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17話 拠点造り④ 水源

 アラクネの糸については、一度、屋敷で父上に相談するとして、まだ時間は昼過ぎだ。

 俺は、『小さな宝箱』から軽食を取り出して食べ始める。配下の魔物達は、有害で無ければ基本的に何でも食べる。生でも問題ないが、焼いた方が良いらしく、リンカやカルが焼いたものを食している。マナに含まれる魔気を吸収して、エネルギーに変えているので、1日1食でも問題なく行動できると聞いた。

 焼いた方が良いって事は、味覚もしっかりあるんだよな。いずれは、人が食べる物も食べさせてやりたいな。ブラウやボレアスの様な獣型には、無理かもしれないけど。

 

 俺が昼食を摂りながら、魔物の食時事情を考えていた時だった。


(ギル様、お願いがあるのですが、いいですか?)


 お? ミズネか、さっきもこの流れあったな。何だろうか?


(ああ、いいよ。何でも言ってみてよ)

(それが、私達精霊は、自然から、自分と同じ属性の気を、分けて貰っているのですが、ここには水が無くて・・・フーコやガンドは平気なんですけど、)

(成程、精霊には環境が必要って訳だ)

(そう、そうです!)

(じゃあ、カルも同じってことだよね? ここは火も無いし)

(はい、そうなります。今すぐ、どうこうなる訳じゃないんですけど、ギル様は知らないと思ったので)

(あ~、ごめんね。全然気付かなかったよ。・・・そう言う事なら、まずは水場を作ろうか。この森は河が通ってるからね。ミズネとガンドの能力があれば、出来そうだ)


 ガンドの仕事量が多いけど、頑張って貰おう。


(おーい! ガンド! 悪いんだけど、こっちを手伝って欲しいんだ。皆は休憩しててよ)


 ドラコニアン達を休憩させ、ガンドに事情を話す。


(…マカセテ)

(疲れてないか?)

(…モンダイナイ)

(なら頼むよ! 北に進めば河に出る筈だ)


 ガンドの声は小さいが、本当に疲れていないようだ。大地の力を分けて貰っているんだろうか、マナもほとんど使っていない。ガンドの『大地』というスキルは燃費が良さそうだが、幼精霊なので、まだ十分に使いこなせてはいないらしい。今でもかなり凄いんだけど・・・。


 

 俺達は、河を目指して北上中だ。お供は四精霊に、リンカとブラウだ。フーコは浮いているが、三精霊はリンカと共にブラウの上に乗っている。・・・ガンドだけ乗せようとしたんだけど、まあいいか。

(ねえ、精霊の力で地下水とか見つけられないの?)

(あ!・・・出来ます)

(出来るんかい!)

(ごめんなさい、思い浮かばなくて…)

(いや、全然いいんだけどさ。水源が二つあってもいいしね。このまま河に行くよ)

(もう見えてるよー! あとちょっとだけど、近すぎ~)



 上空を飛ぶフーコから、お知らせが来たな。大森林の木々は背が高いから、ここまで見えなかったのだろう。きっと冒険がしたかったんだな、声のトーンが極端に下がったぞ。

 拠点から、1~2kmくらいかな?

 フーコには悪いが、離れているより近い方が、水を引きやすくていい。

 河幅はあるし、水量もある。

 

 俺は、事前に河の事は知っていた。この土地に住んでいたら当然だな。

 この河は、ラグ二ー河と言って、北のパルフェウス山脈から流れて来ている。大森林の北東部を通り、そこからウチの領の北側を、東に横断してから南下しているからだ。分かりやすく言うと、山から南下して東に折れてまた南下している、という事だ。緩やかなS字を描くような感じかな。終点は大きな湖に繋がっている。


 ここは、河の端が、自然の堤防の様になっていて、ゴツゴツとした岩肌が、川に沿って続いているんだ。


(なあガンド、これってスキルで何とかなる?)


 ガンドは首を横に振っている。駄目か、魔法で破壊は出来るだろうけど、

 下はどうだろうか? ガンドが地面に手を当てて調べているが・・・お! 今度は、ガンドが頷いたぞ。下はいけるみたいだな。


(一旦、ここから拠点の近くまで水路を作ろう。全部ガンド頼りになって悪いんだけど頼む。俺達はガンドの護衛だ!)

(…ワカッタ)

(おれがまもってやるからな~!) 

(遊びじゃないのよカル!)


 

 昨日今日で魔物を蹴散らしたから、この辺りも静かなのかな? ここ迄来る道中も、魔物に出会う事は無かった。


  ズザッ!


「ん!?」


 俺達の後ろから、何かが跳び上がった音がした。瞬時に反応して、上を向く、大きな影がフーコの頭上に見える。フーコを頭から呑み込んでやろうと、襲い掛かる瞬間だった。


(フン!甘いわよ!)


 フーコが拳を、そいつに向かって突き上げる。 ドバン!! という音と共に、巨体が上に跳ね上がり、錐もみ回転しながら落ちて来た。

 かっけー・・・。俺よりも小さいくせに、何てカッコいい技を使うんだ。たしか『疾風拳』だったか、風を纏った拳一発で、敵は伸びてしまった。


(空中でウチに近づくなんて、バカヤローねこいつ!)


 罵倒しながら、風刃で首を両断するフーコ。恐ろしいチビっ子である。

 巨大な影の正体は、岩大蛇(ロックパイソン)だった。等級D+の中々の獲物だな。こいつは持って帰ろう。デカすぎて、俺のスキルにも入らないので、引き摺って行く。ガンドの作業をしながらなので、ずっと持っている必要も無いしね。


 ガンドには、幅3m、深さ1mの水路を、形成して貰っている。

 地球に精霊がいたら、あの時の秘密基地も一瞬だったな~、なんて詮無い事を考えていると、もう拠点が見えて来た。ゆっくりと進んでいたが、2kmも無いから、あっという間に感じた。最後に溜池を作って貰って終わりだな。


(ガンド、拠点からちょっと離して、この辺りに大きな池を作ろう!)


 ガンドが地面を操作し始めると、ガンドを中心に、ズズズッと蟻地獄のように凹んでいく。途中、岩やら出て来るが、フーコとミズネがうまく処理していた。

 池の予定地はこれでOKだ。これなら、ミズネも満足するんじゃないかな? 後は水を引くだけで完成だ。


 

 

 河の水が、ドボドボと岩の堤防下から溢れて来る。氾濫しないように、水流を、ミズネが調節しながら様子を見ている。空けた穴も大きくないので、大丈夫そうだ。

 ガンドの土弄りも楽しかったけど、水が水路を流れていくのは、なんだかわくわくするな。

 

 よしよし、流れも安定して来たし、順調だぞ。

 全部、ガンドのお陰なんだけど、仕事を一つ、やり遂げた感がある。


(後は戻りながら、水の様子を見よう)

(やっと終わったのー?)

(ああ、フーコもありがとな! 後は池に水が溜まれば、完成だ)

(ギル様、ガンドもありがとうございました!)

(俺は何にもしてないからなぁ。ガンドは何か欲しい物はないか?)

(…イシガホシイ)

(石? ああ、鉱物か。OK! 良いのがあったらガンドにあげるよ)


 ガンドはこくりと頷く。

 ガンドの、石が欲しい発言は、スキルに関係がある。『大地』の力は、鉱物を吸収してグレードが上がるようなのだ。他の精霊にも、似たスキルがあった。

 ガンドが成長すれば、いずれは硬い鉱物も、簡単に砕けるようになるかもしれない。


ステータス

 名前: 巌土(ガンド)

 種族: ノーム(幼精霊)

 ME: 5400

 等級: C

 属性: 地

 加護: なし

 能力: 固有スキル『半霊体』『大地』『地霊』

     標準スキル『仲間召喚』『魔力操作』『大地結界』

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