Act.2
na
(お願い! 生き返って!)
傷が塞がっていき、やがて白い靄が喉元に吸い込まれていく。
先輩の手首を持ち、脈をとってみると正常だ。
試しに鼓動を聴こうと、恥ずかしい気持ちをしまいこんで胸元に耳を当てる。すると、しっかり
『トクントクン』と響いている。心臓の音。
うん。今回も成功。これは愛の賜物ではないのではないのかと思ってしまう。
「んん……」
胸に耳を当てていた自分の行動を改めると、先輩の様子を見守った。
「……? 雪?」
「何死んでるんですか? 情けないです、全く先輩は何をしてるんですか! 大体私のマナをこんなことに使わせないでくださいよ」
体を起こそうとしている先輩を手伝いながらお小言を少々。そしたら悪びれもせず、
「ふふ、今日もちょ~っとちょっかいかけようと思ってたら、殺られちゃった。雪は心配した?」
なんていうから、当たり前でしょうと言いたい言葉を飲むと。
「はぁ~、バカにつける薬はないみたいですね。先輩? 本当に……バカですね」
こんな事言いたい訳じゃないのにっ! もう私がバカよ。
「心配してくれないの? もう……でも雪、生き返らせてくれてありがとう」
「いえいえ」
はぁ……私の心配を気づいてほしい。先輩の死体を見るたび胸が締め付けられうぐらい切ないというより、絶望を感じる。
いつまで立ってもこの気持ちは劣化することないだろう。
そう願ってる。
「先輩、今日も保健室行きますよ」
そういうと水筒を取り出し一口含む。嚥下すると喉がヒリヒリするほど熱い。
「…………雪」
私に鬼が降りた。人格が変わるわけではないと願いたい。
これは最強にして、最悪の秘術。鬼神化。
先輩はまだ動けないのだから私が抱き上げて丁寧に運ぶしかない。
とっても恥ずかしいけど……。
このドリンクは宵染家の秘術なのだ。誰にも代わることのできない鬼との契約。
代々、我が家は鬼と契約してきた。
妹にはさせたくなかったから私が担い受けた。
誰にもできない禁術は危険なのだ。
動けない先輩を抱き上げると慎重に保健室まで歩いた。
毎度毎度の事のようです。