032 その錬金術師と薬草~加密列編~
※皆様へ作者よりお願い。
本章にて書かれている内容を現実に持ち込む際には、下に書かれている内容を読んだ上、良く良くご注意下さい。
そもそも現実には持ち込ま無えよ!って方は、面倒でしょうがそのままスルーして下さいませ。
加密列、もしくはカモミールという薬草。
花言葉に「逆境に耐える力」とか「逆境に生まれる力」「苦難の中の力」なんて言葉があり、可憐な見た目であるにも関わらず、意外にも英雄や戦士が好む花だ。
開拓村住民その1であるメルシーちゃんも、お茶として代用するくらいには浸透している薬草の一種で、割りと一般人も知識があるんじゃなかろうか。
林檎のような甘い香りが特徴の花を大体春につける。効果としては発汗作用、鎮静作用だ。ただし、キク科のアレルギーを持つ人は使っちゃ駄目だからな。アナフィラキシー反応を起こす可能性がある。
主に薬草茶の他に入浴剤代わりにしたり、化粧水としても材料になるんだが、錬金術では実は余り使わなかったりする。
何でか。
開花した花が材料なんだ。
効果としてみると、費用対効果に合わなかったりするんだよ、実は。
「個人で消費する分にはいいんだがなぁ。」
いかんせん、売り物にするには量が必要だ。薬草茶にしても、入浴剤にしても、化粧水としても、全部である。
「それなのに、花だけが材料になるせいで、割りと量がいるんだよな。」
これが葉や茎もとなれば、話は別なんだが、この花はそうじゃない。かさ増しが出来ないのだ。
しかもこの花、あんまり花自体が大きくならない。そのせいで、摘み取る作業ですら大変になるんだ。
「あー、面倒……。」
それでもこうして採ろうと思ったのは、精油として使えるからである。
精油は食品だけでなく香水の香料としても原料となる物だ。割りと富裕層なんかに売れるのもあって、いざって時の金に変えられる物として手元には置いておきたかった。
尚、濃縮されたままだと不快な匂いになるので、希釈して甘い香りになるまで手を加える必要性があったりする。
「ただ、やっぱり面倒臭いんだよな……。」
同じ精油なら薔薇でも良いんだが、あれは自然で見つけるとなると、せいぜいが野薔薇になるんで量が揃わなくなるんだよな。品種改良すればいいんだが、肝心の改良する為の薔薇が無いっていう。
なので、以前から加密列を使ってたんだが――。
「やってらんねー!」
途中でマジで面倒くさくなって、摘むのをやめてしまった。
共栄作物(共存作物とかコンパニオンプランツとも言う)として利用出来るから、ついでに植えてたんだけど、こうしてそのついでのついでに採取を始めてみたら、港町にあった畑よりも広いせいでめちゃくちゃ面倒だったっていう。
――駄目じゃん、これ。
「他のにしよう。うん、精油は別のもんで代用だ。」
売り物として扱うには微妙だ。どう考えても時給換算に見合わない。
尚、摘み取られた花はその後どうなったかというと、布を染める材料となりました。
そして、卵色(黄色)に染まって、メルシーちゃんの手元にいきましたとさ、まる。
※この小説は、現実においての錬金術や薬学、家庭医療等を促進する事を目的とはいたしておりません。
あくまで創作ものとしてのお話です。
ああ、そんな知識もあるんだなー程度に留めてお読み下さい。
それでも現実に反映したいと言う方は、下記の内容に必ず一度は目を通して下さいませ。
その① 小説内と同じ事をしようと、素人が無闇に手を出して良いものでは決して無いと知っておく事。
その② 書かれている内容は鵜呑みにせず、きちんとした知識と技術を自分で身に付ける事。
例えネットで情報が同じだったからと、安易に試すのは無謀です。危険です。自殺行為です。
その上で一言。
素人は無闇に『採取』や『調合』、山菜等の『調理』へ手を出さないで下さい。
以下、その理由です。
まず、この作中に出てくる薬草を含めた植物等々の特定の名称が上げられている物については、現実においても実在している物があります。
中には実際に調べ上げて記載しているものもある為に、効能や用法等、小説内と現実で同じという事も多々あるでしょう。
しかしながらも、これらはあくまで知識です。ただの『知識』です。
なぜならば、同じ山菜や茸でも、当たり年と呼ばれる食中毒に見舞われる年もあれば、環境の違いから有毒であるケースもあるんです。勿論、これは薬草も同様です。
更には似たような毒草や毒茸を採取してしまい、そのまま誤って口にして命を落とす可能性も素人には多く危険な事なのです。絶対試さないで下さい。
それを知った上で採取するとしても、採取先の土地の持ち主との相談や交渉をしなければ、最悪犯罪者として捕まります。不法侵入と窃盗です。この点は要注意でしょう。
おまけに、採取の際には注意事項や暗黙の了解等、土地によって色々と問題も存在しております。なので、突然一人で始めるのは余り現実的ではありません。
熊や猪といった危険な害獣への対策も地域によっては必要ですから、絶対に一人で山や森へ入らないようお願います。最悪、遭難したり食い殺されます。マジで。
以上の事から、それでもどうしてもそういった事に興味があって手を出したいという方は、自治体等が開催しているツアー企画への参加をご検討下さい。
ツアーを企画している団体にはきちんとした知識と技術をお持ちの方が同行して下さる上、土地との交渉等も事前に行っています。この時点で、余計な手間が省けます。
ぜひ、そういった方へ指示を仰ぎつつ、団体での楽しむ方向でご検討下さい。
最後にもう一度だけ言います。
素 人 は 安 易 に 手 を 出 す な。
知識だけあっても、穴だらけなんですよ、実際……。




