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第5章の3

高橋直哉は、野口慎一に内密にこの国の状況を調べていた。

野口は常に高橋に不必要な詮索はするなと言っている。

しかし、スラム街の実情にどうしても納得がいかない。失業率のデータを見ても、全く合わないのだ。


高橋は、あるデータに目を付ける。衛星画像だ。5年前と今の画像を見比べると、明らかにスラム街らしき場所が増えている。いろんな都市で調べてみてもそうだった。

「何かがおかしい」そう考えて、さらに詳細なデータを集め、国の内情を解明しようと努力する。


やがて、高橋は、国の統計データが改ざんされていることを突き止める。失業率や経済成長率、貧困率など、様々なデータが捏造されていたのだ。


高橋は野口にこの疑問を投げかける。

「高齢化や経済の失速が一因だと考えられるが...」最初は慎重に言葉を選んでいたが、次第に野口も考えを改める。


「野口さん、でもそれだけでは説明がつかない部分が多すぎます。本当のことを教えてください。」高橋は真剣な表情で野口に問いかける。


野口は沈黙の後、ついに決意する。彼は、さらに深く調べるべきだと判断する。「分かった。だが、これは非常にデリケートな話だ。誰にも漏らさないと約束するんだぞ。」


高橋はすぐに頷く。「もちろんです。誰にも話しません。」


野口は深くため息をついて言う。「北星市ミサイル事故を調べてみろ。それがすべての始まりだ。」それが野口の言葉だった。


北星市ミサイル事故。8年前、自衛隊のミサイルが誤射によって市街地に落下し、運悪く休日でにぎわう百貨店を直撃した。数百名の死傷者を出す悲劇となった。それが公式の情報だったが、調べるうちに不自然な情報が次々と出てきた。


事故から1か月後、突然捜査が終了になっていたことだけでなく、事故の詳細については一切明かされていなかった。また、事故現場周辺の住民からは、その日に異常な空気が漂っていたとの証言が寄せられていた。


更に詳しく資料を読む。北星市ミサイル事故の原因は、どうやらハッキングによるものだったようだ。自衛隊がハッキングによって自国の市街地に撃たれた。

確かに絶対に公開できない内容だ。


高橋は疑問を持つ。もしハッキングだったとして、調査が中止になったということは、その原因は特定されていないままなのではないか。


だとすれば、今日また同じようにハッキングを受けてミサイルを撃ち込まれる可能性があるのではないか。


「犯行文」高橋の目に留まった。

犯行文などという文書は、この資料以外には見つからない。

誤記なのか、そうでなければ何らかの理由で消されたということだ。


彼には心当たりがある。DTS法(Domestic Tracking System法)だ。

DTS法は、スパイ防止を目的としてすべての人にタグの所持を求める法律である。当時、突然法案化された。

警察学校に通っていた高橋は、この法律について僚友と度々議論していた。

その法律の施行と、北星市ミサイル事故の時期が重なっていることから、これらは何らかの関連性があるのではないかと考える。


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