24話 侵入者?
句読点、使わなすぎだったので、過去話随時修正中です。
後、文章もちょこちょこ修正中。
(ギル様。森に、私の知らぬマナを感じます)
(? どういう事?)
(魔物ではありません。これは人間ですね。それも、数が多い様です)
俺達の組織名が決まって、意気揚々となっている中、何やら水を差す連中が現れたと、嵐の竜こと、組織の右腕、ボレアスが言うではないか。
ボレアスには、『マナ感知』というスキルがある。
このスキルで、俺達の拠点周辺の浅層は、大体、把握出来るようだ。
しかし、一体何者だろうか?
この大森林には、人が寄り付かない事でお馴染みだ。
冒険者は、ミコー村にダンジョンがあるので、彼等の主戦場は専ら彼方にある。外で狩りを行うにしても、大森林は、金策に向かない為、狩場の選択肢には入らない。
何より、今は父上がアラクネの件で、冒険者ギルドに森への接近禁止を命じている。元々、冒険者の活動の場では無いので、ギルド側に否やは無い。
そして、領民は元より近付かないし。
となると、貴族を恐れぬ冒険者か? でも、ボレアスは、数が多いと言っている。大人数で、貴族の恨みを買うような真似をするとは、思えないんだよな。
まさか、アラクネの存在が知られたのか?
(ボレアス、そいつらは此処に向かっているのか?)
(いいえ。人間達は、此処から北の浅層に陣取って、今は動きがありませんね。
ただ、一人、森の奥に進んでいるようですが、目的までは・・・。)
(野盗って線もあるか・・何にせよ、ここはウチの領地だ。
一度、この目で確認しないとな。
もし、余所者なら、対応しなきゃいけない。父上も、その内やって来るし)
(そうですね。では、私達が見て来ましょう)
急に物々しくなって来たな。
折角、新しい配下を呼び出そうとしていたのに。
俺達の邪魔をするとは、一体、何処のどいつだってんだ。
もし、俺達の敵なら・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2日前。
「あの、従士長、本当に決行するのですか?」
「・・・当然だ。我々は、御当主の命に従っておればよい。
何、心配するな。
大森林とは言え、目的地に着けば、浅層で待機して居れば問題無い。
我らはあくまでも、万が一に備えての護衛だ。
後は、あれがうまく起動すれば、逃げるだけだ」
「しかし! …いえ、分かりました」
私は、アジノ男爵家当主ローナン様に仕える従士長のマルコ。今年で四十路になる。
たった今、新米従士のベリトが、今更恐れをなしたのか、作戦に異を唱えてきた。が、何も心配する事は無いのだ。我らが手を汚す事など、一切無いのだからな。
我らは、ローナン様の命を、黙々と遂行するだけでいいのだ。
「任務は簡単だ。
先ず、我々が向うのは大森林の浅層だ。勿論、マルセロン側のな。
我々は、我が領から森に入り、なるべく人目に触れぬように森中を進み、南を目指す。
最終的に、ラグ二ー河を目指して進む。
目的地に着けば、後は、森の奥で装置を起動するだけだ。
その役目は、町で雇った流れの冒険者にやって貰う。
いいな?」
「「はっ!」」
「奴等には大金を払っている。余計な情報は与えなくていい」
大森林を進むのは、骨が折れるが、仕方あるまい。作戦を秘密裏に遂行出来なければ、領地の存亡にも関わって来るかもしれない。
しかし、そう気を張る必要も無いのだがな。
そもそも、大森林は、人が行くような場所ではない。希少素材を求めて、奥まで入る人間など稀だ。しかも、その殆どは戻って来ない。そんな事実があるから、人が寄りつかない。要因はいろいろとあるが、要は割りに合わないのだ。
つまり、我々が見つかるリスクは、限りなく少ない、という事だ。森を進むのは、少しでも露見の可能性を防ぐためだ。
浅層の魔物なら楽な筈だ。それに、我々は総勢20人の部隊だ。相手ではないだろう。
森に入ってから2日目。我々は、想定外の苦戦を強いられていた。
F級は相手にならないが、E級は少々骨が折れる。此方は20人で動いている。だから、後れを取る事は無いのだが、何やら魔物の数が以上に多いのだ。
一度、D級魔獣の岩猿3体に襲われた時は、危なかった。
コボルトの群れと戦闘中だったのもあるが、奴らは樹上から、岩塊を放って来るのだ。そのせいで、怪我人が続出した。その岩猿は、冒険者の一人が処理してくれたが、久々に命の危機を感じた。
D級の魔物は、もっと奥にいる筈なのだが、それは絶対ではない。今のは運が悪かったのだと、治療を終え、行進を再開した。
マルセロン領とアジノ領の中間点に、ようやく差し掛かった所で、アジノ領側には居なかった筈の、ゴブリンの群れに襲われた。E級のホブも混ざっている。
ぬう。こんな所で疲弊している場合では無いというのに、何とも運の悪い。それに、この数は尋常ではない。もしかしたら、近くに奴等の集落があるかもしれない。
ここで停滞するのは、危険すぎる。
種族としては、力が弱くとも、数が厄介だ。中には上位種もいる、ただのゴブリンの中にも、強い個体が存在する事もある。
「ハア、ハア、ハァ。皆無事か!?」
「ハア、ふぅ・・・いえ、カントがやられました。あいつは、足が遅かったんで。
他は、怪我人は居ますが、なんとか」
何てことだ。
何とか逃げ切れはしたが、犠牲者を出してしまうとは・・・。
カントにはすまないが、あそこで停滞して、巣から上位種が出て来る可能性を考えると、逃げて正解だった筈だ。
マナも節約しなければならない。
しかし、このペースでは、マナも体力も続くか怪しい。
もう一日は見た方が良いか、撤退するか、...それとも強行するか。仮に戻るにしても、この状態なら森から出て、姿を晒すしかないか。
「隊長さん、もう行きましょう。森の様子が明らかにおかしい。
撤退するか、進むか、早く決めた方が良いぜ」
「・・・撤退は無い。皆進むぞ! それと、私は従士長だ」
冒険者の言う事は尤もだった。
森に詳しい訳ではないが、偶に、間引きの為に入る事がある。その時は、もっとこう、そうだ、落ち着いているのだ。森が。それが今は、騒がしく感じる。まるで、生態系が変わってしまったかのように。氾濫が起きている感じではないが、一体何なんだ。
大森林に何か起きているのか?
我々は、歩を進めた。途中、数度の戦闘を経て、マルセロン領の北側の森までやって来た。どういう訳か、マルセロン領側へ進めば進むほど、魔物の数が落ち着いてきた。だが、皆は安堵の表情を浮かべていた。さもありなん。犠牲者も出ているのだ。まさか、大森林とは言え、その浅層で、これ程の緊張感を持つ事など、無いのだから。
不測の事態が続いたが、我々は、目的地のラグ二ー河の近くまで到達した。
全く、酷い目にあった。楽な仕事になると考えていた自分を、ぶん殴ってやりたい。
だが、もうすぐこの仕事も終わる。
気配を消せる能力持ちの冒険者に、ある装置を渡してある。あれが起動すれば、マルセロン家の被害は甚大、の筈だ。
はあ。さっさとやるべき事をやって、我が家に帰りたい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(これは、何なんだ? 無駄にでかいんだよな。
魔道具を起動するだけでいい、って話だが。
いや、詮索したって仕方ねぇか。もう、金は貰っちまったんだ)
俺は、両腕で抱えている、黒い箱に悪態を吐きながら、浅層よりも更に奥に向かっていた。
まさか、森であんなに苦労するとは思わなかった。話が違うじゃねーか。とは思ったが、乗り掛かった船だ。仕事は最後までやり遂げるのが、俺達、"高き竜"の信条だ。
おまけに領兵共のお守までしてやったんだ。追加で報酬を払って貰わなきゃ、割に合わない。
此処は、まだ浅層なんだろうが、ここらが限界だな。これ以上は、俺のスキルでも誤魔化せない。
さっき俺の近くを、巨大な魔虎が通った時は、死を覚悟した。俺が『隠身』を持っていなかったら、とっくに死んでる所だ。
一人では対処不能な魔物が出て来たのを確認して、俺は、魔道具を地面に設置した。
(この辺りでいいか)
俺は、魔道具に取り付けてある、加工された魔石を押し込んで、エネルギーを充填させる。そして、起動スイッチを作動させた。
起動した魔道具は、本体の箱を中心に、立体的な円の魔法陣を展開し、周囲に、特殊なマナの波動を放ち始めた。
正直、俺は意味が解らなかった。
森で魔道具を発動したら、依頼完了だと言うが、何も起こっていない。いや、魔道具は作動はしているのだが、その効果が分からなかった。
まあいいか。依頼は達成したのだ。
俺は、領兵共と、仲間が待つポイントへ戻ろうと、踵を返して歩き出す。
そして、死を覚悟した。
俺が振り返った先、その上空に、此方を見ている巨大なドラゴンが居たから。
何でこんな所に? と、考える余裕は無い。
不気味な事に、ドラゴンからは何の音も聞こえない。大きな翼の、羽ばたく音も聞こえないのは、不自然だと思ったが、翼は動いてすらいなかった。
そんな不自然さが、不安を煽って来るドラゴン。その頭上に、俺にも分かる程の魔力が集まっていく。
一体、その魔力の塊をどうするつもりなんだと、聞いてみたかったが、俺は身じろぎ一つ出来なかった。
だらだらと冷や汗が流れ、まともに思考が働かない。
時間が過ぎるのが、ゆっくりに感じる。
数瞬。ドラゴンの咆哮が轟き、森を揺らした。同時、ドラゴンの頭上にあった魔力も解き放たれた。
俺は、咆哮の重圧に耐えきれず、意識を保っていられなくなる。
(すまねぇ、ジェス、リーア)
最後に、晴れた空が、カッ! と明るく光ったのが見えたが、そこで俺は、意識を手放した。




