15話 拠点造り② 大蜘蛛の女王
拠点造りは、配下の能力が、うまく機能してくれて、思ってたより順調に進んでいると思う。
進化様々だ。
しかし、進化後は魔石を使っていない。変化した身体が受け付けないらしく、食事でしか、マナを取り込めないようだ。俺の、マナの過吸収と似ている。
まあ、そうだよな。俺の能力で無理やり成長して、進化までしているんだから。
彼等魔物は本来、獲物を狩って、その死骸を食べる事で、少しずつ少しずつマナを取り込んで、成長していく。俺達人間の、レベルという概念は無いようだ。現段階は、更にマナを吸収する為の身体作り、と言った所かな。どれくらい時間が必要かは分からないけど、焦らずに待とうじゃないか。
ボレアスが、俺にはマナの放出に制限が掛かっている、と言ったが、それも身体が成長したり、レベルが上がれば増えて行くようだ。
形は違うけど、段階を経るのは同じか・・・でも、俺は魔石使えるんだけどね。
マナの蟠りが解消されたばかりだから、1個だけ使っておこう。使うのは、勿論、ウィスプの魔石だ。配下の召喚を出来るか、試したい。
(じゃあ、俺は一旦帰るからさ、ここをよろしくね、ボレアス)
(承知しました)
(何かあれば、皆で逃げるんだぞ。念話は届かないから)
(おれがいればへいきだ! あんしんしろ、ごしゅじん!)
(分かってるよカル、任せたぞ! じゃあブラウ、ウチまでよろしく)
(はいっす! 旦那、振り落とされちゃ駄目っすよ!)
(いやいや、ゆっくりでいいよ。まだ陽も落ちてないし)
(そうっすか? 残念っす)
屋敷までは、ブラウに乗せて貰う。ゆっくり走れば、揺れも平気だ。俺達の上空を、シルフのフーコが、優雅に飛行中だ。フーコは、上空からの護衛だな。
風の精霊はいいよな、飛べるし速いし、風の影響も受けない。俺も、飛行出来たら気持ちよさそうだよな、と妄想してしまう。
ブラウの背に乗りながら、ウィスプから得た『仲間召喚』について思い返す。
このスキルは、俺でも使用可能だった。俺が『仲間召喚』を使えば、種族を問わず、全員を召喚することが出来た。マナの繋がりを系譜で例えるなら、俺は親みたいなものだからな。
それから、試していなかった俺の逆召喚は、やっぱり駄目だった。畜生め、これが出来たら、疑似的な転移が可能だったのに・・・。
とにかく、スキルが俺にも使えて、ホッとした。皆を召喚出来れば、ダンジョンも行きやすいし、移動もスムーズになる。
『万気丹田』にも、分かった事がある。こいつにはまず、対象のマナの能力を、見抜く力がある。おかげで、俺達の戦力把握が捗るな。次に、マナの回復を早める力もあった。自然のマナを吸収して、マナの回復を図るのは、当たり前の事なんだが、それを更に早めてくれる。まだあるぞ。こいつは、貯蔵タンクの役割も持っていて、俺のマナは、4万近くあるが、それにプラスして貯蔵もしておけるみたいだ。優秀過ぎるスキルだな。魔法使いなら、喉から手が出るほど欲しがると思う。
次の日の朝、馬車で出発した直後だった。
「あっ! 俺も連れて行けーー!!」
「おいおい、 止めないで行って行って!」
噂を聞き付けたであろうリチャードが、馬車に乗ろうと走って来たが、そうはさせまいと、俺も御者さんにスピードを上げろ、と催促する。
ふうっ、うまく撒けたな。油断も隙も無いな、あいつ。
連れて行ってあげてもいいんだけど、お目付け役が居ないんなら駄目だ。さっきのも独断だろうし、父上の許可も取っていなさそうだ。あいつを連れて行ったら、俺も父上の怒りを貰うことになる。
小さなトラブルはありつつも、今日もやって参りました、大森林。
皆の様子は、どうだろうか?
リザードマンから進化したドラコニアン達が、既に動き始めている。気を張って頑張らなくてもいい、とは言ってはあるが、楽しそうにやってるし、このままでもいいかな。
(おはようございます、ご主人様!)
(うん、おはよう、ご主人様じゃなくて、ギルでいいよ)
(はい! ではギル様とお呼びします)
(うん、それで頼むよ。問題は無かった?)
(魔物と戦闘はありましたが、大した相手ではなく、カル殿が焼き払っておりましたよ)
ご主人様呼びは、ムズムズするんだよな。彼等には改めて貰うとして、やっぱり、魔物の襲撃はあったようだ。
(みずね、はやくはやく! ごしゅじん、みろよあれ!)
(俺はギルでいいぞ。フーコもそう呼ぶだろ?)
(わかったぞ! これみろよ!)
カルが急かすので、ミズネの方を見る。ミズネは人型だが、水の精霊らしく水を操り、その水に乗って移動する。よく見ると、その水の中で、魔石が泳いでいる。水流に乗っているだけなんだが、泳いでいる様に見えるのだ。
(はあ、急かさないで、カル。ギル様、こちらをどうぞ)
(お、ありがとう二人とも。結構あるじゃん)
(おれがみつけたんだ! くもがいっぱいたぞ)
(へぇ~、良くやったぞカル! だけど無茶するなよ。ミズネもありがとな)
(へへっ! だいじょうぶだって)
(こらっ! カル!)
(うわっ、わかたって)
仲良いな、こいつら。元はウィスプだし、家族みたいなもんか。ミズネは長女って所かな。
この魔石は、F級の大蜘蛛のものだ。その中に、おや? と思うものが1つ、E級が混じってるぞ。でも、大蜘蛛の魔石で間違いない。これは、あれかな?
(カル、1匹大きいのが居なかったか?)
(いたぞ! いとをたくさんとばしてきたから、もやしてやったんだ! そいつがむれのボスだったぞ)
こいつは、女王なんだろうな。
大蜘蛛か、この時、俺は、ピン! と閃いた。
この蜘蛛達に、防衛網を構築して貰うのは、良い考えだと思わないか?
独りごちてしまったが、俺達には必要なものだろう。ボレアスが居るから、手を出してくる魔物も少ないだろうが、森の奥から、高ランクが出て来る事も、想定しておかないとな。
「大蜘蛛達、復活だ」
取り敢えず、蜘蛛達を20体復活させる。更に、女王も続けて呼び出した。
大蜘蛛達は、ハエトリグモに似ている。四つ目で八本足、体長は50センチ程だ。大きくても、俺は怖くない、母上が見たら卒倒するだろうか? 意外とかわいいんだけどね。
女王は、もっと大きくて、1メートルはあるかもしれない。
その蜘蛛達は、ちょっと動揺しているようだ。
そんな中、女王が口を開く。
(我々は、死んだはずでは・・・)
(俺が蘇らせたんだ。分かるだろ?)
(成程、あなたが我々の主なのですね)
(そうだね、皆にも協力して貰うよ! 俺達は、今この森で______ )
大蜘蛛達に、俺の事や今の現状を、簡単に説明してやった。
(という事は、我々も進化出来るのですか?)
(そう言う事だね、さっきも言ったけど、皆には、防衛を任せるからね)
(はい! 精一杯、頑張らさせて頂きますわ)
ステータス
名前:
種族: クイーンアラクネ
ME: 7600
等級: C+
属性: 無
加護: なし
能力: 固有スキル『魔力糸』『鋼糸』『柔糸』『産卵』『配下召喚』
標準スキル『誘惑』『大網縛り』『斬糸』
ステータス
名前:
種族: アラクネ
ME: 3400
等級: D+
属性: 無
加護: なし
能力: 固有スキル『硬糸』『柔糸』
標準スキル『誘惑』『糸玉』
ステータス
名前:
種族: アサシンスパイダー
ME: 3500
等級: D+
属性: 冥
加護: なし
能力: 固有スキル『闇纏』『音無』『硬糸』
標準スキル『闇霧』『暗闇縛り』『糸玉』
多様な進化を遂げたな。大蜘蛛の内、5体がアサシンスパイダーに進化して、残りは、アラクネに進化した。
アサシンは、元の姿から、一回り大きくなって、黒い体色に変化した。
アラクネは、身長が人に近く、下半身が蜘蛛、上半身が限りなく人間の女性に近い。限りなく、と言うのは、綺麗な顔だが、人間の俺には、造り物にしか感じないからだ。
アラクネは、胸から下が蜘蛛糸に覆われており、服を着ている様に見えるので、安心だ。流石に、裸だと、目のやり場に、困ってしまうからね。
クイーンは、アラクネより更に大きく美しい。蜘蛛糸の質も違うようで、身に付けている服も、豪華に見える。正に、アラクネ達の女王と言った風貌だ。