09話 ブラウ(魔狼)の進化
今日は、4日ぶりにダンジョンへ向かっている。
今回は通常の馬車移動だ。
ダリオもいつも俺に付いている訳にはいかないので、今日からは一人行動だ。母上がブラウに、しっかり監視しておくんですよ。と言っていたが、見てないフリをした。
いくら異世界だからって、馬車の移動中にトラブルなんて起きない。盗賊はおろか、魔物も出ない。
盗賊が絶対出ないとは言わないが、魔物が跋扈する世界で活動できる盗賊は少ないし、自然淘汰される事が多いと聞く。
じゃあ魔物はというと、ウチには結界があるのだ。
それも凄いのが。
領都の名前にもなっている、祖父アージェントの功績が形と成ったものらしい。
魔物が恐れる気を放っているとか何とかで、詳しくは知らないけど、ウチの結界は、結界の中でもグレードの高いもののようだ。
そんな優れた結界のお陰で、領都の周りには魔物が近づかない。絶対とは言えないが。
直接覆われていないミコー村も、それなりに恩恵に与っているという訳だ。
今度、結界について詳しく教わってみようかな。
ダンジョンの神殿も、数日空くだけで久々な気がするな。
今日も冒険者が多い。この人達って、どの階層を攻略しているんだろうか?
冒険者の知り合いなんてネビルさん達を少し知っているくらいで、他は知らないもんな。
考えた事無かったけど、俺ってどう思われんのかな?
ヤバい奴認定されてないよな?
貴族の子が魔物と戦ったり、ダンジョンに潜る事がおかしい訳ではない。俺が10歳の子供という事が問題だ。
しかも一人だ。ブラウもいるけど、今日はダリオがいないからな・・・。
1人で何しに来たんだって思われてそうだ。
・・・まあいっか、どうせ1人行動だし、遠巻きにしてくれた方がやりやすいしね。
ブラウには一応、従魔用の足環を付けてもらった。
首輪は嫌みたいだ。
さて、気を取り直して、先ずはもう一度、1階から行こうと思う。
使い切って無くなった、F級の魔石も欲しい。
今回は、ゴーストの燐火も居るからだいぶ楽だな。ブラウは魔石で強化されているから、E級並みか、それ以上の強さだ。
5階まで、2人に無双して貰おうかな。
(ブラウと燐火には5階まで任せる。道中強化もしていくから、よろしくな!)
(任せるっすよ旦那! ここは2度目っすから)
(アタシモ…ヤル)
やっぱり魔法はいいな。いつか使ってみたい。
道中、ブラウだけで十分だったな。敵が3体出てきた時のみ、燐火が魔法でアシストしていた。
5階層の扉の前で、道中準備していたF級魔石を2人に使う事にした。
これ、一個ずつ使った方がいいよな? 一気に使った事無いし。
取り敢えず、二十個用意したから様子見ながら使っていくか、
(ブラウ、リンカ、一個ずつ使って行くから、おかしいと思ったら直ぐに言ってくれ)
(はいっす)
(ワカッタ)
それはブラウに十個目の魔石を使った時だった。
(あ、コレきたっす!!)
(え? 何が来たんだ?)
(ちがうっす! しん・・・)
ブラウが何かを言おうとした瞬間、
キイイーーーーーーーーーン
うお!?? ブラウの体から強い光が放たれた!!
その光は青白く、ブラウより大きくなっていき、体を球状に包み込んだ。
これは、もしかしなくてもアレだな、進化が始まったんだろう。
30秒、1分ぐらいだろうか。
青白い色が綺麗だったが、徐々に光は収まっていき、ブラウの姿が現れ始めた。
・・・おお!? デカい。 進化したのか。
(大丈夫か、ブラウ?)
(うおお~~ん! やりましたよ旦那ぁ~、あっし遂に進化したっすよぉ~)
(遂にって、昔の記憶、あるのか?)
(ほんのりとっすかね~・・・だから、すんごく嬉しいんす)
(そっかぁ)
ホントに嬉しそうだな。
泣いてないのに、泣いてるように聞こえるぞ。
何か、俺も嬉しいじゃんか。
ブラウは二回りは大きくなった。青みがかった毛は更に青さが増して、フサフサ感が増している。このカッコよさで、あの話し方だもんな。
声も少し低くなってんのに・・・ でも愛嬌があっていいか。
(ブラウ、喜んでるとこ悪いけど、今のお前の状態、詳しく教えてくれ)
(はいっす)
ふんふん、成程ね。種族って自分で分かるもんなのね、
ブラウは魔狼から水恐狼になったらしい。
水の属性を持ってて、等級は分からない、と。
新しいスキルは『氷装』『水狼息』『狼圧』が生えたのか。三つもスキルが増えるとはな、どれも強そうだ。
マナが相当増大している。元のブラウが、子供に感じられるほどに。
やれる事は追々確認するとして、ブラウはF級魔石十個で進化した。他にも、魔物を食べた事もあったけど、魔石の効果が大きかったはずだ。ブラウの前世? と言っていいのか分からないけど、その時の経験も関係あるなら分からない。
燐火にも魔石を十個与えてみたが、進化はしなかった。元がE級の魔物だからだろうな。それでも力は増している。
俺は、ここでアレ? となったんだ。
俺は魔石を、二人よりも多く吸収しているけど、大丈夫なんだろうか? ここ数日で、F級魔石をかなり吸収しているのに。
んーー。・・・異常が無いってことは。大丈夫って事だよな!
5階の階層主は、E級のゴブリンとホブゴブリンの群れだったが、相手にならなかった。
俺達は、部屋の中央に出現した魔法陣に乗って、次の6階に転移した。
この前、ミコー村のダンジョンはここからが本番ですよと、ダリオが言っていた。その理由が、目の前に広がっていた。
「ほあーーー! すげぇ・・・ダンジョンの神秘ってやつか」
俺の目の前には大きな湿地、湿原ってやつかな? が広がっている。
草原の中には、大きな水溜りが幾つもあり、大きい植物が群生している。遠くまでは視界が届かず、確認できないけど、かなり広い層のようだ。
太陽も無いのに青空だし、端は無く、どこまでも続いていそうだ。実際には端まで行くと、急に霧に包まれて元に戻るという、不思議現象が起きる。冒険者の常識だな。
道っぽい所もあるけど、そこから外れると地面が柔らかい、足を取られると危険そうだ。
「湿原って初めて見たな~。綺麗なとこだな」
今俺がいる此処は、6階の出発地点な訳だけど、冒険者達が屯していた。湿原の方でも、戦闘中の人達がちらほら見えているし、ダンジョンで初めて同業者を見たぞ。
1階から5階までは、別の次元何だろうか?
神様ってやっぱり凄いな。俺も恩恵に与っているし、感謝しておこう。
いつもありがとうございます! これからもお世話になります迷宮神様!
神様に感謝していると、俺に気付いた冒険者達が、こっちを見ながらザワザワとし始めた。
いや、俺じゃないな。ブラウを見て驚いてたのか。
フッフッフ。ブラウは見てくれはかなりカッコいいからな。それにデカいから、見るなと言う方が無理がある。
(取り敢えず行こうか、足元は柔かったり、崩れたりするかもしれないから、気を付けるんだぞブラウ)
(大丈夫っす! ここはあっしと相性良さそうっすから)
水属性だからか? そんなもんかなと、先に進む。
ステータス
名前: ブラウ
種族: 水恐狼(元魔狼)
加護: なし
能力: 標準スキル『毒生成』『毒耐性』
固有スキル『氷装』『水狼息』『狼圧』
ブラウのステータスを簡単に載せときました。