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第十八幕 晴明の屋敷・一室(深夜)

 晴明と道満に酒を注ぐ式神。



晴明  「これが最後の酒だ。中宮・安子様の冥福を祈る」

道満  「手向けに酒とは、怒られないか?」


晴明  「祈る気持ちが大事なのだ」


式神  「乾杯!」



 式神、徳利(とっくり)で酒を飲む。



道満  「おいおいおいおい。それ、最後の酒だろ? いいのか?」


晴明  「いいんじゃないか? ほら、お前も飲め」



 晴明、月に向かって盃を差し上げる。

 道満も同様にする。



道満  「……乾杯」


雪女・声「優雅に月見酒かい? 風流だねえ」


晴明  「この声、雪女か! 式神!」


式神  「探知開始します! ……んー、そこです!」



 式神が庭木を指差す。



道満  「また邪魔しにきたのか! 炎舞・カグツチ!」


雪女・声「同じ術は二度も喰らわないよ!」


式神  「こっちに来るよ!」


晴明  「明魔顕現(めいまけんげん)!」



 雪女が現れる。



雪女  「くっ……」


晴明  「道満!」


道満  「わかってる! 弐式・爆炎!」


雪女  「甘い!」



 雪女、吹雪で対抗するが押される。



雪女  「ちっ、雪と炎じゃ相性が……ああ!」



 雪女、倒れる。



晴明  「式神!」


式神  「あい!」



 式神、雪女を縛り付ける。



晴明  「雪女、お前も懲りないな」


雪女  「閻魔様のご命令ですもの」


道満  「一体どんな命令だ?」


雪女  「安倍晴明の勧誘よ」


道満  「は? 妖怪が、陰陽師を? 閻魔ってやつは何を考えてるんだよ」


晴明  「皮肉なものだな」


道満  「どういう意味だよ」


晴明  「いや、それより雪女の処遇をどうするかだな」


道満  「どうするかってお前なあ、俺らは陰陽師。妖を滅するのが仕事。さっきの俺の話し聞いてたか? 道満氏、可哀想とか思わないわけ?」


晴明  「すまない。……そうだな。雪女、悪いがお前には死んでもらう」


雪女  「っふ。あんた、いい男に育ったじゃない。なんだか少し、悔しいわ」



 晴明、札を取り出して雪女にかざす。



雪女  「最後に忠告よ。閻魔様は諦めが悪いからせいぜい気をつけるんだよ」


晴明  「……悪霊退散、急々如律令!」



 雪女、退場する。



道満  「随分と親しげだったな」


晴明  「昔、ちょっとあってな」


道満  「へえ。まあ、どうでもいいけどな。あーあ、せっかくの気分が台無しだ。おい、飲み直すぞ。式神、酒を()げ!」


式神  「僕はあなたの式神じゃないよ」


道満  「あーうるせえ。主人が主人なら式神も式神だな。いちいち細かい。ああ、お前あれだ。ヘタレっていうか女々しいんだ」


晴明  「うるさい。しかも酒はもうないぞ」

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