064 閑話 その錬金術師は痕を残す③
※直接的な人死にがあります。
苦手な方は飛ばしてお読み下さい。
次で終わりだと書いたのに一話に纏めきれなかった為に、二話に分割。それくらい長いです。
この数日という間、凍てつく寒さに見舞われている城内。
そんな中で、地下牢に入れておいた暗殺者達の氷像が見つかったのは、最早、誰もが記憶に新しい事だろう。
だがしかし――その時点で、誰か気付くべきだったのだ。
地下に転がっていた氷のオブジェは、まだ始まりでしかなかったのだと――。
「きゃあああああああ!」
悲鳴と、軽い物音が突如として城内へと響き渡る。
冷え切った城は、誰も彼もが足早に通り過ぎようとする。それ程には寒々しく――とても、初夏の暑さ等感じ取れない有様だった。
そんな中で響いた悲鳴に、駆けつけた者達が見たのは、凍り付いて絶命している一つの遺体だった。
「ああ、何て事だ――。」
その遺体は、まるで生きたままにじっくりと時間をかけて凍らされたかのようにして、血の気を失い、チアノーゼの症状が見えている頭部を苦悶の表情で歪めて固まっている。
対する身体の方はといえば、こちらは今にも動き出しそうな体勢のままで、正拳突きの構えそのままに真っ白に凍り付いていた。
被害者は、王の客人を誘拐したとして投獄され、証拠不十分だからと釈放されたばかりの騎士その人だ。
しかし、何時かはこうなるのではないかと――投獄されていた頃から誰もが噂していて、そうして実際に起こってしまった事態である。
見つけた者達が憐憫や悲哀の感情を浮かべるよりも、なるべくしてなったと思ったのはある意味当然だろうか。
何せ、この異常な状態が城で生まれたのは、件の客人が姿を消してからである。
その客人は魔術師。しかも、氷属性の魔法を得意とする存在である。これだけでも関連付けても何らおかしくは無い。
そんな相手に暗殺を企てたであろう実行犯が、頭部以外を凍らされて捨て置かれる。
――これは、報復以外の何ものでも無いと、誰もが思う事だろう。
「二人一組で城中を隈なく探せ!まだ近くに居るかもしれん!間違っても攻撃したりはするな!」
「「はっ!」」
一部の者は既に仕事の為に城内に入ってしまっている。
しかし、まだ来ていない者も多いのだ。城内の人数が少ない内に、犯人の絞り込みの為にも、現時点で誰が居るのかを把握しておくのは重要だった。
犯人の目星は薄々出来てはいても、それはあくまで予想の範囲。証拠も無ければ現行犯でも無い。この為に手荒な真似はご法度だった。
それを理解しながら、犯人確保に向けて迅速に行動へと移り、奔走していく兵士達。
だが、彼らの調査は空振りに終わる。
まず最初に彼の遺体を見つけたのは侍女達の集団で、王女を食堂へと連れて行くところだったと言う。
その際に異様な姿で佇む騎士に、既に死んでいると気付いた一人が悲鳴を上げて、連鎖的にパニックを起こした。
勿論、その悲鳴で兵士達が駆けつけてきて、周囲に怪しい人物が居ないかと捜索が行われている。
だが、誰も不審な者の姿は見なかったし、犯人らしき者への発見へも至らなかった。勿論、行方不明となっている件の客人の安否さえもが未だに不明だ。
騎士が殺されたと思われる犯行時間は、殺害された騎士が登城した早朝から、王女が朝食を摂りに移動していた僅かな間になる。
それは、ほんの十分程という短い時間だったが、目撃証言は何一つ出ていない。
この為に、一体誰による犯行なのか、様々な憶測が飛び交ったものの――結局は数日が経過した今を持ってして分かってはいなかった。
しかし、ここ数日の城内の様子から合わせ見ても、不気味な出来事として噂ばかりを駆け巡らせていくのに十分な事である。
「――全く、とんでもない事になったな。」
そんな状況を憂うようにして、ホットワインを傾ける一人の男性。
その顔に浮かぶのは、焦燥、だろうか。そして、隠しようもない目の下の隈が、彼が憔悴している事を明確に表していた。
疲れ切ったようにソファーに身を沈めながらも、視線だけがキョロキョロと周囲に向いていて、どうにも落ち着きが無い。
それは、自身がなした事へか――隠しきれない程の恐怖を抱いているようにも見えるものだ。
余裕が無いのは見るからに明らかで、身に付けた紫のローブに霜が降り、徐々に端から白くなっていっている事にさえ気付いてはいない。
「早く何とかして下さいまし。」
そんな男に対して突き放すように要求を告げたのは、一際豪華なドレスに身を包んだ女性である。
室内であろうと冷えきった環境である為か、上からファーの付いたコートを纏い、まるで真冬の雪原へ放り込まれたかのようにして、白い息を吐き出している。
黄金の髪はきつく巻かれていて、吊り目がちな青の瞳が忌々しげに細められていた。
何せ、暖炉に火を焼べても尚寒いのだ。
ここは、まるで氷室よりも寒い。まさに凍結しきった一室だった。
「私もあの子も、ここに住んでいるのですから、早いところどうにかしてもらわないと困りますわ。」
この現象は、実は第一王妃や王女の周りでばかり、顕著に起こっているものである。
それとは反対に、第ニ王妃と王子の周囲はまるで常春ように暖かかく、誰もが意図を正確に汲み取ってしまう程だった。
即ち、何者かの怒りを買ったという、明確な殺意がこの冷気であるのだと。
だが、その事は王妃にとっては大変腹立たしく――更には我慢ならないとばかりに、表情に露わにしてまで父親である公爵を睨めつける。
普段から余り仲が良いとは言えない二人は、今まで以上に冷え切ったきつい関係になっていた。
「多分、ただの炙り出しだ。その内、捕まるだろう。」
そんな王妃である娘に対して、公爵自身は慰めにもならない言葉を安易に口にする。
一貫して挙動不審なままに口にしたその言葉は、完全に真逆の効果を齎すだけだろう。
実際、王妃はカチンときた様子で口調を荒げて更に怒りを露わにして見せた。
「その内では困ります!大体、これは父上の落ち度ですのよ!?」
彼女は娘である王女に直に聞き取りを行っていた。その過程で、父親である現公爵による入知恵が発覚しているのだ。
ただ、間が悪いというか何というか――その際に、国王も同席してしまった為に、かなり窮地に立たされている状態にある。
それもこれも、元を正せば公爵が全ての元凶である。孫娘である王女を利用して、子供相手ならば警戒心も薄れるだろうとばかりに、王女としての立場も利用して安易に使ったのだから当然だ。
「私は何も知らんぞ。あの子が何をしたのかもな。」
それにも関わらず、あくまで自分は関係無いと否定し続ける父親の往生際の悪さに、王妃の眦がキリキリとつり上がっていく。
他者に責任を押し付け、自身はのうのうと過ごす。甘い汁ばかり吸って肥え太るこの公爵は、例え王妃にとっての実の父親であろうとも、許しがたい存在であった。
「まぁ、良くもそんな事が言えますわね!?父上が誑かしたというのに!」
「知らんものは知らん!私を勝手に巻き込むな!」
言い争いをする二人だが、冷え切った冷気はそんな二人をすぐにクールダウンさせていく。
何せ、寒いのだ。
喋ろうとすればする程に凍てついた空気を吸い込まざるを得ず、それが体中の熱を内側から奪い去る。
この為に、ヒートアップしそうに見えてもすぐに沈静化するのは、最早ここ数日での二人の流れだった。
「やっていられませんわっ。」
「それはこちらの台詞だっ。」
言い争いからさっさと手を引いた二人に、しかしまともな会話等続くはずも無い。
彼らが退室して行き、残されたのは冷え切った一室と、その場で寒さに震える侍女だけ――。
それも、白髪の背の高い侍女が一人だけだ。
「――やってられないのはこっちの方なんだがなぁ。」
退出した者達にはその呟きは知られず、やがて誰も居なくなった室内で、その声は響く事も無くただ消えていった。
◇
「何よ!何よ!何よ!」
子供らしく駄々を捏ねて、更には全力で枕をベッドへと叩きつけているのは、一人の幼女だ。
その髪をいつもは左右で結んでリボンで飾っている彼女は、この時ばかりは下ろして、絶賛、憤怒の中にあった。
「私は悪く無い!悪く無いったら無いわ!」
憤る彼女の室内では、隅に控えたままで動かない白髪の侍女の姿がある。
ここ数日、寒すぎる環境に耐えかねて辞職を願い出る者や体調を崩す者が後を絶たず、人の入れ替わりが激しい為に、新人でありながらも身元が確かだった彼女が王女の側付きになったのだ。
もっとも、我儘で身勝手な事で知られる王女の付き人は今までもしょっちゅう変わっていたし、有る意味平常運転だったが。
「何で私が怒られるのよ!?お父様もお父様だわ!あんなゴミ、城に入れるなんてどうかしてるのよ!お祖父様も最低だわ!」
好き勝手に文句を宣う彼女だが、幸いにもそれを咎めるような者はこの場には居合わせていない。
思う存分に罵詈雑言まで並べ立てて、枕を破損させて中の羽毛を飛び散らかせ、ベッドの上を滅茶苦茶にしていく。
そうして、疲れ果てたのか、突然電池が切れたようにして眠りに就いてしまった。
まるで全力で怒りを表したかのような室内の惨状。それにそっと息を吐いたのは、これまで微動だにしていなかった白髪の侍女である。
「――やれやれ。」
ここに至り、ようやく壁際で佇んでいただけだった状態から、物置と化していた侍女が動き始める。
王女を布団の中へと押し込めると、新しい枕の手配をし、散らばった羽毛を集めて片付けていく。
引き倒された椅子を立て直して、割れたティーカップの破片を慎重に集めて床を掃くと、今度は零されて冷え固まっているお茶をこそぎ落とした。
うるさいからと閉め切られていた窓を少しの間だけ開いて換気して、最後までほとんど音も立てずに室内を整え終わる。
ここ数日ずっとお冠なお姫様の彼女は、片端から色々な物を壊してまわって手がつけられない。そのせいで、掃除が何時も以上に大変だ。
グチャグチャに散らかっていた室内を整える方としては、最早堪ったものでは無い事だろう。
「噂に違わぬ暴れっぷりですね。」
だからか、眠る王女に向けて、皮肉げに言葉が呟かれる。
侍女にあるまじき言葉だったが、幸いにも眠りに落ちている王女へは届かない。
今は未だ、横暴な王女様のままに、彼女は惰眠を貪るばかりだった。
◇
白い髪を纏め直して、息をそっと吐き出したのは一人の人間だ。
細身のその身体は女物の侍女服に包まれており、女にしては少しばかり高い背丈が、周囲から僅かに浮いている。
しかし、何よりも浮いているのは、その美貌であろう。薄く化粧している時ですら、人目を引いてしまう程には視線を釘付けにしてしまう。
だが、当人はそんなものは興味無いとばかりに職務に忠実で、浮ついた話一つも無く、気付けば王女の側付きにまでなっていた。
何故ならば、王の推薦があったからだ。
女の割りには腕が立ち、いざという時には武力を持ってして相手を制する事が出来るという、現状に適した人材。
それは、この異常な極寒の城内で、殺人鬼が何時姿を現すかも分からない状況下からしてみれば、王女の身を守るのにも十分な説得力を持たせた。
元々、王女の癇癪で度々侍女が変わっていたのだ。今更、王の推薦で変わったくらいで、誰かが咎めるはずもない。そのまま、白髪の侍女の役目は決定した。
そこからは怒涛とも言える快進撃である
模範的な淑女としての振る舞いと、どんな仕事も率先して手がける事によって、着々と侍女としての地位を築いていったのだ。
まさに期待の新人だろう。
何せ、以前から敬遠されていた我儘姫の側仕えを嫌な顔一つせず、愚痴も零さず、勤め上げているのだから。
特に、王女の周囲はとにかく寒いと専らの評判である。夏とは思えぬ冷え込みに、多くの者が体調を崩しがちで、その中にあって体調管理まで出来ている状況は褒められこそすれ貶される事は無い。
僅か数日で得た高評価。
だがしかし、そんな彼女は初め、疑いを持たれた。
それは何故か。
「――この者が男だと?ならば、女同士で確認してみれば良かろう。」
件の客人と容姿がとても似ていたからである。
性別や髪の色はともかくとして、珍しい紫の瞳。それに加えて、背丈までもがそっくりそのままだった。
しかし、王自ら口にした通りに、この侍女は『彼女』である。
スレンダーな体型は胸の膨らみは無いものの、女性としての曲線を描いて腰に括れがあった。小さな下着では大人の男性器を隠せるはずも無く、そこには膨らみも何も無かったのだ。
この為に、疑いはあっさりと晴れていた。誰もが、口々に謝罪の言葉を投げかけ、裸に剥いた事へ、今では小さな罪悪感を抱く者すら居る。
何せ、美しい顔とは裏腹に、その胴体へは大きな火傷の跡があったから。
女性としての価値を著しく損ねるその傷跡は、最初、嫌悪とも取れる感情が向けられた。
憐憫に、優越感。同情、恐怖、忌避感――。
様々なものだったが、一貫してそれらを無視する姿勢に、誰もが口を挟む事も出来無い。
そうして向けられた全ての感情から、ただ一つの評価が生まれた。
傷物の麗人。
それが、今の『彼女』への二つ目の評価である。
(ごっはーん。ごっはーん。)
だがしかし、そんな評価もなんのその。
白髪の侍女である『彼女』は、呑気に夕食に想いを馳せて、しずしずと食堂へと向かって行くだけだった。
◇
「さて――今回呼んだのは、ようやくこの氷が溶ける事となるからだ。」
早朝。集められて一同に介すは、国王派と呼べる者達。
人数は少ないものの、ある意味少数精鋭と呼べる面々だ。
「おお、やっとですか。」
にわかに騒がしくなった彼らは、一様に安堵と、同時に疑問の表情を浮かべて口を開く。
「この寒さ、いやはや長い事でしたなぁ。」
「しかし、どうやって溶かすのです?火で炙っても溶ける様子は無かったはずですが――。」
「まぁ、待て。そう急くな。」
そんな面々を片手で遮ってその場を取り仕切ったのは、この国の王だ。
彼の一言によって、この会議へは新たな者が加わる事となる。
「それに当たって、まずは知らせる事がある。入れ。」
それは、全ての始まりであり起点となったであろう存在だった。
「――失礼します。」
「そなたは……。」
入ってきたのは、王が推薦し、城内で働いていた白髪の侍女である。過去の詮索はご法度として知られる、傷物として一部に有名な曰く付きだ。
しかしながらも、仕事面においては非常に優秀であり、こちらの方が今では有名だろう。城で働いている期間はたったの一ヶ月だったが、それでも侍女としての地位は既に着実なものだ。
上の覚えも目出度くて、将来有望とされている侍女。それが、この侍女への評価である。
「実は、こやつは今回私が放った駒でな、主に諜報活動を命じてあった。」
「なんと!?」
王の言葉に、居合わせた者達が目を剥く。
「このように綺麗な女性がですか?てっきり、愛人候補かと思っていたのですが。」
「それはない。とりあえず、全員書類へ目を通せ。」
「「ははっ――。」」
「そのご報告結果はこちらに既に纏めてあります。皆様、御一読をお願いいたします。」
集められた情報が記された資料が配られて、一つ一つが確認されていく。
近くには、証拠の品となる物品も山積みだ。書類の類だけでなく、変色してドス黒い色となった手紙や、ボロボロの細工品等もある。
それらの確認作業を行う人々の合間を縫うようにして、忙しなく白髪の侍女が動き回り、お茶を配って王の斜め後ろへと控えた。
しばし、確認の為の紙を捲る音と、証拠の品との間を行き来する衣擦れや足音とだけが響く。
「――成る程、どこの貴族家の者かと思っておりましたが、そういった訓練を受けた者だったのですな。」
「我が陣営に加わる者であればどのような者でも歓迎だ。ようこそ、国王派へ。」
「勿体無きお言葉です。」
白髪の侍女を見つめて溜息を漏らす者もいるが、それは仕事ぶりへの感嘆の吐息ではない。その立ち居姿に目を奪われているだけだ。
侍女は誰が見ても、女性だと思うだろう。凛として背筋を伸ばして動く姿は麗しく、そして美しいが、男性的な部分は何処にも見受けられない。
強いてあげるならば、女性にしては背が高い事くらいだろうか。
しかし、スレンダーな体型は中性的な魅力に溢れており、顔立ちの偏差値の高さからむしろ人目を惹いていて、身に付けているものが女物なのもあって特に男性の視線を集めやすい。
一部の者等、本人も知らぬままに視線で追ってしまっている程だ。度々、周囲から注意されて元に戻るという有様である。
「さて、この情報と証拠を元に動こうと思う。反対意見のある者はいるか?」
そんな中で響いた王の言葉。
それにしばし、沈黙が降り、
「――現状、居ないようですな。」
王弟がそう口を開いて、居合わせた面々が首を縦に振って肯定した。
情報を集め終えてきた白髪の侍女。間者であるその者より齎されたもの。
それは、詰めに入るべきだとの判断が十分に下せる内容であり、一部の者など揃って額を突き合わせて話をし始めてさえいた。
「このまま、計画通りに事を進めるのが良ろしかろう。」
「どうせならば、更なるお力添えを頂けると、更に良いでしょうな。」
次の段階を既に話始めていた一部に「抜かりはないと」王の言葉が重ねられる。
「既に協力は取り付けてあるとも。」
「おお、では?」
「うむ、最後の詰めまで任せてある。」
「それは、誠に良き人材が得られたものですな。」
「ああ。」
向けられる視線は、全て白髪の侍女姿の間者へとだ。
王の計らいもあって、防音効果が城内一高いこの場所で、居合わせた面々は詰めの段取りへと進んでいった。
そこにあるのは、静かな熱狂と、確かな安堵だろう。
何せ、ここまで来るのに、一ヶ月。
その間に、凍り付いていて寒い環境にあった城では、様々な事が起きてしまっている。
客人の行方不明事件に、それを暗殺しようとした者達の怪死事件、騎士の殺害事件に、素行の悪い事で知られていた一部貴族達の変死事件。
城内で起こったそれらは、一部にはとても都合が悪く、そして一部にとっては非常に都合が良い展開である。
何せ、被害に遭った者達は軒並み素行が悪かったのだ。排除されて喜ぶ者は多く、逆に駒として送り込んでいた者達にとっては頭が痛い事である。
後者は職権乱用して不正や不祥事を誤魔化してきた連中であり、被害に遭った者とも何らかの繋がりを持つ者達。
中には既に証拠を奪われた上で凍死したり、手足を失う事態へと陥っている。これでは復帰は元より、日常生活すら困難だろう。
中には、家ごと潰されている者も居て、既に取り返しのつかないところまで来ているのだ。
そんな騒動を巻き起こしているのは、同一犯による犯行だと誰もが気付いている事である。
だが、その犯人がどうしても捕まらない。影も形も無いのだ。
それに怯えて、新興貴族等はもう城へは近寄りもしない。
今まで擦り寄ってきてうるさかった者達等、軒並み黙り込んでいる有様だった。
「さぁ、始めようではないか。」
その状況に、これ以上無いくらいに機嫌の良い王弟。
未だ何かを企むかのようにして、含んだ笑みを浮かべ続ける国王陛下。
何も知らぬ者からすれば、薄気味悪いとさえ思える状況だろう。触らぬ神に祟り無しとばかりに、下級貴族達はこぞって沈黙を続けている。
それは、全て城という舞台を元に誂えられた状態。
本番は、まさにこれからだった。
ざまぁは次回。
予定は未定のつもりでは無かったのだけど、纏めるつもりが一話で纏まらずにこうなったorz
2018/10/20 加筆修正しました。
2018/10/25 ご指摘頂いた誤字を修正しました。




