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三人の修行僧

 むかし、唐の国の片田舎に、小さな寺があった。そこでは、ひとりの老僧と三人の若い修行僧が暮らしていた。

 ある日、老僧が修行僧たちを呼び、こう言った。

「おまえたちは毎日、よく修行に励んでいるが、ここではそれにも限界がある。そこで、天竺に行きなさい。天竺ならば、今よりももっと深い教えを受けることができるだろう」

「はい、わかりました。私たちは天竺に向かいます」

 三人の修行僧はその日のうちに旅支度をすませ、翌朝には天竺に向けて出発した。

 とは言っても、道中、三人が連れ立っていたわけではない。各人各様、異なった道を選んで天竺へ向かったのだ。なぜなら、三人の性格がバラバラだったからである。

 一人目の修行僧は、どちらかと言うと面倒なことを避けたがるタイプだった。そのため、平坦な道ばかりを選んで天竺を目指した。険しい山に遭遇すれば登るのは避け、迂回して先を目指した。河川に出れば、川幅が狭い上流まで行き、大回りして川を渡った。そのため、時間ばかりがかかりなかなか道は進まず、結局、天竺に到達することはできなかった。彼は最期にこう言ったという。

「私の人生、運がなかったな……」

 二人目の修行僧は、とことん自分に厳しいタイプだった。そのため、常に険しい道を選んで天竺を目指した。抜け道があるのに、わざわざ岩山をよじ登ったり、灼熱の砂漠をこえたりした。だが、若いうちは無茶もきくが、歳を重ねるごとに気力、体力ともに奪われていく。そして、とうとう途中で力尽きてしまった。彼は最期にこう言ったという。

「私の力及ばず、無念だ……」

 三人目の修行僧は、前の二人のちょうど中間の性格をしていた。悪く言えば気まぐれ、よく言えば柔軟、といったところだろうか。彼はおのれの気の向くままに道を進めた。「うまい饅頭が食いたいなあ」と思ったら、街道を通って近くの町へ寄り道をした。「あの山の頂上からの眺めはさぞかし素晴らしいだろうなあ」と思ったら、どんなに険しくても山道を選んだ。また、道中で一緒になった旅仲間が病に臥せった時は、薬草を採るために猛獣の出る危険な森に分け入ったこともあった。

 そんな彼も、結局は天竺にはたどり着けなかった。彼は最期にこう言ったという。

「天竺には着けなかったが、なにも天竺に行かなければ修行ができないというわけでもあるまい。私は私なりの道を歩んできた。それを修行と呼べるかどうかは分からないが、今はそれだけで満足だ」

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