第十六幕 晴明の屋敷・一室(深夜)
晴明と道満が並んで月を見ながら酒を飲んでいる。
道満 「まさか、お前とこうして並んで月見酒をするとは思わなかったな」
晴明 「確かにな。お前は出会った時から私を毛嫌いしていた」
道満 「それはきちんと理由があるんだよ。お前、妖を滅したふりして逃がしていただろ?」
晴明 「逃した、か。厳密には違うが、まあそういう時期もあったとだけ言っておこう」
道満 「俺はそれが許せなかった。妖は忌むべき存在。憎むべき、滅ぼすべき相手だ。俺の母を殺した妖だけは、何をおいても許しちゃならない」
晴明 「そうだったのか……」
道満 「それ以上に、母を守れなかった自分が許せないんだ。中宮と同じで、俺は母に生かされた。弔いのために陰陽師として妖を滅してきたが、母を殺した妖が未だに見つからない。もしかしたら、お前にすでに消されているのかもな」
道満が勢いよく酒を煽る。
晴明 「母とは強いものだな」
道満 「お前にも母親はいるだろ? 噂どおり、狐から生まれたっていうオチじゃなければな」
晴明 「……どうだろうな。記憶にないのだ」
道満 「そうか……」
晴明、勢いよく酒を煽る。