27話 後始末と紹介
「それで、これに入っているのか? 生きてはいるんだな?」
「はい。俺の姿を見た人間は、拠点の方で厳重監視中です」
「そうか。風の精霊が、迎えに来たのは驚いたが、まさか、こんな事が起きていたとは。
道中知らせを受けて、町に応援を呼びに行かせてあるから、兵に罪人達を連行させよう。...何にしても良くやったぞ、ギル」
「しかし、坊ちゃんも無茶しますねぇ。応援を待っても良かったんでは?」
「まあまあ、後で話すけど、緊急事態だったのさ」
あの後、フーコに父上への知らせ役を頼み、気絶した4人は、拠点に運んで、配下に監視を頼んでいる。勿論、蜘蛛の糸で雁字搦めにした上でだ。
即席の土の牢獄を、ガンドに造って貰い、この、どこかの領兵を放り込んである。当然、こいつ等も雁字搦めである。
一体、何があったのか、俺が現場に到着した時は、既に、この侵入者達は、大蜘蛛達の手によって、簀巻きにされていた。
よーく、観察してみると、侵入者の殆が、蜘蛛達の手によって、足の骨を折られていた。中には、骨を突き立てられている者も。...これは、俺が緊急で呼び出してやった、死骨鳥の仕業だった。ちゃんと、急所は外してあるが。
まあ、死骨鳥の骨矢は、殺傷能力が強めだから、急所を外さなきゃ、死んでしまう。
侵入者の中には、血と汗以外にも、涙を流している者も居た。彼等の味わった恐怖が、伝わってくるようだ。俺達も、この鳥には、ダンジョンで苦労させられたから、よく分かる。
因みに、侵入者は全員無事である。
これまたダンジョンで、手に入れたあいつ。癒術士に治療して貰ったのだ。
あいつは、あいつじゃなくて、彼女だったようだ。女型の魔物だったらしい。戦った時は、遠目だったし、全身を覆う、祈祷衣を着ていたので、分からなかった。
癒術士には、死なない程度に回復して貰っている。情報を吐かせるまでは、死んで貰っては困るし、犯罪者に慈悲は無いのである。
ボレアスが気絶させた3人以外は、全員、同じ軽鎧を身に付けていた。中に来ている服は、バラバラだったが、明らかに、どこぞの兵隊であることが見て取れた。この侵入者達は、自分達が捕まる事など、夢にも思っていなかったのだろう。
こんな森の中に、人間が、魔物の拠点造りをしているなんて、考えられる訳もないのだが。
そう言えば、大蜘蛛達が報告で気になる事を言っていた。
大蜘蛛達が、侵入者を発見した時には、既に彼等は、ボロボロだったそうだ。そんなに大変な思いをして、こんな所まで来たのには感服するが、一体、侵入者達に何が遭ったのだろうか? 気になる。
とにかく、彼等の尋問は父上達がやってくれるので、後は任せよう。
「では父上! 領兵達がやって来るまで、ウチの拠点を紹介しますよ。
森の入口に、ガンドが、土で目印の塔を造ってくれたので、領兵達も迷う事は無いですよ。
ここは一旦、配下に任せて、拠点の方に行きまましょう」
「そうだな。こいつらは、どうせアジノ家の連中だろう。じっくり絞ってやるさ」
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「へえ。こりゃあ、なかなか立派なもんですね。
どうやって、建てたのか分かりませんが、
想像より、ずっと大きいじゃないですか、坊ちゃん。
もっと、貧相なやつを想像してたのに。
これを、あのリザードマン? がやったんでしょう?」
「そうそう。俺もびっくりしたけど、皆、凄いんだよね。
ガンドとボレアスが居なかったら、もっと、小規模になる筈だったんだけど、
結果的には良かったよ」
うんうん。気持ちのいい反応だよ、ダリオ君。
ダリオが驚くのも当然だ。
雑な造りとは言え、10歳の子供と、人間ではない魔物がどれだけ頑張った所で、大した物は出来ないと、ダリオじゃなくても、俺だって、そう考えるしな。
しかも、こんな巨大な建造物だ。
人って言うのは、ただ大きいというだけで、圧倒されるものだからね。
この大森林を、初めて見た時を思い出す。俺は、ただただ、大きな木の群れに圧倒されていた。
だから、ダリオのこの反応にも納得である。
父上も似たような反応だったので、俺は満足だ。
この拠点は、まだまだ未完成だが、ここまで造り上げたドラコニアンやガンドも、2人の反応を見て、どこか誇らしげな様子だ。
あいつらは、なんか職人気質なんだよな、休めと言っても、ずっと働こうとするし。だから、俺も、こいつらが褒められたのが嬉しい。
拠点内には、アラクネの作業場しかないが、そこを父上が入念に見学していた。
今後の事を考えたら、手は抜けないもんな。彼女らと話す事は出来ないが、俺が間に入って、ネアに挨拶をしていた。アラクネの生み出す大量の糸と、複数の生地を見せられて、確信が持てたようだ。目に活力を感じるぞ。
「どう思う?」
「村の事ですか? 俺は良いと思いますよ。
坊ちゃんは、歳の割に、規格外だとは思ってましたけどね。正直、ここまでだとは、思ってませんでしたよ。
見ました? あれを見た時は、何の冗談かと思いましたよ。ドラゴンですよ。ドラゴン。俺も震えましたよ。
そんな強力な戦力に、精霊の助け、優秀な労働力、やらない手は無いでしょう。
それに、まだありますよ」
「? 何だ?」
「あいつらですよ。アジノ家の連中。まだ、何処のどいつかは、分かりませんが、十中八九、あいつらでしょう。仮に、あそこじゃなくても、どっかの貴族家でょう。そこから、金をふんだくってやるんですよ。
もし、アジノ家だった場合、奪われた土地も、奪い返せるかもしれませんよ」
「ああ、そうだな。これは明確な敵対行為だからな。容赦はせん」
「仔細が分かり次第、情報を流しましょう。
敵の失態と、ウチがどれだけ優秀な戦力を抱えているか。勿論、坊っちゃんの事は伏せて。
例のアラクネの件も併せたら、きっと、ウチにも人が流れて来ますよ。
全部、坊ちゃんのお陰なんですけどね」
遠目で、ダリオが父上と話しながら、父上の視界に入らないように、此方に向かってグーサインをしてきた。
うまく話を進めてくれたようだ。ナイスである。
俺は、父上がアラクネの作業部屋を見学をしている間に、ダリオに協力をお願いしていた。ダリオ的にも、この拠点の様子を見て、成功の予感を持てたようで快諾してくれた。




