036 その錬金術師と薬草~薄紅葵&檸檬編~
今回は二種類同時に登場します。
お湯を注いだ途端、透き通った青い色へと液体が変わる。
何の事は無い、マロウとも呼ばれる薄紅葵を薬草茶にしてみたのだ。花は赤紫色なのに、煮出し汁は青くなるんだよな、こいつ。
「で、ここに檸檬を投入して、と。」
檸檬の木は探したらあった。おかげで、果実もまた入手出来ているのでこうして投入出来るのだ。
この薄紅葵と檸檬を合わせると、お湯の色が桃色へと変化する。これが見ていて何とも面白い。
割りと、最初の方に錬金術師が習う実習でもあるので、その頃を思い出してちょっと感慨深くもあった。
「学校ではいろいろと面白い話があったからなぁ。」
こういう実験もまた、その内の一つだと言えるだろう。
錬金術師の扱う物は多岐に渡る。しかし、その性質や特性を理解するには、様々な実験を通して体感しないと身につき難いのも事実だ。
故に、日々知識を詰め込んで実習を繰り返すのが学校での毎日になる。
割りかし変人の集まりという認識が錬金術師へは強かった。まぁ、それを言うと魔法使いも魔術師もそうだが。
そんな変人が集まってやる中に、こういう実習があったのである。
「見た感じ、特に効能に変化も無さそう、か――。」
当時なら当たり前なこの反応。
しかし、植生が大きく狂ってしまっている現代では、檸檬なんかは四季の影響をもろに受ける植物な為、割りと注意が必要だったのだ。
その檸檬だが、どうも俺の知っている品種とは違うようで、果汁が多く種が少ない。しかし、効果としては余り変化は無さそうだ。薄紅葵にしても同様である。
「不幸中の幸いかな。」
前摘み取った現証拠なんて、マジいらない子になってて辛い。タンニンどうすんだよ?代替品も見つかって無いし、鞣し革作れねぇよ。毛皮手に入れた後どうすりゃいいんだ!?
「うん、今後の課題だな――。」
その課題は何時か解決しよう。何時か。
作ったばかりのお茶を飲みつつ、そう独りごちる。
檸檬の果実は、酸性の強い植物である。つまり、酢の代わりにもなるし、こうして実証の材料にもなるのだ。挿し木で増やせるのも嬉しいところである。
薄紅葵の方はといえば、こちらは食用に適しているといえるだろう。若葉と花はサラダに、普通に育った葉と根は茹でて野菜にもなる使い勝手の良い植物だ。野菜が無い間の代用品として十分使える。
「上手い事増えてくれるといいんだがなぁ。」
尚、薄紅葵はその日の夕飯のお浸しにもなった。割りと美味かったと言っておこう。
薬草のみならず、野草や山菜等、普段スーパー等で出回っていないものは、妊婦や小さい子は口にしないよう願います。
妊娠していない大人は問題なくとも、害となるケースがあります。現代社会では汚染等もあるので注意です。
また、蜂蜜に含まれるボツリヌス菌は、健常な大人は大丈夫ですが幼い子供では抵抗力が足りずに死に至る事があります。乳児へは与えないで。
檸檬と蜂蜜の組み合わせをよく見かけるので、関連として出させていただきました。
2018/10/17 追記 直売所等ではたまに見慣れない物がシレッと混ざってる事があってビビります。茸や山菜は良く名称を見てね!偶にですが、知らないのが混ざってるのは本当あるある。




