表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/28

10話 我慢は止めようか

(逃げるなっす! アネさん!)

(…"ファイアボール!")

「ゲゲエエーーー!!」


 俺の視界の先で、ブラウ達がフロッグマンの群れを蹂躙している。

 上に居たのと同じ奴らだな。5体、数が増えても問題ない。

 二人の戦闘中に、俺が何をしているかっていうと、ホブゴブリンの魔石を丁度吸収し終えた所だ。


《スキル『棍棒術』を獲得しました》


 む、棍棒術か、この〇〇術ってのは割りとポピュラーなスキルだ。これを持っていると技が使えるって訳じゃないけど、武器の威力が増すのだ。正しくは、自分の闘気の上に更に闘気が乗るらしい。

 ゲームにもこういうのあったな。

 使えるスキルなんだけど、棍棒は無しだな。


「何だ? 身体が変な感じがするな」


 魔石の力を吸収すると、いつもの様に体が熱くなったのだが、何だか腹の辺りに違和感を感じる。

 ・・・悪い感じはしないんだけど、マナが集まって、何かが形成されているのを感じる。

 今、魔石を使うのは止めておこうか、流石に怖い。

 身体が爆発四散する想像をしてしまった。

 これはもしかしたら、ブラウと同じ事が俺にも起きているのかもしれない。

 人間の進化なんて聞いた事無いから、スキルが進化中って事か?


(旦那、コレを、まだ転がってるっすよ)

(ん、ありがと!)


 ブラウが魔石を持ってきたので、拾うのを手伝ってやる。

 リンカは霊体という弊害があるから、物を掴めない。

 『小さな宝箱』は便利だ。魔石が嵩張らずに済む。

 

 

 巨大な水の塊が、蜥蜴人の剣士数体に向かって勢いよく飛んでいき、 ズボオオーン!! と重い音を響かせて押し潰した。

 おおう! アクアブレスが一撃で蜥蜴の魔物を圧殺してしまった。そのまま拉げた死骸が霧散していった。

 水を口から吐き出すのかと思ってたら、水塊を作り出して撃ち出す技だった。

 アレは魔法なのかな? 魔力使ってたし、

 先を越されちゃったな、正直羨ましい。

 ここでも圧倒的だな。

 ブラウが強すぎて、E級の魔物でも相手になってないぞ。

 

 そういえば、ブラウのあの巨体は、もう屋敷の中には入れられないな。

 どうしようかな?

 

 スキルを判定してから僅か1週間、俺もこんな事になるとは思ってなかった。

 もう俺が魔物を使役するって噂は立ってるだろうし、

 出来ると分かっているのに、我慢するのは結構なストレスだ。

 ・・・なるべく迷惑は掛けたくは無かったんだけど、これは不可抗力ってヤツだ。

 俺は自重を辞めるぞ!

 ここからは、気に入った魔物は復活させて行こう。

 まあ、それはダンジョンを出てからだが。今は、ブラウとリンカの二人だけで十分だ。


(旦那ー、こっちに剣が落ちてるっすよ)

(噂のドロップ品か!)


 俺が考え事をしている間に、ブラウが戦利品を見つけたようだ。

 ダンジョン特有の謎現象だが、この世界では誰からも疑問に思われない。

 神の産物だからね。

 蜥蜴人の使ってた剣かー。使わないけど、持って行こう。売れるのかな?

 

 にしてもここは、想像以上に広いな。

 魔物を狩りながら、入口から取り敢えずは真っ直ぐに進んでいるけど、出口が出てくる気配が全然ない。

 一応まだ入口の方向は分かるし・・・あ。

(ねえリンカ、もしかして上空まで行って、先が見える?)

(タブン…イケル)


 リンカが、高く浮遊して辺りを見回す。

 このまま進めば、遠くに建物が見えてくると言う。

 よしよし、ルートを知る事が出来れば安心だ。

 ここでは燐火がいれば、迷う事も無い。ちょっと散策してみよう。



 大きな池の中に、魚が見えている。

 日本で見た事のある、淡水魚より大きいのばかりだ。

 ここの魚は仮に斬っても霧散したりしない。ダンジョンの貴重な資源の一つという訳だ。

 ウチの食卓にも出てくるしね。

(ブラウ、狼圧(プレッシャー)使ってみてくれ、軽くな)

(了解っす!)


  "グオォーーーン!!!"


 ブラウの咆哮が、空気をビリビリと震わせる。

 咆哮に闘気を乗せて、周囲を威圧するスキルのようだ。

 辺りが騒然としているな、

 バシャバシャ、がさがさ、バサバサと周囲にいた魔物達が、一斉に逃げ出して行った。

 ・・・こんなに居たんか。

 狙いの魚群は気絶していて、かなりの数がプカプカと水面に姿を晒している。

 やばいな、数が多すぎて回収が大変そうだぞ。


「大丈夫か!! 何だ今のは!?」

「おい! 先に行くなよ、あぶねーぞ!!」


 こっちもやばいな、他の冒険者が来てしまった。

 今の咆哮が何かを、確認しに来たようだ。

 そこにいた俺とブラウを見て、ポカンとしているが。


「あ、大丈夫ですよ。今のは、こいつのスキルなので、

 思いの外強力な技だったみたいで、なんかすみません」

「ギルバート様だったんすか! いやですか」

「さっきのは従魔だったんですか? とんでもない魔物が出たかと」

「危険なら、逃げればいいんじゃないかな?」

「それは、そうなんですが、こいつが行くぞって言うもんで」

「お前も乗り気だったろーが」

「二人とも速いわよ!」

「うわー! デカい!!」


 更に人が増えた。

 先に来た2人に文句を言ったり、ブラウに驚いたりしている。

 収拾が付かなくなりそうだったので、俺は提案することにした。


「騒がしくしておいて言うのもなんですけど、俺と一緒にあの魚集めて貰えませんか?

 報酬は、均等に分けるという事でどうです?」

「え? いいんですかぁ! 絶対やります!」

「ギルバート様がそう言うなら・・・」


 この階層には、実力者が来ることは無いし、魚は下位冒険者の獲物、という共通認識がある事を知っている。

 ただ、魔物がうろつくダンジョンで、池の中に入るのは危険だからな。見張りを置いて釣るしかないし、池にも魔物はいるから安全ではない。

 今回は、ブラウのお陰で池の魔物は逃げ出してしまったし、当の獲物は気絶中だ。外から襲われない限り、安全に回収できる。

 1匹小銀貨2枚で売られているから、これだけ魚がいたら、いい臨時収入になる筈だ。

 

 ブラウ達に見張りを頼んで、冒険者4人と一緒に回収した。

 100匹近くはいたので、1人小銀貨20枚の稼ぎにはなるだろう。

 彼等は、一度村に引き返すようだ。

 最後にお礼を言い合って、別れる事にした。

 彼等は、まだ新米の冒険者らしい。

 俺よりは先輩だけど、いい人達だったから覚えておこう。

 俺の評判が良くなれば、マルセロン家の心証も良くなるからな、想定外な事だったけど、良かったかもしれない。

 俺も、袋に詰めて『小さな宝箱』に保管している。

 売らずに、屋敷で調理して貰おう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ