Aランク
「俺の無念を思って…って訳じゃなさそうだな。あんたもなんか………」
「………いや、すまない。忘れてくれ」
数秒間、無言の沈黙が続く。俺の憤りのせいでこうなってしまった手前、このままの雰囲気で帰るのは気まずすぎる。
「それにしても、ハイオーガの体を切り裂くなんて、凄いな。一体何をしたんだ?」
露骨に関係ない話題を振る俺に、クエイクは笑って、
「ハイオーガをあそこまで追い込んで、魔核まで貫いた化け物に言われたくはねえな。まあ、さっきのが、俺のスキルだ。『衝撃波』って言ってな?言うなら物騒な風魔法ってとこだな。そいつを最大火力にして、あいつの腕に飛ばしたんだよ」
クエイクは話しながら、俺に背を向けて、森の茂みの方に歩き出す。
「あんたは、ハイオーガの戦利品剥ぎ取りな。俺は、敵が来ないよう見張ってるぜー。まあ、さっきみたいなとんでもない強さの気配はなさそうだし、俺だけでも問題ないだろ、あ」
そして、思い出したようにクエイクは俺の方に振り向き、
「そういや、聞きたいことがあったんだ。アンド。あんた、ソロのBランク冒険者なんだろ?」
「ああ」
「なんでパーティ組まねえんだ?Aランクに上がらねえってのは、面倒くさいの分かるけどよ。Aランク冒険者パーティなら簡単だろ?Bランク冒険者でもなれるし。Aランクのクエストも受けられるようになるぞ?」
Aランク冒険者、とAランク冒険者パーティでは、意味が大きく違う。
Aランク冒険者は、一人でAランクモンスターを倒しうる戦闘職、または、その戦いをサポート出来る支援職である。そしてそのランクアップをするためには、王都まで行って登録しければならない。それは、Aランク冒険者以上になるために課せられた義務である。Aランク冒険者以上は、貴重な戦力として冒険者ギルドから管理される、という意味合いが込められている。
Aランク冒険者パーティは、パーティ単位でAランクモンスターを倒せば認められる。特別な場所で登録しなければいけないということはなく、Bランククエストでの実績を積めば、Aランクモンスターの討伐への挑戦が許可される。討伐出来たらAランク冒険者パーティとして認められ、Aランクのクエストを受けられるようになる。その性質上、Aランク冒険者パーティでも、Bランク冒険者や、Cランク冒険者は、割と存在する。
「…それは———、」
その問いに答えようとした瞬間、俺は見た。振り返ってこっちに向いているクエイク。その後ろに、
———2体目のハイオーガが近づいているのを。
「クエイ———」
ハイオーガが横薙ぎに腕を振るった。
無防備に受けたクエイクが、吹き飛ぶ。まるで紙のように。
地面にぶつかり、跳ね、跳ね、そして、地面から盛り出た土にぶつかり、止まった。
止まれたクエイクは、呻きもせず、動かなかった。
「クエイク——————!!!」
返事する者のいない叫びが、静かな森に木霊した。




