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素直になる魔法薬を飲まされて

作者: 青葉めいこ

 婚約者である王太子と公爵令嬢であるわたくしとの定期的なお茶会で、それは起こった。


 特別な調合をしたというハーブティーを王太子手ずから振る舞われ、内心まずかったら嫌だなと思いつつ、顔はいつも通り、にこやかなままカップを優雅に持ち上げた。


 固唾を呑んで見守る王太子の前で、わたくしは、こくりとハーブティーを飲んでみせた。


 意外な事に、ハーブティーは、おいしかった。


「身分しか取り柄がない馬鹿だと思っていましたが、お茶を淹れる才能はあったのですね」


 無意識に本音が口から飛び出していた。


 わたくし自身戸惑っていたが、王太子も、いつものわたくしからは考えられない科白に戸惑っている様子だ。


「……君?」


「あら、余計な事を言うつもりなどなかったのに、どうしてかしら?」


 頬に手を当て考え込んでいるわたくしに、気を取り直した王太子が話しかけてきた。


「えっと、彼女をどう思う?」


「彼女? どなたですか?」


「最近、私にまとわりついているピンク色の髪の男爵令嬢の事だよ」


「ああ、あの方」


 婚約者にまとわりついている女性だろうと、どうでもいい。王太子を含めて他人に興味ないからだ。だから、「彼女」と言われて即、王太子に最近まとわりついている男爵令嬢だと気づかないのだ。


「感謝していますわ」


「感謝?」


「だって、彼女のお陰で、学園内で、あなたと過ごす無為な時間なくなりましたもの。だから、感謝していますわ」


 王太子の婚約者として「婚約者のいる殿方にまとわりつくべきではありません」と忠告すべきだったのだろうが、そんな事はしなかった。だって、面倒だったし、何より、彼女が王太子にまとわりついてくれるお陰で王太子と過ごさなくてよくなったのだ。わたくしにとっては、いい事づくめだった。


 だから、感謝しているが、どういう訳か、彼女は、わたくしと遭遇すると転ぶ上、わたくしに苛められていると周囲に訴えているのだ。訳が分からない。


 無論、周囲は彼女のそんな嘘を信じてはいない。わたくしの王太子への態度は、どう見ても義務的なものだと大部分が気づいている。わたくしが彼女を苛める理由などないのだ。何より、わたくしが苛めを実行したのなら、彼女は、もう学園にはいない。精神を病んで自殺か、よくてどこかで療養しているはずだからだ。


「…無為な時間?」


 自分と過ごすのが無為な時間だと言い切られて王太子はショックを受けているようだ。


「ええ。身分しか取り柄がない、わたくしよりも容姿も能力も劣る人間(あなた)といても得るものなど何もなくて時間の無駄でしょう?」


 普段なら、こんな事は言わない。思っていても相手が不快になるだろう事を口にしないだけの理性はある。


 だのに、先程から無意識に本音が口から出ていくのだ。


「先程のお茶、あれは魔法薬ですね。さしずめ本音を垂れ流す効果があるのかしら?」


 ハーブティー(魔法薬が溶け込んでいたのだろう)を飲んでからこうなったし、王太子が手ずからお茶を淹れたり、わたくしがハーブティーを飲む時、固唾を呑んで見守っていたのだ。そうとしか考えられない。


「違う。素直になる魔法薬だ。そのはずなんだ」


 狼狽する王太子は、わたくしに魔法薬を盛った事を認めた。


「ああ。では、合ってますわね。わたくし、素直な気持ちを垂れ流していますから」


「そんなはずない! 君は私を好きなはずだ!」


「いえ、大嫌いですわ」


 魔法薬の効果なのか、本音を垂れ流した事に対して「しまった」とは思わない。むしろ言いたくても言えなかった事を言えて気分爽快だ。魔法薬の効果が切れた後、困る事態になったとしても、その時はその時だ。今だけは、この衝動に任せる事にする。


「王太子だってだけで容姿も能力もわたくしより劣るくせに常に上から目線で、婚約だって本当は嫌で嫌で嫌で嫌で嫌で嫌で嫌で嫌で嫌で嫌で、たまらなかったのに王家とお父様の命令で婚約を結ばされて」


 思わず「嫌で」を十回も言ってしまった。自分で思っている以上に鬱憤が溜まっていたのだろう。


「だのに、『公爵家の権力を使ってまで私と婚約したかったんだな』なんて阿保でナルシストな勘違いをされた時は虫唾が走りましたわ」


 わたくしが発言をすればするほど、王太子の顔色が悪くなっていった。


 それはそうだろう。


 まさか、自分を愛していると思っていた婚約者(わたくし)から、こんな暴言を吐かれるとは思ってもいなかっただろうから。


「なぜ、わたくしに素直になる魔法薬などを飲ませたのですか?」


 ふと疑問に思って訊いた。


 わたくしが自分を好きだと思い込んでいたのなら、わざわざ素直になる魔法薬など飲ませる必要もなかっただろうに。


「いつも、にこにこしていても、必要以上に私と触れ合おうとしない君といちゃつきたかったんだ」


 にこにこしていたのは、王太子への嫌悪感を隠すためで、大嫌いだから必要以上に触れ合いたくなかったのだ。


 それにしても。


「婚約者といちゃつきたいから素直になる魔法薬を飲ませた? あなた、馬鹿ですか?」


 心底呆れた。


「誰しも触れられたくない事や表に出したくない本音があるのに。それに土足で踏み込むなど人としてどうなの? 王太子失格ですわね」


 魔法薬の効果がいつまでなのかは分からないが、本音だけしか言えなくなったわたくしも王太子妃失格だろう。権謀術数が渦巻く社交界は本音だけでは渡り合えないのだから。


 がっくりと項垂れる王太子に挨拶する事なく、わたくしは、この場を後にした。





 翌日、国王から呼び出され、父である公爵と共に王宮に向かった。


 昨日の今日だ。呼び出された理由は王太子がわたくしに素直になる魔法薬を飲ませた事についてだろう。


「いいか? お前は黙っていろ。私が何とかするから」


 国王の私室、その応接間のソファに、わたくしと並んで座っている公爵の顔色は悪い。


 それは、そうだろう。昨日、本音しか話せなくなったわたくしは、父である公爵にも暴言を吐きまくったのだ。


 無能な王太子と無理矢理婚約させられた恨みつらみだけでなく、公爵をどう思っているのかも()()()()()()を垂れ流してしまった。


 公爵領の領地経営は今は亡き母やわたくしや家令や代官に任せている無能だと。


 貴族の当主としては無能だが、亡き妻を今も愛し周囲がどれだけ勧めても再婚せず、娘であるわたくしの事も愛しているから女性としての最高位となる王妃になれば幸せになれると安易に考え、わたくしの意思を無視して王太子との婚約を了承した。


 大半の貴族が妻や娘を政略の道具としか考えていないのに比べれば、夫としても父としても人としてもマシなほうだろう。


 だが、()()()()、わたくしには、どうでもいい。


 血が繋がっていようと、どれだけ人格が素晴らしかろうと、わたくしには関係ない。


 わたくしにとって重要なのは能力だけなのだから。


「黙っていろと言われても。国王に直接話しかけられたら無視するわけにはいかないでしょう? そんな事も分からないのですか? ああ、分からないのですね。お父様、無能でお馬鹿さんですものね」


「お、お前は! まだそんな暴言を!」


「仕方ありませんわ。馬鹿な王太子がわたくしに()()()()()魔法薬などを飲ませたから、こうなったのですもの」


 皮肉や嫌味などではない。わたくしの素直な気持ちが出てしまっているのだ。


 皮肉や嫌味でも娘から言われれば応えるだろうが、素直な気持ちだと言い切られればショックも倍増だろう。実父だろうと無能な人間を慮る気持ちなど、わたくしには微塵もないけれど。





 国王と共に王太子と第二王子も応接間に入室してきた。


 王太子の顔色もすぐれない。昨日のわたくしの「素直な気持ち」を知ったショックから、まだ立ち直っていないのだろう。


 ただでさえ無能で王太子の資質を危ぶまれているのに、あの程度でショックを受ける精神の弱さでは、お飾りでも将来の国王は無理だろう。


「王太子から聞いた。公爵令嬢、そなた、王太子から素直になる魔法薬とやらを飲まされたようだな」


 一人掛けのソファに座った国王が単刀直入に訊いてきた。その顔は、いささか疲れているように見える。そうだろう。愚息が馬鹿な事を仕出かしたのだから。


「その通りですわ。だから、わたくし、昨日から素直な気持ちしか言えなくなりましたの」


「公式行事など各国の貴人などが集まる場所で素直な気持ち、本音しか話せなくなるとは、困りましたね。国王陛下」


 テーブルを挟んだソファに王太子と共に座った第二王子が、どこか面白がるように言ってきた。彼は王太子の異母弟であり、わたくしの従弟だ。


 王太子の母親である前王妃は隣国の王女で彼を産んで亡くなり、その喪が明けると国王は第二王子と王女(兄妹)の母親、わたくしの叔母(公爵の妹)を王妃にしたのだ。


「……他人事のように言うが、そもそも、お前が作った魔法薬のせいだろう。何とかならないのか?」


 国王の言葉で、なぜ第二王子までこの場にいるのか理解した。彼が作った魔法薬が原因だからだ。


 第二王子は魔法薬作りに精通している。国一番の作り手と言ってもいいほどだ。それで、王太子が彼に素直になる魔法薬を強請ったのだろう。


「こういう精神に作用するような魔法薬には解毒剤みたいなものはなくて効果が切れるのを待つしかないのです。そして、その効果が切れるのは人それぞれです」


「効果が早く切れる魔法薬を作れないのか?」


「魔法薬は普通の薬とは違います。絶大な効果がある分、先に飲んだ魔法薬の効果が消えても体や精神に変調を来す者もいます。だから、こういう精神に作用する魔法薬の場合は自然に効果が切れるのを待つしかないのです」


 国王の言葉に第二王子は困ったように言った。


 第二王子は言外に「自然に魔法薬の効果が切れないと体や精神に変調を来す可能性もあるから王太子妃としての政務が務まらないかもしれない」と言っているのだ。


「……本当に余計な事をしてくれたな。馬鹿なお前のために、有能な公爵令嬢を婚約者にしたというのに」


「ち、父上?」


 父親に、はっきりと「馬鹿」だと言い切られて王太子は戸惑っているようだ。


 この国の王侯貴族ならば誰もが知っている。国王が愛しているのは、現王妃と彼女との間に生まれた息子と娘だけだ。政略結婚の相手である前王妃とその息子には関心すらないのだ。


「素直な気持ち、本音しか話せなくなったわたくしは、王太子妃に相応しくありません。なので、婚約解消をお願いいたしますわ」


「駄目だ!」


 今まで黙っていた公爵が声を上げた。


「陛下! いずれは魔法薬の効果が切れるなら、このままでいいでしょう! 陛下だって、娘が王太子妃に相応しいと認めてくださっているのなら」


「わたくしが嫌ですわ」


「お前、何言って」


 困惑する公爵に、わたくしは微笑んだ。


「王太子が嫌いなのもありますが、何より、王太子妃や王妃()()では、わたくしは満足しないんです」


 わたくしのこの発言に、第二王子を除く、この場にいる全員が絶句したようだ。


「お父様は、王国の女性の最高位である王妃になれば娘が幸せになれるとお考えのようですが、わたくしの幸せは、そこにはありません。だって、()()()()()()()()、それ以上の地位が相応しいと思っていますから」


 上を目指しているのではない。()()()()()()()相応しい地位が王太子妃や王妃以上だと思っているだけだ。


「……なんて傲慢で尊大な娘だ」


「周囲が気づかなかっただけですわ。国王陛下」


 思いっきり呆れた視線をわたくしに送る国王に、わたくしは淡々と言葉を返した。


 対処が面倒なので敵を作らないように謙虚に振る舞っているが、見る人が見れば「最高なわたくしに成り代われる人間などいない」と本気で思っているわたくしの傲慢さや尊大さに気づくはずなのだ。


 実際、第二王子は気づいているから、今更、わたくしの傲慢で尊大な発言に驚きはしないのだ。


「王太子殿下も、()()()()と結婚したいとは、もう思わないでしょう?」


 ここに来てから何も言葉を発さない王太子に、わたくしは声をかけた。


 わたくしと目を合わさず、ただ青ざめている王太子に構わず言葉をつづけた。


「ここまで素直な気持ちを、本音を垂れ流したんです。魔法薬の効果が切れたとしても、今更取り繕う気は微塵もありませんわよ」


 王太子は、のろのろと顔を上げた。


「……最初から、私の事など何とも思っていなかったんだな」


「ええ。あなたも王太子妃の地位も、()()()()()()()()相応しくありませんもの」


 わたくしは()()()()()()を告げた。


「あなたに最近まとわりつくピンク髪の男爵令嬢こそ、あなたに相応しいのでは? 彼女なら、あなたに相応しい女を演じてくれるでしょうよ」


「……演じてか。本気で私を好きになってくれる女性はいないと言いたげだな」


 否定してほしいだろう王太子に、わたくしは()()、本音で返した。


「どっかの物好きな女性なら、もしかしたら、王太子の地位を抜きにしても好きになってくれるかもしれませんね」


「……分かっているさ。男爵令嬢が私にまとわりついてきたのは、私が王太子だからで私個人を好きだからではないのは」


「それくらいは感じ取れるのですね」


 自分を大嫌いなわたくしの気持ちに気づかなかったのだ。てっきり表面だけで人を判断しているのかと思っていたのに。


「そんな彼女だから君に嫉妬してほしくて利用した。『婚約者のいる異性にまとわりつくべきではない』と諫めもせず距離も置かなかった」


「わたくしには、どうでもいい事ですわ」


 王太子の告白をばっさり切り捨てると、わたくしは国王に向き直った。


「あなたの愚息が仕出かした事ですので、今までの不敬な発言は、お咎めなしと円満な婚約解消をお願いしますわ」


 無理矢理婚約継続させるなら逃げるだけだ。


 まあ、最初からそのつもりだった。王太子が素直になる魔法薬を飲ませるなどという愚行をしなかったとしてもだ。


 ()()()()()()()、王太子も王太子妃の地位も相応しくないからだ。





 こんな女を王太子妃にしくないと思ったのか、国王は王太子とわたくしの婚約解消に同意してくれた。


 後の話し合いは公爵と国王でという事で、王太子と第二王子とわたくしは応接室を出た。


「あなたに話がある」


 わたくしは第二王子に連れられて中庭に来た。


「もう魔法薬の効果切れてるだろう?」


 確信をもって言う第二王子に、わたくしは微笑んだ。


「なぜ、そう思うのですか?」


「俺が作った魔法薬だからだ。あれは一日しか効果がもたないんだよ」


「あらあら、魔法薬の効果が切れていると分かっているのに、どうして、あの場でばらさなかったのですか?」


 わたくしは遠回しだが、王太子が飲ませた魔法薬の効果が切れている事を認めた。


「魔法薬の()()()()()()()()()()、今更もう王太子に対して取り繕う気はない」その言葉通り、あの場では本音を口にしたのだ。


「大半の精神に作用する魔法薬の効果が切れるのが人それぞれなのは本当の事だ。ただ王太子に渡した俺が作った素直になる魔法薬の効果が一日しかもたない事を黙っていただけで」


 第二王子は「嘘は言っていない」と言外に言うと、わたくしの疑問に答えた。


「君が魔法薬なしで本音を垂れ流しているとなれば不敬罪だ何だとややこしい事態になっただろうからな。俺の魔法薬のせいで、そうなるのは後味が悪い」


「何にしろ、感謝していますわ。あなたの魔法薬のお陰で円満に婚約解消できそうですから」


「愚鈍な王太子が王太子でいられるのは有能なあなたが婚約者だったからだ。あなたとの婚約が解消になった以上、もう王にはなれないだろう」


「あら、では、次の国王は、あなたになるのですか?」


 わたくしは冗談めかして言った。そうならないと分かっているからだ。


 彼は王位を望んでいない。日がな一日、大好きな魔法薬を作っていたいのだ。


 王位を望んでいるのは――。


「分かっているだろう? 王位を望んでいるのは妹だ」


 そう、王位を望んでいるのは彼の妹である王女、わたくしのもう一人のいとこだ。


 妹の望みを叶えるために、彼は王太子に素直になる魔法薬を渡したのだ。王太子に頼まれたからではない。


 わたくしが本音を垂れ流せば、国王も、こんな女を王太子妃や王妃にさせられないと思うのは確実だ。そして、わたくしとの婚約がなくなれば王太子は国王にはなれない。


「妹は、あなたと違って女王で満足らしい」


「ええ。彼女であれば、充分、歴史に名を残す女王になるでしょうね」


 あの無能な王太子が国王になるよりは余程いい。


「わたくしは、歴史に名を残す()()になりますわ」


 それこそが、()()()()()()()()相応しい。





 王太子は有能な婚約者であるわたくしと婚約解消になった以上、自分では王太子は、そして次期国王は務まらないと王太子の地位を返上後、自分にまとわりついてきたあのピンク髪の男爵令嬢の家に婿入りした。高位貴族の令嬢は軒並み婚約者がいるし、彼女が王太子にまとわりついていたのは学園では知らぬ者はいなかったので、彼女のほうも王太子以外で夫になってくれる令息が見つからなかったのだ。


 王太子妃に、そして王妃になりたかった男爵令嬢は王太子の婿入りを拒絶したが、貴族の結婚は家同士の契約なので、当然、彼女の拒絶は無視された。


 彼は王太子としての器ではなかったが男爵としては、そこそこ有能だったようで、領民に慕われ後年、妻との関係も良好となり、それなりに幸せな人生を歩んだようだ。


 第二王子は、わたくしの実家の公爵家を継いだ。元々、一人娘のわたくしが王家に嫁ぐので従弟の第二王子が公爵家を継ぐ事になっていたのだ。


 彼は有能で仕事が生き甲斐の伯爵令嬢と結婚し、彼女に領地経営を丸投げ、自分は魔法薬作りに没頭している。お互い好きな事をしているので夫婦仲は良好のようだ。


 王女は学園を卒業後、国王として可もなく不可もない父王を退位させると女王になった。半ば無理矢理女王となった彼女だが、父王よりも優秀さを示し、わたくしの予想通り、歴史に名を残す女王となった。


 そして、わたくしは貴族学園を卒業後、帝国に向かった。


 帝国では数年前から男女平等を謳い、女性でも文官試験を受けられるようになったのだ。文官試験で首席を取ったわたくしは数年後、帝国初の女性宰相となった。


 さらには、皇帝に見初められ最初は妾妃、皇后となり、最終的には女帝となった。


 それも帝国一国の女帝ではない。


 世界を統一した史上唯一の女帝となった。


 後世の歴史家は、野心で、わたくしがその地位まで上り詰めたと語っているが、そうではない。


 わたくしは、ただ、このわたくしに相応しい所まで行っただけ。


 野心などない。


 わたくしは、なるべくして世界を統一した史上唯一の女帝になったのだ。




 






 




















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