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176 閑話 その錬金術師の新しい弟子達

 ドロシー視点。


 沼地でおっかないアンデッドと遭遇して。

 殺されるって思ったら、居なくなっていて。

 気付いたら私もリリィも綺麗なお城に居た。

 それでも、一つのベッドの中、お互いにお互いへとしがみつきながら、しばらく震えてたけど。


「――ねぇ。」

「なぁに?」


 段々と落ち着いて来ると、揃ってお腹の虫がグーッなんて鳴るのが聞こえて来る。

 どんなに怖くても、お腹は空くんだね。おばば様が亡くなって、それにわんわん泣いた後も、お腹は空いた。

 そういうところ、人間ってちょっと不便で有り難いと思う。どんな状況でも、どんな気持ちでいても、お腹が空いて何か食べ物をって思っちゃうから。

 おかげで、悲しみに浸ってばかりじゃいられなくなるし、怖がってばかりでもいられなくなる。

 平常心って言うのかな、余裕が戻ってきて自分を取り戻せるようだった。


「お腹、空いたね。」

「うん、空いたね。」


 布団被って、震えてたなんて思えないくらい、現金な私達。

 何か食べようとノソノソと布団から抜け出す。

 そこに、


「軽食をこちらにご用意させて頂いています。よろしければ、お茶と共に如何ですか?」

「「わぁ。」」


 紺と白のエプロンドレスを身に着けた女性がそう言って、ふわりと微笑んで見せた。

 思わず感嘆の声が漏れちゃう。

 それくらいには、すっごく上品な微笑みだったんだもの。里では見たこともないような綺麗な動作で、スルリと動くのも素敵。


「良いの?」

「私達、何も返せないよ?」


 それでも思うのは、里で身についている掟。おばば様が決めた、外との交渉はしないって事だった。

 魔女は、その知識と技術を外に流しちゃ駄目なんだよね。せいぜいが薬草を摺って、魔法薬を作るくらいなものになっちゃう。

 けど、その作ってる最中の行程だとか、作り方だとかを知られるのも駄目。あれもこれも駄目って、駄目な事が多くて大変だけど、そのおかげで私達は食べていられるし、欲しい物をある程度手に入れられる環境にもあるんだって知ってる。

 だから、絶対に破らないようにしているから、何かを見返りに求められても困る事が多いの。

 勿論、錬金術師の人は別だけどね?あの人はほら、里で作っている魔法薬の大本のレシピを知っているし、技術だってあるもの。だから別なの。

 そんな事を思いながらも戸惑う私達に、


「何かを要求するような事はありませんから、安心してお召し上がり下さい。全ては、救世主様のご希望に沿っておりますから。」

「「救世主?」」


 知らない単語が飛び出してきて、お互いに顔を見合わせる。

 救世主って何?というか、誰の事を言ってるんだろう?

 そんな風に思っていると、


「お二人をお連れした方ですよ。この領地を一度ならず、二度も救い、更には三度目も救おうと奔走されているお方です。」

「「あ。」」


 言われて、思い出した。

 私達、おばば様の命令で錬金術師さんに着いて来たのに、置いていかれちゃった――!

 ううん、置いていったのに理由があるのは分かってる。そして、私達じゃ置いて行かれるしかないっていうのも分かってるよ。

 でも、それだとあの人はどうなるの?一人で向かっちゃったあの人は――?


「ねぇ、大丈夫なのかな?」

「一人で行ったんだよね?怪我して帰ってきたりしない?」


 今更ながら、思い出す。

 あの人だって、沼地で出会ったアンデッドに怯えてたって!

 だって、震えてたもん。間違いなく、怖かったはずだよね?それなのに、一人で向かっちゃってる!


「「お、追いかけた方がいいのかな?」」


 でも、怖いし。

 絶対殺される気がする。

 そう思ってリリィとアタフタとしていたら、


「お二人は匿われたのですよ――どうか、あの方のご意思を無視されるような事は、お控え下さい。生き延びる事を望まれているのですから。」

「「――はい。」」


 少し厳しい声で返されて、シュンッと落ち込んだ。

 そうだよね、私達を敢えて置いていったんだもの。それも、此処に居る人達に頭を下げてまでさ。


「あの時、何もできなかったもんね。」

「足手まといだよね、私達。」


 着いて行ったとしても、また震えて何も出来なくなるのは確実。

 今だって、思い出しただけで震えちゃう。こんなんじゃ役に立つどころか足を引っ張っちゃうよ。

 ズーンッて落ち込むけど、やっぱりお腹の虫は健在で。

 グーッなんて鳴るのが恨めしかった。


「――ひとまず、お食事にされましょう。大丈夫です、共に居なくても、何か出来ないか考える事は出来ますから。私も微力ながらご尽力させて頂きます。」

「「有難う。」」

「さぁ、お二人ともこちらへ。」


 優しい言葉をかけられて、美味しそうな食事を提供されて、私達もようやく動き出す。

 やっぱり現金なもので、美味しい物を食べている内に気持ちが明るくなってくる。

 あれだけ怖くて震えてたのに、今なら何か出来るんじゃないかって思えてくるんだよね。

 ただ、やっぱりちょっと、ううん、かなりあのアンデッド――ヴァンパイアは怖いけど。

 それでも、


「「お願いします!」」


 何かをしようと、此処の人達のトップに掛け合えるくらいには、私達は回復していた。


 何をしようとしているかは別視点で。

 相変わらずこの双子の違いが出ない。セットキャラだからしょうがない、しょうがないんだけども違いをどこかもたせられないかと悩むっ。


 2019/01/11 加筆修正を加えました。おっかない→恐ろしいの意。


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