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苦手な方はご注意ください。

貨幣(お金)とは何か?

作者: 青山

 MMTとか、消費税減税の前に、そもそもお金とは何なのか? 税金とは何なのかを自分なりに解釈したいと思う。なお、あまり頭が良くないので間違っているかもしれない。

 それと、税金に特化してお金を語ります。


 人類の最初の売買契約が物々交換であったことに疑いの余地はない。

 漁師さんなら、海や川で釣れた魚を肉・酒・米と交換していたことでしょう。

 

 人口が増えて、文明が発展して国が出来ると王様は国の維持のために官僚や兵士にお給金を払わねばなりません。当然ですよね。ただで働いてはもらえません。

 貨幣がない場合は当然、物品で給金を払うことになります。

 王様自身が魚を釣ったり牛や羊を育ててそれを渡すわけにもいきませんので、支配している地域の領民から集めることになります。税金の始まりです。

 漁師さんからは魚を、牛飼いや羊飼いからは肉を、酒屋からはお酒、職人からは工芸品。こんな感じでバラバラに、それぞれが出せるものを集めることになります。そしてそれを兵士や官僚に分配する。


 この方法、効率がいいと思いますか?

 国の規模が小さければこれでも回るかもしれません。ですが規模が大きくなればなるほど手間が増えます。

 しかも、魚や肉は腐ってしまいます。大きさや質によっては価値も変わるでしょう。果ては食べたりすれば無くなってしまいます。

 さらに、人によってはニーズが違います。俺は魚は嫌いだ、肉がいい。俺だって肉がいい。塩がもっと欲しい。そっちの魚の方が大きいぞ。お前の肉の方が上質だ。

 このように、物品で税を集めて配分するのは文明が大きくなればなるほど不便になってきます。再分配の公平感が感じられなかった場合は兵士や官僚が反乱を起こすことだって考えられます。


 そこで現れるのが貨幣です。

 それまで物々交換で直に物のやり取りをやっていたものを、貨幣を間に挟んでやり取りさせるようにすれば、こうした問題を一挙に解決できます。


「陛下。A村から魚100匹。B村から羊50頭。C村からはお酒100人分が納められました!」


 これと


「陛下。A村からは金100、B村から金50、C村からは金100が納められました。」


 どちらが再配分しやすいと思いますか?

 そう、貨幣は国が税金を回収する手段として極めて都合が良かったのです。

 MMTの説明では、これを国家が国民に貸した債権と位置付けているようです。少なくとも私はそう解釈しました。


 さらに、大きな副産物がありました。

 自分たちが発行した、もしくは定めた貨幣によって物のやり取り(経済活動)が行われている。これはすなわち、この地域は自分達が統治しているという事を国内外に知らしめる効果がありました。

 日本でいえば円が使われています。日本列島とその周辺の島々では円によって経済活動が行われている。すなわち、これらの地域は日本国が統治している事を国内外にアピール、証明できます。


 古今東西、偽札は重罪でした。最高で死刑が適用された国はいくつもあります。

 なぜ偽札は重罪だったのでしょうか? 単に偽のお金で買い物をした。相手を騙した。なんてレベルではありません。

 それは、既存の統治権力に対する重大な挑戦であったからではないでしょうか?

 自分たちが発行したものではないお金によって経済活動がなされた。すなわち、その場所を安定的に統治できていないことが白日の下にさらされてしまう。だからこそ、偽札は重罪だったのです。

 想像してみてください。

 あなたが王様で、臣下が「税金を民から徴収してきました。」と言ってきたので覗いてみたら、偽札ばっかりだったら? 「なんだこれは!?」になりませんか?

 そう、偽札は税金として認められないのです! 税金を回収したことにならない。だからこそ偽札は重罪だったのです。


 考えてみればおかしな話です。

 あなたがおもちゃの紙幣をもってお店に行き、これで商品と交換してくれと言って店主が了承したらそれで売買契約は成立しているはずです。

 お互いが納得の上で売買したのですから合法なはずです。ですが、おもちゃの紙幣では税金を払えません。

 税金を回収しに来た役人に、店主があなたから受け取ったおもちゃの紙幣を渡したら、役人は店主をその場でしょっぴくでしょう。

 理由は簡単。それは、国家が発行したものではないからです。

 国家が発行した、もしくは定めた貨幣で売買契約を行わなかった。それすなわち、国家への反逆行為、絶対王政であれば王権への反乱を意味したからこそ偽札はどの国でも認められないのです。


 お金は税金を集める手段ツールであり、その地を支配している証拠にもなる。

 これを、極めて分かりやすい形で証明してくれる国が現在進行形であります。

 ロシアです。

 ウクライナに侵攻しているロシアは、占領地にてルーブルの使用を住民に強制しています。ちなみにウクライナの通貨はフリヴニャといいます。

 なぜこんなことをする必要があるのでしょうか?

 その地を支配するには武力と法だけでも十分なはずです。どうして自国通貨であるルーブルを使わせたがるのでしょうか?

 税金を回収できるからです。そして、その地の経済活動がロシアの通貨によって行われている。つまり、ここはもうロシアの統治下にあると内外に知らしめる。

 だから、ルーブルを使わせたいのです。


 お金がその地を支配するツール。実は例外もあります。

 日本でいえば、平安時代に使われていた貨幣は宋銭といって、当時中国を支配していた宋という国が作ったお金でした。

 今年の大河で源氏に滅ぼされた平氏は、この宋銭を輸入してそれを財源として莫大な富を築きました。つまり、お金そのものを輸入していたんですね。

 輸入したお金を一括で自分たちの物にしてしまい財源とし、さらにそれを市場に流通させてそこから税金をとったなら、そりゃ栄えますよね。なにせ輸入分と税収分の2種類の財源があるわけですから。

 最も、これが朝廷や他の武士団から反感を買ってしまい、ついには滅ぼされてしまうわけですが。


 宋銭を使っていたからと言って、当時の日本が宋の支配下にあったわけではありませんが、少なくとも「自国で貨幣すら作れないのか。」と格下に見られたことは間違いないでしょう。

 なにせ、向こうは宋銭の輸出を止めるだけで日本を干上がらせることが出来ます。

 宋銭は日本以外の国にも輸出されており、当時の宋の強大さと影響力の大きさを物語っています。


 お金が税金を回収するために生まれたなら、税収を財源として様々な政策をすることは正しいでしょうか?

 あなたの国で、今年から貨幣を発行して物々交換経済から脱却を目指したとします。

 初年度に100万枚の貨幣を発行しました。次年度にも100万枚発行して、累計200万枚。3年目にも100万枚発行して累計は300万枚となりました。

 この300万枚。税金で全部回収できると思いますか?

 出来るわけないですよね。そんなことしたら、市民の手元からお金がなくなって生活できない! となって反乱を起こされることは火を見るよりも明らかです。

 絶対に、発行額よりも少ない金額しか回収できないし、そうでなくてはならないのです。

 でないと国民が飢えます。


 財務省が赤字だ赤字だと騒いでいるものは何か。

 貨幣を累計300万枚発行しました。そのうちの200万を税金で回収しました。

 国家の運営に250万必要です。残りの50万を追加で発行した貨幣(国債)で補いました。

 この50万を赤字だと言っています。

 で? それの何か問題でもあるのでしょうか?


 赤字なんだから問題だろ! そう思う方もいらっしゃるでしょう。

 ですが、よく考えてみてください。

 この貨幣は自分たちが発行したものです。別によその国から借りてきたわけではありません。

 上記の例でいえば、累計350万枚貨幣を発行した。ただこれだけです。

 自分たちだけが発行可能なお金を必要な分追加で発行した。本当に、ただこれだけの話なのです。

 だからこそ、MMTでは国債をいくら発行しても、それは単なる貨幣の発行履歴に過ぎないと主張しているのです。

 そもそも、自国通貨建ての国債のデフォルトが考えられないことは財務省自身が認めています。

 https://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm


 税金は確実に人々からお金を巻き上げます。市場で出回るお金を回収する作業です。

 市中からお金が減ったらどうなるか。みんな貧乏になってしまいますね。なにせ、出回っているお金自体が減っているのですから。

 そして、私たち国民に貨幣の鋳造権はありません。国家だけが貨幣の鋳造権を持っています。

 上記で述べたように、発行額分を全部税金で回収するなど不可能です。

 そんな事をしたら私たちの手元からお金が無くなってしまいます。


 上記の説明はあまりにも単純すぎるという指摘もあるでしょう。ごもっともです。

 なにせ、外的要因(貿易)も銀行の存在も無視していますし、単純すぎて現代の経済に当てはまらないと思われる方もいるでしょう。

 ですが、初期はこの形だったはずです。


 貨幣を発行しすぎて貨幣の価値が下がってインフレになり、経済が崩壊した例は確かにあります。

 第一次世界大戦後のドイツやジンバブエがいい例です。

 ですが、税収を財源だと勘違いして足りない税収を補おうと税率を上げた結果、民衆の不満が溜まって反乱を起こされて滅亡した国の方がはるかに多いと断言できます。


 西暦618年から907年の300年間。中国大陸を支配した唐という国がありました。

 この国では塩を国家の専売としていました。

 人が生きていくのに塩は不可欠ですので、税収が減るとこの塩に対する税率はどんどん上げられました。

 生活が苦しくなった民衆は安く売ってくれる密売業者に流れていきます。

 国が管理する正規の塩は売れなくなり、ますます税収が少なくなります。少なくなった税収を補おうとさらに税率を上げる悪循環に陥ってついには反乱が発生、滅亡してしまいます。

 このように、税率を上げていく国家に未来などないのです。


 日本はどうでしょうか?

 日本では異次元の金融緩和といって、超低金利で資金を市場に流し続けています。にもかかわらず、90年代から全く賃金も物価も上がらなくなりました。

 なぜでしょうか?


 問題なのは貨幣の発行額ではなく、その流れです。

 お金の流れ、金流きんりゅうとでもいいましょうか。これが上手く国全体に流れない。

 これが今の日本の問題だと私は考えます。


 人の血流に例えてみましょう。

 いくら心臓が一生懸命動こうが外から輸血しようが、血管のあちこちが破れて穴が開いていて、そこから出ていくなら意味ありませんよね。

 血流が届かずに、酸素と栄養を受け取れない細胞は死ぬだけです。


 金流においてこの穴とは何か。

 各種税金です。

 特に消費税やガソリン税など、広く薄い税金こそが穴の原因です。

 せっかく市場に流しても、都度あらゆる面でとられていく。これは、脆くなって穴だらけの血管に血を流しているようなものです。

 いくらお金を市場に流しても、端から政府に吸われていくだけで私たちの手元に残りません。


 では、本当に貨幣はいくらでも発行していいのでしょうか? 本当に国債の累計がどれほど膨れ上がっても問題ないのでしょうか?

 そんな事はありません。

 血は少なすぎたら大変ですが、多すぎても問題を起こします。多血症といって、赤血球が多くなりすぎて血液がドロドロになることで脳梗塞、心筋梗塞などの合併症が起こる場合があります。


 貨幣も市場に溢れすぎるとインフレーションを引き起こしてしまいます。

 ここで働くのが税金です。溢れかえったお金を税金として回収し、バランスを保つ。

 これこそが現代における税金の役割です。MMTがインフレ率に気をつけながら国債を発行せよと主張しているのはこのためです。

 不景気時に、みんなにお金がない時に減税しないなんてありえないんです。


 上記で説明を終えたいと思います。

 長々とした文章をお読みいただきありがとうございました。


 最後に、上記で述べたことは間違っていると思う方もいらっしゃるでしょう。

 しかし、この30年間日本が全く経済成長せず、賃金も物価も上がらかった事は事実なのです。

 30年間拡大再生産の真逆である縮小非生産を繰り返したのです。どう考えても何かがおかしいことは間違いないのです。

 それでもまだ、今までのやり方を踏襲しますか? 以上です。


※追記


低・中所得国に8.8兆円インフラ投資 岸田首相表明 2022年6月27日

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA263SX0W2A620C2000000/


途上国に3000億円支援 岸田首相「栄養サミット」で表明 2021年12月07日

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021120701136&g=pol


岸田首相、途上国支援「最大50億ドル」 コロナ・サミットで説明 2022年5月13日

https://www.asahi.com/articles/ASQ5D7VXDQ5DUTFK01Z.html


岸田首相、就任8カ月で海外に“バラマキ”7兆円超! さらなる海外支援表明にSNSは「まず国内へ」と悲痛な声 2022年5月25日

https://news.yahoo.co.jp/articles/bc286aa575a4a921864d3c2224477def48b6e505


これらのお金はどこから出てくるのでしょうね?

こうした支援のお金の時は財源の話が出ないのはなぜでしょうね?


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― 新着の感想 ―
[一言] 黒字ってそれすなわち国が国民のために使う金よりも多く国民から金を毟り取ってるわけで民主主義国家においては凄まじくやばい国家ですからね。 経済成長に関してはインフレを避けてるのが大きいでしょう…
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