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193 誘い

 強制的に連れて行かれた先は、二度と足を踏み入れたく無かった死者の楽園。

 そこに辿り着く前のゴーレムを見てアレキサンドラ氏が倒れ、次の死者の都では非戦闘員の全員が倒れた。

 なにせ上空にはゴーストの群れが飛び交い、地上ではスケルトンの群れが勢揃い――一体、どんな悪夢かという話だ。


(絶対夢に見る――。)


 おそらくは、全員が同じ心境だろう。

 特に、ネメア婦人に至っては、意識が戻る度にクドラクの姿を見て気絶する有様だ。意識を失ってる間も魘されているし、相当精神的ショックが大きそうである。

 また、一人でなく二人居た赤子は、この状況に本能的な恐怖でも感じているのか、揃って目を丸くして固まってしまっていた。

 おかげで、途中で動くに動けなくなり、その結果として移動自体が異様な状況へと陥ってしまった。


「リビング・アーマー……。」


 所謂動く鎧という存在である。それが、倒れてしまったネメア婦人、サイモン殿、アレキサンドラ氏、そしてディアルハーゼン氏の四名を担ぎ上げ、歩き出す。

 勿論、コイツもアンデッドの一種で、対応するのが難しいとされる中位の中でも厄介な相手だった。


「マジでアンデッドの宝庫だな、此処は――。」


 呻く此方など無向きもしない。

 リビング・アーマー達は、居並ぶスケルトンの合間をすり抜けて、上空を飛び交うゴーストの群れに見守られるようにしながらも、倒れ込んだ者達を担ぎ上げては運んで行った。

 向かう先は――全員一緒のようだ。どうやら分断とかそういうつもりは無いらしく、不審な様子も無い。

 その事へ幾分ホッとしそうになったものの、後ろから追い立てるようにしてクドラクの声が掛かって来て、思わず言葉を返していた。


「ほらほら、ボーッとしてないでさっさと行く。行くが漢字違いのあの世へ逝くにはなりたくないでしょ?」

「止めてくれ!ただでさえ余裕が無いんだから、冗談にしてもその言葉はきついだろ。」

「冗談でも無いのだけどねぇ――まぁいっか。」


 会話をしていても、他の者達は混ざって来る様子も無く無言。

 流石に慣れたとは言っても、リルクルもロドルフもこの状況では喋る余裕も無いらしい。

 押し黙り、全員が沈黙したままで、少し足早に進んで行く。


(まぁ、無理も無いよな――この状況だと。)


 俺としても諦観しか出てこない事態だ。

 前回は勇者の情報を渡され、地上へと帰還出来たものの、今回はどうやら違う様子だし、勇者に関する事を報告して終わりというわけでもない。

 一応、此処に居る者達には未来に蘇ってもらうつもりのようだが――甦った先で、果たして何を求められるのかと思えば、不安しか感じない話しだった。


(アンデッドなら寿命は関係無いもんな。絶対、未来でまた顔を合わせる事になるんだろ?勇者の討伐も、師匠なら対応出来るだろうしさ――。)


 何よりも国が崩壊している状況にあるのだ。

 乗っ取りでも何でも可能な現状にあるし、今回の事態を足がかりに地上へと侵攻を開始するかもしれなかった。

 ――まぁ、そうなったら、多分お終いなのだろうけれど。


(疲れたな。)


 ともすれば眠ってしまいそうになるのは、血が足りないせいだろうか?

 あるいは魔力の使いすぎからくる枯渇症状か。

 何にしろコンディションは最悪だし、この状況で説明とかを求められるのは酷だと言える。


(多分、勇者に関する情報を師匠は欲しがるはずだよな――でも、これをどう使えば良い?)


 此処に居る者達の安全の確保――は、仮死の魔術陣の使用を進められそうだし、何かそこに落とし穴があった場合、対応出来なくなるので却下したいところだ。

 だがしかし、それ以外の方法で安全を確保するのは可能だろうか――?相手はアンデッドだし、価値観がズレていたり、変化してしまっている元人間が相手だ。不安しかない。

 そもそもとして、知恵が回る分、下手な魔物を相手にするよりも、厄介な手合なのは間違いが無い。


(俺に師匠から最善を引き出すとか、無理にも程があるんだよなぁ――あの人、生前ですら此方の話聞かなかったし。)


 元々は闇属性に特化したかったところを火と水に力を注ぐよう、強制された俺。

 その過程で魔法使いでも魔術師でもなく錬金術師の道に適正があるのに気付いたのは、まぁ良かったのだろうが、結局は此方の話は通らないという事である。

 その相手と交渉が必須な今の状況は、正直、憂鬱でしか無い。何も出来ない気がするのだ。


(不味いな――頭も働かないや。)


 ともすれば落ちそうになる瞼に、縺れそうになってしまう両足。

 現状で意識を失うのは最悪だと、そう脳内で警鐘が鳴り響くのに――以前見た階段が見えたところで、俺の意識はふつりと途切れていた。


 やたら長くなりがちだったので今回は短めに。

 尚、前話でのカット部分で暴走したのはクドラクっていう。吸血衝動で「ウフフ、誰にし・よ・う・か・な☆」な状態に。

 勿論バッサリとカット。主人公の体調的に、止めれないし止まらなかったし選択先にされるとその時点で死亡フラグが!

 なのでカットなのです。


 2019/01/27 加筆修正を加えました。


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