 乗るか、反るか」

「そ、それって、借金奴隷と変わらないんじゃ。...」

「確かにね、でも、借金奴隷に自由は無いよ。決められた範囲でしか生きて行けない。君達の場合は、解放される事も無いだろうし。

 でも! その点、ウチならホワイトさ!

 魔術契約で、組織の決まり事を守るだけで、仕事以外の時間は、自由に行動してもいい。(…発足したばかりで、仕事なんかないけどね)仕事もなるべくハードにならない様にするし、しっかり働いてくれたら、いずれ解放したっていいよ。何十年も働けなんて言わない」

「...もっと詳しく教えて貰えますか? 

 私達は、ここが何処か、正確に理解出来ていないんです」

「そうだね、ダリオ。出番だよ」

「はあ。まあ、いいですけどね。坊ちゃんのお陰で、騒ぎにならずに済んだので」


 ダリオの説明で、彼らはようやく此処が、マルセロン男爵領だという事を理解した。彼らは、何も知らずに、森を歩いていたのだから、さもありなん。

 続けて、俺は言った。自分が男爵家の末っ子である事。森に拠点を築く理由。配下の魔物達の有効利用。これから始まるであろう村の構築。敵対勢力の排除。これは、領地の為だけではなく、殆ど、自分の趣味に拠る所が大きいと、素直に。


「私達、やります!」

「お、おい、リーア。やるってお前。...」

「どうせ奴隷か、死ぬんなら、少しでも楽な方が良いじゃない?」

「ぼ、僕も賛成かな。話を聞くに、やる事は、領兵の人達と、そんなに変わらないんじゃないかな? 差し詰め、ギルバート様の私兵って感じかな。悪くないと思うよ? それに、選択権は無いよカーシュさん」

「...そうだな、2人の言う通りだ。

 ギルバート様。その、組織の、構成員? てやつ。俺達にやらせて下さい」

「良く決断してくれた! 後悔はさせないよ」


 やると決めたら、目に力が戻って来た3人。少しは希望が見えただろうか。

 ふっふっふ。脅しは入ったが、手に入れたぞ! 貴重な人間の配下、元い、構成員。始まりは最悪でも、いつか良かったと思える筈だ。ダリオが、此方にジト目を向けているが知らぬ。

 何故か、そのやり取りを見ていたベリト君が、良かったですね皆さん。と、自分の事の様に、嬉しそうにしていた。

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