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第3章の5

純礼はありさや潤のようにT-RFIDタグを持たない人の存在に疑問を持っていた。

おそらくあのスラム街の住人のほとんどはタグを持っていないだろう。

そんなにたくさんのT-RFIDタグを持たない人がいるだろうか?

また、これまで教育を受けていた中では、あれほどたくさんの人がスラム街で生活をしているとは聞いていない。


情報が統制されているのではないか?

誰かが、意図的に日本の状況を隠している。

理由はわからないけれど。


彼女の直観は正しいと告げている。

そうだとすれば、どこにほころびがあるか?


「統計データ・・・」

統計データだけは、ほころびを隠せない。

嘘のデータで塗り固めたとしても、必ずどこかに矛盾が生まれる。


純礼は妹の彩音に調査を依頼することに決めた。

高校生だが、IT技術に詳しく、自作のHPを作成したり、ハッキングもやったことがあるようだ。

彩音は純礼からの依頼を快諾し、統計データを調べ始めた。


彩音は純礼に調査結果を伝えるため、彼女の部屋に向かった。部屋に入ると、純礼はデスクに向かって何かを書いていた。


「お姉ちゃん、調査の結果が出たよ。」彩音は興奮気味に言った。


純礼は顔を上げ、彩音の言葉に耳を傾けた。「本当に?何がわかったの?」


「まず、公式の人口統計データに不自然な点があることがわかった。高齢化率が予想よりも大きく下がっていたり、就業者の給料が不自然に増えているんだ。」彩音は息を切らしながら説明した。


純礼は驚いた表情で聞いていた。「それだけじゃなくて、インターネット上の非公開フォーラムやSNSでT-RFIDタグを持たない人たちのコミュニティを見つけたんだ。彼らが情報交換や支援を行っている場所で、T-RFIDタグを持たない人たちの実態や困難な生活状況が語られていたよ。」


「それはすごい発見ね。でも、どうやってそんな情報にたどり着いたの?」純礼は興味津々で尋ねた。


「実はね、匿名のハッカーたちが作成したデータベースにアクセスして、非公式な人口統計情報を入手したんだ。そこには、T-RFIDタグを持たない人たちがどのような状況にあるか、どの地域に集中しているかなどの詳細な情報が記録されていたよ。」


純礼は目を丸くして彩音を見つめた。「それじゃあ、公式発表されている人口数よりもはるかに多くの人々が日本で生活しているってこと?」


「そうなんだ。その存在が統計データに影響を与えている可能性が高いみたい。」彩音は緊張感を持って言った。


純礼は深刻な表情でうなずいた。「これは大変なことね。誰かが意図的にこれらの人たちの存在を隠しているのかもしれない。


彩音は、純礼が悩んでいるのを見て提案した。「あの人に聞けばいいじゃない?」貴仁のことだ。


純礼は顔をしかめて「そんなことできない」と答えた。

彼女には貴仁に対して、明かせない秘密がある。

罪といってもいいほど重いものだ。


「私はいつか裁かれる。彼にこれ以上頼ることはできない」と純礼は心の中でつぶやいた。


彩音は純礼の表情を見て、彼女が心に抱えている何か重いものを感じ取る。しかし、その秘密を知らないのに、どう助けてあげればいいだろう。


「お姉ちゃん、一緒に何とかしようよ。私も手伝うから。」彩音は純礼を励ましたが、純礼はただ苦笑して彩音に頷いた。


純礼は心の中でいつも思っている。

自分の秘密が明かされたとき、貴仁は彼女を許してくれるだろうか?

罪はいつか晴れるのだろうか?


純礼はその答えを見つけることができない。

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