第二幕 都・羅城門《らじょうもん》近く(夜)
村人1、村人2が走って登場する。
村人1 「ウワァ! た、助けてくれぇ!」
村人2 「妖が出たぞ! みんな逃げ……うわっ!」
村人2が転ぶ。村人1が手を貸して村人2を起こそうとする。
妖1が登場する。
村人1 「は、早く立てって!」
村人2 「すまん……。腰が、抜けて……」
妖1 「はははは! 逃げろ! 惑え! この平安の都は我ら妖怪が支配してくれる!」
村人1 「ひいぃ!」
村人2 「誰か……」
晴明・声「待て!」
晴明が登場する。
妖1 「誰だお前? お前も殺されたいのか?」
晴明 「無益な殺生はしたくない。このまま大人しく帰ってくれないか?」
妖1 「戯言を……。死ね!」
晴明 「仕方がない」
晴明が懐から札を取り出す。
晴明 「悪霊退散。急々如律令!」
妖1 「ぐあぁ!? お前、陰陽師かぁ!」
妖1がその場に倒れる。
晴明 「……悪いな」
村人1 「助かった……のか?」
村人2 「あ……ありがとうございます! ありがとうございます!」
晴明 「気をつけろ。羅城門近くには妖が多い。知らないわけではないだろう」
村人1 「申し訳ありません! 俺は信じてなかったんですが、こいつは妖は存在すると言ってうるさいもので真相を確かめに安易な気持ちで来たんです」
村人2 「だから言っただろ! 妖は本当に出るって!」
晴明 「はぁ……。金輪際、興味本位でこういう場所には近付くな。次も助けてやれるとは限らん」
村人1 「はい。すみませんでした。ありがとうございます」
村人2 「俺も、すみませんでした」
晴明 「わかったのならさっさと自分の家に戻れ」
村人2 「本当に、ありがとうございました」
村人1 「ほら、もう帰るぞ」
村人1、村人2が走って捌ける。
晴明 「やれやれ。もっと帝から民に言い聞かせていただかなければ……」
晴明がゆっくりした足取りで捌ける。