12話 燐火(ゴースト)の進化と増える配下
ゴーストからファントムに進化した燐火の能力で、今分かるのはこんな感じか、
ステータス
名前: 燐火
種族: ファントム
属性: 冥・火
等級: ?
能力: 固有スキル『霊体』『浮遊』『憑依』『火魂』
標準スキル『剣術』『毒針』『生気吸収』『恐怖声』『魔力形成』
『仲間召喚』
霊体のファントムに、使えるか分からない剣術はともかく、スキルが増えたな~。
ゴーストの時には無かった、『生気吸収』と『恐怖声』は響きが怖いな。仲間だからいいんだけどさ。
スキルの中で、一番気になるのは、『仲間召喚』だ。
ウィスプが使っていたアレだな、
(リンカ、それ、ブラウに使ってみてくれ)
(…ブラウは無理。あの子なら…呼べる)
リンカが、ブラウはダメでウィスプは大丈夫だと、指を差しながら言う。
む、何でだ?
とにかく、一度使ってもらおう。
リンカがスキルを発動すると、俺の隣で浮いていた、ウィスプの頭上に魔法陣が現れた。
同時に、俺の目の前にいるリンカの近くにも、魔法陣が出現する。
ウィスプの体が、魔法陣に吞み込まれたと思ったら、目の前の魔法陣から、フヨッと出てきた。
・・・分かってたんだけど、シュールだな。
でも、実際凄いスキルだぞ、これは、どこまで有効なんだろうか?
(なあリンカ、それって、ウチの屋敷までいけそうか?)
(…出来る…けど、…魔力たくさん使う)
(え、いけちゃうの!?)
ふーん、そっかぁ・・・距離で消費が違うのね。
ブラウが召喚出来ない理由は、種族的な話かもな。燐火もウィスプも、霊系の魔物だろうし、
もし俺が使ったら、どうなるんだ?
人間だから、ダリオやリチャードを呼べるとか?
ん-、いまいちピンとこないな。
今は、置いておこう、いずれ実験できる。
他のスキルも詳しく調べたいけど、日が暮れるからな、今度にしよう。
因みに、魔法はスキルとして発現しなかった。
知ってたけど、期待はしてたんだ。残念・・・。
ウィスプ達は、どうしようかな。緊急事態だから、呼び出しちゃったけど、世話になったしな。
1体犠牲になってしまったけど、まだ4体残ってる。
とりあえず、余ってるF級の魔石を、全部使ってみよう。足りなければE級を使えばいい。
うおお・・・ 改めて見ると壮観だな。
予想外の進化ではあったけど、やっぱり魔物の進化には、ロマンがあるな!
火属性のウィスプは、サラマンダーに、水はウンディーネ、風はシルフ、地はノームに、それぞれ進化を果たした。
精霊じゃん! ゲームにも居たなぁ、なんてポカンとしてると。
(…この子達が…名前…欲しいって)
(名前か、帰ったら考えとくよ)
(…うん)
精霊達はリンカをボス扱いしているな。母親的な感じか、俺はボスのボスになるのか?、
この精霊達は、幼精霊らしく子供っぽい。子供の俺が言うのも、何だけどね。
大きさで言うと、ウンディーネが俺と同じくらいで、他は俺より小さく、シルフは俺の膝くらいだ。サラマンダーは、火を纏った蜥蜴なので、体高で言えば、サラマンダーが、一番小さいな。
この子達は、全員身体の一部に、自然を持っているが、『半霊体』と言う特性で、物質に影響が出ないようにしている。精霊の特徴っぽいな。
(改めて、4人ともよろしくな!)
(よろしくお願いします)
(よろしくな、ごしゅじん! )
(よろしくねー! ギル)
(…ヨロシク)
四者四様である。
ノームは、ゴーストだった時のリンカより声が小さいぞ。念話だから関係無いけど。
そろそろ帰ろうか、予定では、ウチに返ってから、従魔を増やそうと思ってたんだけど、仕方ない。
ダンジョンから出たら、騒ぎになるかもなー、なんて考えていたけど、そんな事にはならなかった。どうやら、中で出会った冒険者の人達が、俺の話をしていたようだ。
大きなブラウを見ても、すわ魔物か!とはならなかった。有り難い。もう夕方で、人が少なかったのもある。ただ、精霊達は人気だった。小さいし、なんか愛嬌があるからな。まあ、当の精霊達は、プライドが高いようで、決して触らせはしなかったが。気高くていいじゃないか。
神殿には、ウチの領兵もいるから、すぐにその騒ぎも収まった。
やっと帰れるな。
馬車で移動中、精霊達に、ウチの家や領地の事を、簡単に話しておいた。
理解したかどうかは怪しいが、サラマンダーが、おれにまかせとけ! と言っていたので、大丈夫だろう。何を任せればいいのかは知らないが。
屋敷に着いたのは、陽がもう落ちる。という頃だった。
先ずは、父上と母上に報告だな。
「____という事で、魔物達が増えてしまいました。今は、庭で寛いでいる所です」
「それは分かったが、ずっと庭に置いておく訳にもいかないだろう。どうするんだ?」
「可愛いから、ずっと家に居てもいいんじゃない?」
「帰って来る時、馬車で考えていたんですけど、西の大森林を利用しようと思うんですよ。
大森林の浅層は、比較的弱い魔物しか出ませんし、精霊も自然豊かな森が良いと、煩いんですよね。
あの森は、ウチの隣領にも接していますが、所有者では無いので、開拓したらウチの物に出来ます。
西の国は、大森林の向こう側ですし、問題ありません。どうです?」
「どうですって、大森林か・・・ふむ」
突飛な話の筈だけど、父上が俺の顔を見ながら、何やら考え始めた。
母上は、魔物達を気に入ったようで、膝の上にサラマンダーを乗せている。どうやら、俺の家族はセーフなようだ。借りてきた猫の様に大人しい。母上は、生きてる魔物を、間近で見る事も余り無いもんな。いい機会だ。
「ギルは、また強くなったな。魔物達も尋常ではない速度で成長している。ギルの言葉が正しければ、これからも増えていくんだろう? なら、早めに対処するのは当然だな。やってみるといい」
「あ、はい! ありがとうございます、父上」
「あら残念ね。でも、たまには連れて来るのよ、ギル」
「ええ、もちろんですよ」
「人が欲しい時は何時でも言え、いいな?」
「はい!」
とんとん拍子に話が進んだな。俺って、まだ10歳なんだけど、一応信頼されてるって事かな?
庭に戻る前に、料理人のハンスに、ダンジョンで獲れた魚を渡しておこう。お土産だ。
「ハンス! 今日の夕食に、これ追加できない?」
「おや、坊ちゃん、それはミコーフィッシュじゃないですか? いいですね、
それなら、簡単な塩焼きにしましょう。大きいので1匹で足ります」
「それ、10匹あるから、明日にでも屋敷の使用人に出してあげてよ」
「そんなに獲れたんですか!? 獲るのは結構難しいと聞いてますが・・・。
では、有り難く頂戴します。こっちの冷蔵庫に移しましょう」
本当は20匹だったけど、ウチの魔物達に食べさせてやりたいからね。10匹は保管しておく。
庭に出ると、リチャードが、ブラウに乗ろうとして、失敗している所だった。仰向けに倒れている。
「だああーー!! 乗せてくれよ犬ぅー!」
「犬じゃなくて狼だって」
「んあ? ギルか、お前、ダンジョンに行ってたのか」
「俺は家を出るからな、その予行演習って訳」
「ズルいぞ、俺だって行きたかったのに」
「リチャードは、その内学園があるだろ? 俺は、行かないんだから、お相子だろ?」
「むむ、確かにそうだな! 俺が代わりに王都を見て来てやるよ!」
「ああ、頼んだ。 それと、今日は魚の塩焼きが出るってさ」
「何!? 行くぞギル!」
単純過ぎんかねリチャード君、好物に釣られおったわ。
その日の夜は、ミコーフィッシュの塩焼きを美味しく頂いて、眠りについた。