?ランク冒険者クエイク
魔核を破壊されたハイオーガは、そのまま倒れ伏し、ピクリとも動かなくなった。
後ろにいたクエイクに向き直ると、
「悪かったな。アンド。パーティの奴らについて来ないよう説得するのに手間取ってたいら、ずいぶん遠くなっちまった。あいつらには、危険すぎたんでな」
そう言うクエイクも随分息を切らしている。多分、全力で走ってきたんだろう。
「問題ない。正直、助かった」
そう言って、口に残っていた血反吐を地面に吐き出す。
冗談抜きで、ハイオーガとの戦いは、危なかった。最後の攻防、クエイクがいなければどうなっていたかは分からない。
始めに、さっきの戦闘で起きた重要なことをクエイクにかいつまんで説明した。
「………ハイオーガを裏で操る魔物使いか、厄介だな。やはりあいつらを置いてきて良かった」
「仲間を置いてきたってことは、あいつらは『訳あり』じゃないのか?」
「ああ、俺だけだ。あいつらは、比較的普通のBランク冒険者パーティだよ。リーダーぶっちゃいるが、実は俺はな、今はZランクなんだ」
息が詰まった。
Zランク。C~SSSランクまである中で、それは冒険者を取り仕切る冒険者ギルドから、地位を取り上げられた者のランク。除名よりはマシだが、そのランクから這い上がった実例はない。
「理由を聞いてもいいか?」
そう聞くと、クエイクは、少しおどける様に、
「昔、偉いクランの奴らと言い合いしてな。その後、冒険者ギルドから降格言い渡されたんだ。多分、奴らが文句つけたんだろうな。そん時ぁ、俺もAランクでそこそこイケイケだったんだが、俺の言い分なんてさっぱりだった。まあ、相手が悪かったって諦めてるよ。冒険者続けられたお陰で、今のパーティの奴らにも会えたんだしな」
「クラン?」
思わず、動揺が漏れる。
クランとは、冒険者ギルドに認められ、パーティの枠組みからさらに大きく作られた集団、組織のことである。規模にもよるが、冒険者ギルドから優先して大量のクエストを受けられる。また、クランでしか受けられないような大規模なクエストも存在する。
だが、そこは重要じゃない。
声を抑えて、聞く。
「どこの、クラン、なんだ?」
「信じてもらえないかもしれねえが、No.1トップクラン『常緑の支援』ってとこだ」
その言葉に、動揺を超えて殺気が溢れる。
また、お前らか。まだ足りないのか。まだ罪を重ねているのか。俺の幸せだけでなく、どれだけの人を不幸にしているのか。その名が、その名を、その名で、その名も、その尊厳を———ッッ
頭の中がこんがらがる。
———数年経った今でも、この思いは消化出来ないようだ。
「俺の無念を思って…って訳じゃなさそうだな。あんたもなんか………」
「………いや、すまない。忘れてくれ」
過去がちょっぴり顔を出しました。