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041 閑話 その錬金術師は知らぬ間に巻き込まれてる

 何やら陰謀渦巻く時代に主人公は目が覚めてしまったようです。


 陛下より賜った安息の地。

 そこは、かつて勇者と呼ばれた者が危険を排除し、全てが濁流によって押し流された後の土地を献上したとされている。


 しかし、その実情は殺して奪ったものでしかない。


 それを知らぬ貴族共は、あの地を「栄光の土地」等と呼ぶ。

 だが、殺されて奪われるだけの理由があった事など、新興貴族に至っては知らぬであろう。

 古くから仕える貴族くらいしか、実情等何一つ分かっていないに違いない。


 そんな土地に、よりにもよって魔物が現れた。

 管理を請け負っているのは現国王を兄に頂く、王弟たるこの私。

 このままでは、他貴族共の横槍を許す事になりかねんと、慌てて陛下へ掛け合ったのだ。

 しかし、


「それで、兵が必要か?」

「はい。私の不徳と致す所。如何様な処分でも――。」

「待て。」


 首を差し出してでもと思っていたのだが、それは兄にの手によって遮られてしまった。

 厳格ながらも優しきこの方は、身内にとことん甘い。

 何時でも切り捨ててもらわねば、私はこの方の名に泥を塗ってしまうというのに。

 王家の威光は、決して揺らぎがあってはならぬのだ。


「まぁ、そう思い詰めるな。あの地とて勇者が現れたのは千年も前の事。お前一人のとがに出来るものでもなかろう?」

「しかし――。」

「そもそもとして考えてもみよ?その魔物はどこから流れてきた?もともとあの地に住んでいたわけではあるまい。それでは勇者が殲滅したと宣言した事が嘘であったという事になるのだからな。」

「……。」


 つまりは、勇者の発言が実は虚言であった可能性もあると、示唆しさされたのである。

 確かにかの勇者は大災害を齎した存在として、時を越えて甦ってくるかつての時代に生まれた者達によって、その提唱が度々なされている。

 彼らは時を超えて幾つかの時代に目を覚ましては、常に警鐘を鳴らしてきたのだ。


 決して、勇者だけは召喚するなと。


「であれば、せきはお前ではなく、魔物の移動を許した他領の者か、そもそも発言を偽ったかも知れぬ勇者であろうよ。」

「――はっ。」


 私にその言葉へ否を投げかける事等、出来はしない。

 私は臣下なのだ。例え血が繋がった兄弟であろうとも、王は兄である。それは絶対だ。

 ――真実に関しては、この場合関係が無いのである。


「しかし、あの地で氾濫はんらんとは。」

「申し訳ございません。」

「いや、お前を責めているわけではない。ただ――動いたかと思うてな。」

「動いた?」


 何がであろうか?


「何、知らぬならそのままで良い。ただ、かの時代の提唱者達同様、災害を免れた者ならば、今まで通り丁重に扱え。」

「はっ。」

「兵の貸出に関しては許可する。必要な人数を集めて向かうが良かろう。魔法使いの編成も許可するものとしよう。必要に応じて使うが良い。」

「陛下の温情、痛み入ります。」

「お前は一々大げさだな――たった二人の兄弟ではないか。もう少し気楽にせよ。」

「有難き幸せ。」

「そういうところが大げさだというのだ。」


 お笑いになる陛下だが、庶子として生まれ育った私とは違い、この方は王族として生まれ育ち、この国の行く末を握っていらっしゃる。

 私のような下賎の者がその血を半分でも引いているだけでも畏れ多いというのに、わざわざ市井にあった私を掬い上げて、こうして弟として接してまで下さるのだ。

 そこに、恩を抱かないはずがないであろう。私のこの堅苦しさは、兄へ対する感謝の念の表れであると同時に、尊敬の思いも籠められているのだから当然だ。


「まぁ、あの地に関してはそこまで手間取る事も無かろうて。安心して、領地へ戻るが良い。」

「はっ。この度は忙しい中をお時間頂き、更には嘆願まで聞き届けて頂けて、感謝の念に堪えません。」

「だから、お前は大げさだというのだ。」

「――はっ。」


 笑う陛下に、娼婦の子である私等、本来ならば近付く事さえ叶わなかった事だろう。

 それでもこうして、兄弟として生きられる。それのなんと幸運な事か。


「お前には幸せになってもたいたいからな。」


 ――付け焼き刃で王族の振る舞いを身に着けただけの私には、本当に身に余る光栄だ。


 簡潔な流れ:お忍びで娼婦の元に通っていた前国王、市井に種を残していた。

 風俗関連の職に就いている親の子は蔑まれやすいですが、彼女達のような職に就いた人がいるおかげで、性犯罪率はある程度抑えられています。

 こういった事業を三次・二次元問わず規制すると、犯罪率は上昇します。統計としても海外で出ていますよね。え?知らない?お隣の韓国見てみるといいよ?

 なので、蔑むどころか凄いんです。むしろ偉いんです。褒めてやるのは違うとは思いますが、下に見下す理由なんて何一つありません。性産業は切っても切れない関係ですからね、ええ。

 そろそろ「人間も動物である」とか「理性を持った獣である」という自覚を人類は持つべきでしょう。

 何時まで性関連に蓋してんの?恥ずがしがってる場合じゃないっしょ?って事。

 ちゃんとした知識植え付けて自己防衛能力高めないと、小さい子ですら(男の子も含めて)被害に遭うような時代になってます。だから、差別意識そろそろ捨てようねって言いたかった。

 大体、お高く止まってても「お前が生まれたのも父ちゃん母ちゃんがエロい事したから生まれたんだ」っていう事実からは逃れられませんから。せめて大人だけでもしっかりしよう!


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