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本領発揮

 ハイオーガは右手を出すと、


「——————ォオッ」


 声にならない音、人間には理解できない声を発した。


 すると、奴の掌に魔力が集まる。


「は?」


 その意味を、俺は一瞬、理解できなかった。


「——————くッ」


 俺は咄嗟に、左に飛び退いた。


 さっきまで俺が居た位置を、人間大の火球が通り過ぎた。


 避けなければ、消し炭になっていただろう。


 奴———、魔法を使えるのか!


 オーガは、魔力はあれど魔法は使えなかった。魔力を鎧のように纏っていて、攻撃が通りづらいのが難点だった。ハイオーガも同じだと、油断していた。というか使えるはずがない。


 魔法の行使には、理性と知性が必要である。基本魔法の火球とはいえ、大抵のモンスターは使えず、ハイオーガもそのはずだ。


 魔法を使えるモンスターは、ドラゴンなどの賢い例外のみなのだ。


 一体何故…、いや、今まで起きた異変を全て繋げれば———、


 「———、ッ!まずッ…」


 想定外の魔法に気を取られた一瞬のうちに、ハイオーガが接近する。


 さっきよりも倍近く速く動———、


 目にもとまらぬ速さで、ハイオーガは、俺の脇腹を蹴りつけた。まるで、さっきの意趣返しとでも言わんばかりに。


 不意に打たれたその衝撃に対し、それでも辛うじて発動した強化は、本来の効果には遠く及ばず、


「がッふッッ…」


 身体が横に折れ曲がり、弾かれる。体が飛ばされきる前に地面に両手をつき、超強化した四肢を使って無理やりスピードを殺し、その場に留まる。


 何とか死に体にはならず、戦闘態勢は保っている。だが、隙を見せたとはいえ、ハイオーガの蹴り一発で戦況を引っ繰り返されてしまった。


 図らずもお互い似たような攻撃を受けた。


 だが、ハイオーガは、多少のダメージはあるが、出血すらしていない。対して俺は、腹部に甚大なダメージ。幸い、骨は折れていないようだが、脇腹に重い痛みが残る。


 彼我の差を認めるしかない。


これぞ、フィジカルと魔力に恵まれたSランクモンスターの特権。俺が超強化を成功させても、ハイオーガの身体能力は超えられなかった。真正面から奴に勝てなかったのは、正直、悔しい。


 だが、収穫はあった。さっき奴が放った火球で、1つの仮説がほぼ確定的となった。


 不可解なモンスターの集団行動、本来居ないはずのモンスターの存在、そして、魔法が使えるハイオーガ。

この3つの条件を満たす説が。


 これは、モンスター、ハイオーガとの戦いではなかった。


 眼前に迫ろうとするハイオーガに先んじて、言葉を紡ぐ。


「お前、魔物使いだな?」


 俺は、ハイオーガの目を見据え、その奥に居るであろう術者に問いかけた。


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