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20話 冒険者の鬼門とレベル

 下の階層で、魔石を集めた俺達は、ようやく、7階層に到着した。

 7階層は、自然が広がり、大きく開けた6階層とは打って変わり、ダンジョンのタイプで言えば、1~5階層の、洞窟型と同じタイプだ。


「ホントに、建物の中っぽいな。コンセプトは、城とか要塞なのかな?」


 事前に聞いていた通り、ここ7階層は、建物の中だ。今いる部屋は、床も壁も天井も、全て石造り。建物を、外から見る事が出来れば、石造りの、立派な建造物なんだろうな。

 部屋から通路に出ると、見える範囲だけでも扉が多い。全部、部屋に繋がっているんだろうか? 

 洞窟型、通路型と言えば分かるだろうか。でも、低層の洞窟よりも広いし、天井も高い。

 縦長の小窓からは、外が見えていて、この階層は夜のようだ。だが、至る所に照明があるので、視界に困る事はない。


(初めて来るとこだから、慎重にな)

(ここは、なんか、緊張するっすね)

(人工物だから、皆は慣れないだろうな)

(おれは、へーきだぞ!)


 俺だって慣れない。

 こんな王様が住んでそうな所は、ゲームでしか知らない。ウチの屋敷とは、月とすっぽんだし。

 カルは、強がりじゃなく、本当に平気そうだな。

 とにかく進もう。手近な部屋の扉を、身体を壁に隠しながら、慎重に開けてみると、中は長い部屋になっている。

 兜を被り、軽鎧を着たスケルトンが、数体うろついており、いかにもな全身鎧の甲冑が、奥に置かれていた。

 俺が、敵のマナを測ろうと、スキルを発動すると、鎧のスケルトン達が、ぐるりと此方に方向転換し、一斉に走り出した。


「「カカカカカカ!!」」

(やべっ!! あいつら、こっちに気付いたぞ! 皆構えろ!)

(まかせろ! "熱波(ヒートウェイブ)")


 カルが、飛び出し、口を開く。カァッ! と閃光が奔る。


 ズオッ・・ ガッシャァーーーーーーン!!!

 

 押し寄せるスケルトンを、高熱の衝撃破が呑み込んで、机や椅子、食器、燭台、部屋の中のありとあらゆる物を、巻き込んで吹っ飛ばした。

 

 うひょおーーー!!? 強烈!!


(どうだーー!!)

(凄いぞ、カル!)



 俺は、顔を腕で覆いながら、状況を確認する。スケルトンは、部屋の奥の方で、シュウシュウと、煙を上げ、大ダメージを受けていた。だが、6体居た内の3体は、生き残ったようだ。

 あれを受けて生きてんのかよ。

 E・F級と違ってD級は、脅威度が跳ね上がるな。でも、あいつらは、虫の息。気を付けなきゃいけないのは、今の衝撃で動き出した、甲冑の魔物だな。

 あいつも、D級と。


(行け! "アウラ")


 生み出された風の斬撃は、甲冑の前面に、穴を空ける程の、傷を付けたが、敵は物ともせず、こちらに走り出した。

 中身は、やっぱ空か。

 剣を抜き、ドッドッと、重い足音を立てて迫る。

 悪いけど、俺は相手しないよ。

 近づいてきた、甲冑の魔物・・元い、リビングアーマーの背後から、ファントムのリンカが、突如として現れ、魔力剣の一撃で両断した。切り口は熱を帯び、赤い断面は溶けている。

 ジュウゥッ、と焼け音が聞こえ、地面に落ちきる前に、霧散していった。

 リンカの魔力剣って、火属性を乗せられるのか、切れ味がえげつない。

 魔法型なのに、近接も行けるとか、強者の戦闘スタイルだ。

 残ったスケルトン3体に止めを刺し、魔石を手に入れた。軽鎧のスケルトンは、スカルナイトという魔物で、使っていた剣を落していた。

 ジワリ、と熱いものを感じる。レベルが上がったな。

 そう言えば、ガンドの欲しい鉱物って、こういう剣もありかな? 帰ったら聞いてみよう。


ステータス

 名前: 火流(カル)

 種族: サラマンダー

 ME: 4700/5700

 等級: C

 属性: 火

 加護: なし

 能力: 固有スキル『半霊体』『火炎』『火霊』

     標準スキル『仲間召喚』『魔力操作』『灼熱結界』『熱波』


 カルのスキルは、マナが結構減ったな。マナエナジーが5700から4700迄減っている。

 精霊は、自身の力を使う場合は、俺達同様マナを減らし、自然の力を操る場合は、マナの消費を抑えられる。

 ガンドが、元気な理由だな。


 

 ここ7階層は、冒険者にとって鬼門の場所だ。

 ベテランを除き、6階から順調に進んで来た、一般的な冒険者は、敵の強さが、異次元に感じる筈だ。下級に比べて、魔物の動きが別格になるし、マナの量も、倍近くに増えるから、同じ感覚で臨むと、痛い目を、というか下手したら死ぬ。実際、ここで命を落す者が、続出しているらしい。

 当然、危機を感じたら、6階層に戻るか、町の外で狩りをするのが基本だ。

 そんな中、冒険者になって僅か1週間の俺がここに居るのは、馬鹿な真似だと言われても、文句は言えない行いだ。

 

 俺達人間が強くなるには、剣術や魔法といった技術を磨く事と、マナのレベルを上げる事だ。

 レベルを上げるには、気を貯めなきゃいけない。魔物を倒す事で得る気・鍛錬で得る気・体外から吸収している極微量の自然の気、これらを貯める事で、レベルが上がる。早く強くなりたいのなら、技術を磨いて、魔物を狩るのが、最上の手段だ。

 俺は、この気の事を、勝手に経験値と呼んでいる。

 マナは、レベルが上がる毎に、徐々に増えていく。

 逆に魔物は、元からマナが多い。魔物も気を貯めるが、それは進化に使われる。存在を昇華する事で、格段に強くなるのだ。

 人間も魔物も、強くなるには、時間が掛かるのは、変わらない。

 俺の能力は、この法則をぶっ壊してる。マナは増えるし、スキルも生える。

 だから、絶対に秘密だ。


 

 まだ、7階の一部屋しか覗いていない、どんどん進んで行こう。

 敵は強いが、罠はない。二部屋目は、どうなっているかな?

 俺が、さっきと同様、慎重に扉を開けようすると。


(…私が見て来る?)

(んあ?)


 間抜けな声が出てしまった。

 そっか、リンカにしろ、精霊達にしろ、霊体持ちは壁をすり抜けられるな。さっき床抜けしてたしな。

 わざわざ俺が、間抜けを晒さなくてよかったのか。


(頼んだ、リンカ)

(…うん・・・・・・あ、駄目みたい…)


 どうやら、ズルはするな、という事らしい。ダンジョン特有の、見えない力が、リンカを弾いた。


(なら、しょうがない。行くぞ!)


 扉の先は、さっきと同じ部屋。左右の壁際に、羽のある石像が、6体並んでいて、奥にまたリビングアーマーがいる。スキルで、石像は、D級のガーゴイルだと判明した。

 俺の『万気丹田』では、敵の名前や等級は分かっても、どんな能力を持っているかが分からない。全部見えれば、もっと便利なんだけどな。

 そのガーゴイルは、俺のスキルに反応して動き出す。

 またか、全員、感知スキルでも持ってるのか?

 それとも、使われたら誰でも気付くのか・・分からないな。検証しとけばよかった。


「"ギギ・・ギ"」

  

  ドシュ!

 ガーゴイルが何事か呟くと、口から氷塊が発射された。


「うおっ!」


 俺が、後ろに飛び退くのと同時、何かが、上から氷塊を叩き落とした。


(旦那、無事っすか?)

(ああ、掠ってもいないよ)


 今のは、ブラウの尻尾だったようだ。

 ガーゴイルは水属性なのか、体は石のくせに。

 ブラウは、そのまま駆け抜け、氷を纏った尾の一撃を、ガーゴイルの頭に叩き付けた。強烈な一撃で、体が前方に、ぐらりと傾くガーゴイル。どうやら、動きは遅いようだ、その頭を、ブラウに嚙み砕かれる。


(いっけぇー!! "ウインドエッジ")


 風の刃が鋭い音と共に、直線に並んでいた2体を同時に、上半身と下半身に両断する。

 それを見た、残る3体が、焦ったように飛び出して来る。と同時に、高熱の火炎が、空中のガーゴイルを襲う。カルのファイアブレスだ。


(どうだ! まいったか!!)


 しかし、ガーゴイルは、五体満足で、火の中から飛び出してくる。燃焼時間が短すぎたようだ。石の体が焼け焦げてはいるが、動けるようだ。その口に、光が宿る。


(あ、くっそー!)

(…"ファイア")


 カルの悔しがる横から、リンカが火の基礎魔法で、2体を焼き焦がす。

 ガーゴイルの魔法は、不発に終わり、体が霧散する。残りの1体も、魔法を発動しようと、下がった所を、俺が闘気を乗せて叩き切った。

 リンカは、魔法型な上、火属性を強化する『火魂』持ちだから、初級魔法でも威力が高いな。

 俺が、部屋の奥を見ると、リビングアーマーは、既にブラウが蹂躙して、霧散させていた。

 カルは、悔しがっていたが、ガーゴイルに、火は相性が悪そうだし、ダメージをあれだけ出せれば、十分だ。


 一息ついたので、気になった事を確認しよう。


(ブラウ、俺がお前にスキルを使うと、どんな感じだ?)

(能力を測るやつっすか? あれは、旦那の視線が、あっしに向けられてる感覚はあるっすね)

(そっか、ありがと)


 成程、誰でも気付くって事か。

 あぶね~。

 まだ、人に向けて使ってなくて良かった。

 というか、今、気付けて良かったぞ。

 知らなければ墓穴を掘っていたかもしれない。

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