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21話 予想外の試練

本当はBOSS戦まで行きたかった…

「「クカカカ、 ガァーー!!」」

(出たな、ブラウ!)

「"グオオーーーン!!!"」

「「!!」」


 骨だけで構成された四足獣に向けて、ブラウが『狼圧(プレッシャー)』を放つ。骨の魔獣は4体全て、格上の咆哮を受けて、足を止めてしまった。

 俺は、すかさず先頭の1体に走る。


「"せい!"」


 踏み込み、剣を一振りする。

 身体に刻まれた(・・・・)技が闘気を纏って放たれる。それは、斬光が縦と横、十字に重なり、骨の魔獣の体を、四つに分断する強力な一撃を生んだ。

 続けて2体目、 ドバァン!! も。


(邪魔よ!! いぬっころ共~! 吹っ飛べーー!!)


 2体目、いや、残り纏めてフーコに、吹き飛ばされてしまった。

 そのフーコは、天に拳を振り抜いていた。

 それ、俺の一撃が霞むんだが。

 いやいやいや、せっかく俺の新スキルのお披露目だったのに、フーコさんや・・。

 こういう時の為に、"待て"を覚えてもらうか。


 しょうがない、気を取り直そう。

 俺は、リビングアーマー、スカルナイト、ガーゴイルの魔石を、一個ずつ取り込んだ。

 さっきの技は、リビングアーマーのスキル『十字斬り』だ。

 シンプルな技だが、ただの二連撃よりも速い。というか同時だ。そして若干の聖気を帯びているので、7階層の骨共には効きが良い。

 7階層の魔物が、自分達の特効スキルを持っていて、それを利用されるとは、思ってもみないだろう。

 俺は、ようやく使いやすい武技スキルを手に入れたのだ。『突進』は本来、体当たりの技だ。敵が無防備でもないと、俺が使うのは、危険すぎたからね。

 次に、スカルナイトは『剣術』がかぶり、『骨体』を獲得した。・・骨が頑丈になってしまった。

 最後にガーゴイルからは、『湧水』を得た。これは、何と言っていいのか・・水を出すのだ。魔力を注ぐ限り、ずっとだ。勢いを増しても、地球の水道水並みだから、攻撃に使う事は出来ない。でも、これは使える。水はどこでも貴重だからな。マナが枯渇しない限り生み出せるのは、メリットでしかない。


 7階層は、当然だが、通路にも敵は出る。さっきの死骨獣(デスビースト)死骨鳥(デスバード)等だ。天井が高いのは、飛行型が出るからかもしれない。

 死骨鳥は飛行するだけじゃなく、遠距離型の魔物だ。こいつ、骨を矢の如く飛ばしてきて、かなり鬱陶しい。挙句の果てには、弾丸の様に突っ込んでくるので、相当危険な敵だ。現状、7階層では、こいつが一番厄介だな。


 

 別れ道がたくさんあって、今、どこに居るのかが、全く分からんな。

 今日中にこの階層から出られなかったらどうしよう。ビスカに遅くなるとは言って来たけど・・いや、考えてもしょうがないか。まだ、時間的には昼過ぎだろう。

 成るように成れ、だ。

 む、ここは一通(いっつう)の様だ。通路に部屋は無く、突き当りに扉が見えている。ボス部屋って感じじゃ、無さそうだけど、行ってみるか。

 扉には、文字の刻まれた金属板が掲げられている。

 え~、何々?

 

「"この先は試練。覚悟ある者は挑み、弱者は引き返せ。宝物(ほうもつ)は勝者のみが掴む"・・・か」

 

 ん~~。これ・・・やばくない?

 宝物とか言って、釣る罠だろ。

 絶対に入っちゃいけない部屋だぞ、これ。ゲームでよくある、ボスより強い敵が出るっていう、アレに違いない。

 まさか、実際に目にする事になるとは。

 まだ、通っていない道はたくさんあるし、ここを絶対に通る必要は無いもんな。引き返そう。

 俺は、扉に背を向ける。


(おれはよわくなんかねぇ!!)

  ドン!!

(は? カル!!?)


 カルの、いきなりの体当たりによって、入る気も無かった扉が、勢いよく開け放たれた。

 そしてカルは、体当たりの勢いそのままに、部屋へ突入してしまった。


「嘘だろ!!?」


 カルが中に入った瞬間、外にいた俺達も、抵抗空しく部屋の中に、吸い込まれてしまった。

 俺達は、床にドサッと投げ出される。

 

「ぐへっ」

(大丈夫っすか旦那?)

(ああ、なんとか)

(もぉーー!! あんた何やってんのよぉー!)

(ふん! おれはつよいんだ)

(…皆、前見て)


 俺達が吸い込まれた先は、大きな部屋だった。どこぞの城にある、舞踏場のような。

 今は、カルを責めている場合じゃない。

 リンカの言う通り、視線をやると、床に描かれた禍々しい魔法陣から、1体のスケルトンが上昇してくる。

 魔法陣から、姿を完全に現し、骸骨の目に、昏い光が宿る。

 確かにスケルトンだが、体色は濃紺色で、その骨格からは、屈強さを感じる。肩や肘等は、どこか角々しく、下半身は黒い布で覆われている。頭蓋骨には、特徴的な2本の角が、左右に開く形で生えている。その角は、途中で前方に湾曲し、正に悪魔の角といった感じだ。手に握っている剣は、刀身が黒く、禍々しい。

 こいつからは、息が詰まるプレッシャーを感じる。


((死骨悪魔霊(スカルデーモン)・B-)、こいつB級だぞ!! 油断するなよ! 普通じゃなさそうだ!)

(はいっす!)

(そんなに構えてどうした。骨だけの魔物が恐いのか? 人間の少年よ)

 

 念話!?

 こいつ、ただの魔物じゃないのか!

 俺の緊張が伝わったのか、それっぽい事を言ってくる骨悪魔。


(返事は無しか・・つまらんな。こっちは、久々に出て来たのだ。我と楽しもうじゃないか、少年。だが、数が多いのは面倒だ。お前達)


 骨の悪魔は、ブラウ達に視線をやりながら、骨の手で器用に、パチンと指を鳴らし、複数の召喚陣を起動させた。

 陣から出てきたのは、死骨騎士(スカルナイト)死骨獣(デスビースト)だ。

 こいつらは強化されてるな。D級上位くらいか・・4体ずつの計8体。数が多いとか言って、あっちの方が多いじゃねーか!


(なるべく1人で戦うなよ!)


 あの骨悪魔、俺をロックオンしてんだよな。ずっと視線を外さない。


(雑魚がいくらいたって意味無いわよ! "ウィンドゲイル!!")


 フーコの魔法が、強烈な風を呼び、雑魚を吹き飛ばす。


  ギィン!!

 間一髪、俺は剣で受け止めた。

 魔法の強風に吹き飛ばされ、雑魚が宙を舞う中、骨の悪魔が、一瞬で距離を詰めて来たのだ。


「うっ、く!」

(我の遊び相手は、お前だ、少年)


 速っ! これがB級か・・・でも、闘気じゃ負けねーぞ!

 こいつがB級でも、マナは俺の方が上。

 俺の緊張が伝わったのか、危機を感じてくれたのか、腹の底から力が湧いてくる。『万気丹田』が熱を帯びている様だ。

 俺は、力で剣を押し返す。自分よりも遥に小さな身体の少年に、押し返されるのは、予想外だったのか、骨の悪魔は、後方に飛びずさった。

 今度は、こっちから行くぞ。マルセロンの剣を見せてやる。

 俺は、距離を詰める。

 攻勢に回ったら、敵が守りを崩すまで、攻めるのみ。

 連撃で押し込み、偶に隙を見せてやる。骨悪魔が、反撃に出ようとした所を叩く。闘気に差があればこその戦法だ。

 

 "十字斬り!"

 

 俺の隙を見て、反撃に出た骨悪魔。その上段に合わせた一撃は、奴の剣を弾き飛ばした。

 何だか、何時もより調子がいいぞ。


(むぬう、やるじゃないか少年。力も速さも、尋常ではない。 だが!)


 奴が、宙返りをしながら、拳を、こちらに振り抜いた。

 闘気の塊か!


  ガン!


「うっ! いってぇ」


 衝撃を腕で防ぐが、拳で殴られた感覚だ。

 身体を闘気で覆えば、ある程度のダメージを防げるが、結構は痛い。痛いで済んだのは、骨が強化されてたからかもな。

 しかし、今ので骨悪魔に剣を拾われてしまった。

 視線を骨悪魔に戻すと、既に奴は、遠目から突きの構えを取っている。

 奴の剣は、剣先に黒い光を湛えている。


("冥光穿閃(テネブリスグリント)!")

("アウラ!!")


 骨悪魔の剣から、黒い光の尾を引き、突きが放たれる。それは、直線状に、強烈な黒い光の閃光を生む。俺は、魔力を込められるだけ込めたアウラの風刃を、同時に放った。

 俺の放った風の刃は、奴の黒い光と衝突し、強い風の残滓を、辺りに撒き散らしながら相殺された。


(これ程とはな。剣の腕はともかく、まさか、人間の子に、基本性能で負けるとは。敬意を表して、見せてやろう)


 今度は何だよ!

 骨悪魔は、右手に魔力を集中させている。

 奴の右手に、またもや黒い光が宿る。


("ダークネスピュロボロス")


 手の平の上に生まれた、黒い球体。それは、一瞬で大きくなっていく。

 魔法か!? なら避ける迄だ。


(させんぞ、少年)

(動けんのかよ!!)

(当たり前だ!)

 

 ッ。きしょう! 魔力を溜めてる間は、動かないのが基本だろ!!

 躱せねぇ!!

 俺は意表を突かれ、骨悪魔に接近を許す。その骨の手から、魔法が放られた。俺は、黒い大玉に呑み込まれた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 黒球は、少年の身体を呑み込み、大きな球状の爆発を引き起こした。爆発は暫く形を保った後、爆煙を残して消えた。冥属性の破壊力を、重力で抑え込み、押し潰す魔法。

 例え、人の形を保てても、もう立てはしまい。


(久しぶりに楽しかったぞ、少年。感謝す、る・・・何?)


 爆煙が晴れた先に、少年は立っていた。身体に無数の傷を作りながらも。

 あり得ない・・・我はそう思った。


「くっ、ふ、へへ…焦った。流石に、死ぬかと思ったぞ」

(どうやったのだ、少年?)

(? 俺は、出せるだけ出しただけだ。魔力を、最大出力でな。思った以上に出せたけど・・・火事場の馬鹿力ってやつだ)

(それだけだと?)

(当たり前だろ! 次は斬ってやるよ! 魔法を撃つ前に。お前のお陰で絶好調だからな)


 少年は、血を流しながらも、興奮状態の様だ。

 だが、そんな馬鹿な事があるのか?

 今のは、冥属性中位魔法だが、冥属性は破壊に特化した属性だ。ただの中位魔法とは、格が違う。人間の子供が、魔力の放出だけで止められるものではない。

 仮に止められるとして、何故立っていられるのか?

 考えられる答えは一つだが・・・。

 さて、どうする? この身体のマナは、そう多くは残っていない。呼び出した眷属もやられてしまった。あの相手では当然の事だが。

 ・・・どうやら手詰まりの様だ。

 楽しくはあった。が、此方に来たのは、間違いであったかもしれない。

 彼方を見ると、魔物達が少年の前に陣取り始めた。

 少年を守っているのか、主思いじゃないか、素晴らしい。だが。


("ダークネスフランマ")


 最後まで足掻かねば、悪魔の名が廃る。

 闇の火炎が広範囲に広がり、破壊を行使しようと、少年諸共、魔物の一団を包み込んだ。

 しかし、轟々と燃える筈だった黒い炎は、突如として現れた、天井すら破壊しそうな竜巻に、吹き飛ばされてしまった。


(精霊の結界か)


 爆炎の晴れた先から、二つの炎の塊が飛んでくる。


(むう、"マジックバリア")


 魔法障壁に衝突した、二つの炎塊は、障壁に、轟音と共に罅を残し、余波の火を辺りに残して消えて行った。

 まだ障壁の補強は出来る。が、次が来る。

 今度は狼か。

 狼の咆哮と共に、巨大な水塊が障壁を揺さぶった。

 

  ビシィッ。 ピキキ。

(ぬう、魔力が足りぬ。限界か)


(まだ、ウチが残ってんだからーー!! "くっらえぇーーーー!!!")


  バキィン!!!

 風の精霊の一撃が、魔法障壁を打ち砕いた。そして、その風の拳の勢いはまだ止まらない・・・。


(ぬおおああっ!!)


 身体が強烈な風圧に殴られ、吹き飛ばされ、床に転がる。

 最早、闘気も、魔力も練れぬ。

 骨の身体には、罅が入り、なんとも情けない姿だ。

 少年が近づいて来るのが分かる。

 何やら残念そうな、悔しそうな顔をしているが。


(骨悪魔。じゃあ、またな)


 少年は、そう言って剣を振るった。

 何故、また、と言ったかは分からないが、あそこで退屈するよりはいい・・・そう思った。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「結局、こいつには、一人じゃ勝てなかったな」


 アウラで首を断ち切られた骨悪魔は、霧となって消えていった。

 

 いやあ、試練にしたって、しんど過ぎるでしょうよ。迷宮の神様。

 初めてB級と戦ったけど、ほんとにB級下位だったのか、疑わしいほど強かった。

 さっき、目の前で戦う配下を見ながら、こいつらが居なかったら、俺は終わってたな。と、想像して、ゾッとしたのを思い出す。

 まあ、その臨死体験の元凶を作ったのは、配下の精霊な訳だが。そいつは今、フーコに怒鳴られ、リンカに諭されているので、俺が言う事は無い。

 骨悪魔が、消えた後には、黒い拳大の魔石と、あいつの使っていた、剣が落ちていた。

 この黒い剣、呪われてないよな? ギルドで見て貰わなきゃ、流石に安心できない。

 そしてもう一つ。

 骨悪魔を倒した報酬として、床に描かれた魔法陣、あいつが出てきた場所に、宝箱が出現した。

 因みに、出方もあいつと同じだった。

 さあ、試練の報酬は何だろうか? わくわくするな。

 ミミックを除き、初めて宝箱というものを開けるぞ。何やら豪華な装飾が見られるし、期待できそうだ。

 ガチャッとな。


「どれどれ、中身は・・・本?」


 こ、これは!!?

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