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159 その錬金術師は古代遺跡脱出を目指す

 ところどころに沸いているゴーレムを避けつつ、南に向けて只管進んでいた俺達。時間の感覚も暗闇の中では分からず、適度に休憩を取りながらも進む。

 足元や周囲を照らす明かりは、カンテラに灯る何とも心許ない光だけだ。正直言って、気が滅入る状況が続いていた。

 それでも、途中までは良かったと言えるだろう。やり過ごせるだけの狭い通路もあったし、ゴーレムとの遭遇を避けて何事も無く進めたからな。流石の『アホ』であっても、場の空気は読んだらしい。


(ここまでは順調、と――問題はこの先だな。)


 ただ、やはりというか、完全に避ける事は出来ない場所も出てきてしまって頭を悩ませる。

 目的地となる上り階段のある場所までは、ここから凡そ1kmといったところだろうか。

 その途中には当然のようにゴーレムが点在しており、その上隠れる場所も無い為に、どうにもやり過ごす事が出来ない状況にあった。

 そんな地図上の魔物の数を眺めつつも、一人思案する。

 勿論『アホ』と相談なんてするわけがない。敵の強さも確認せずに突っ走り、返り討ちに遭うのが目に見えているからな。巻き添えは御免だ。


(どうするかなぁ。)


 そんな『アホ』との会話は極力しない方向で進んで来たが、今現在は悩ましい状況にある。

 一応安全圏と思われる場所で休憩しているが、それは通路の横に空いていた人一人分が通れそうなくらいには狭い道を抜けた先にある、これまた狭い部屋の中である。

 そんな狭い空間では火を熾せないので、当然、食べるのは保存食のみだ。

 ただ、その保存食である黒パンは、そのまま食べる気は誰だってしないだろう。固くて酸っぱくてぱさついてて、とてもでは美味しいとは言い難いものがあるからな。

 この為に【空間庫】を開いて、中で氷を使って冷蔵保存していた甘みのあるクリームを取り出し、それを塗って齧る事にした。

 残り少なかった甘味料を使ったジャム代わりの嗜好品だ。こういう場所では、多少なりともモチベーションを上げないとやっていけないところがあるし、その為に出した物だったんだが、


「それなんだ?なぁ、なんだそれ?なぁ?」

「――煩い奴だな。クリームだよ。」


 これに思いの外食いついてきた『アホ』が居た為に、思考の邪魔になってくる。

 それを大人しくさせる代わりに、仕方なく残りを差し出しておいた。

 すると、


「うひょー!これ美味ぇな!酸っぱいのが押さえられて食べやすくなる!」

「そうかい。そりゃ良かったな。」


 あれだけ渋っていた黒パンに喜んで齧り付いては、騒々しさが二割り増しになってしまった。

 思わず、頭を抱える。

 何せ、今居る場所はせいぜい三畳程の広さしかないからな。野郎二人で居るのは、非常に居心地が悪いんだよ!しかも声が反響して煩いったらない!


(ちょっとは静かに出来ないのか、コイツは――っ。)


 道中も延々と話しかけてくるし、場所が遺跡の中に移ってもあちこちを見ては騒ぎ立てるので、連れて来るのに非常に大変な思いをした。

 それでも残り1km。多いのか少ないのか微妙な距離だが、ここまで安全に来れただけでも、よく頑張った方だと思う。

 正直投げ出したい気分だが。


(コイツ、魔物に見つかりそうになろうがお構いなしだったからなぁ。)


 結果的には通路の途中にある小さな通路に避難し、その度に理由つけて休憩を何度も取らざるを得なくなり、かなりの時間を食ってしまっていた。

 貿易都市を出発してから、今は何日目だろうか?たった二日目にして古代遺跡に落ちるなんて、不運なのもいいところだ。

 この場所にある通路にも、元々は更に先があったようなんだが、残念ながらそこは崩れてしまっていて通れず、完全に袋小路となっている。

 この為に背後を取られる心配が無く、安全圏だと言えるだろう。

 一応、狭い通路である為に、図体がデカイゴーレムなんかは入って来れないからな。大丈夫なはずだ。


(こうしてところどころにあるのは助かるんだが、かといってここから先にこういった所が無いのが問題なんだよなぁ。ゴーレムに見つからないで進むのも、確実に無理があるし。)


 魔物は魔力を持つ存在に反応して、襲い掛かってくるのだという調査報告書も以前にはあった。

 魔物の氾濫であるスタンピードでも、執拗に逃げ出した人々を追いかける傾向があるらしいし、目も耳も無いゴーレムなんかだと、確かにこの魔力によって判断していそうだ。

 ただ、それをやり過ごすには数が多過ぎて、現状は足止めを喰らっているような状態にあった。


(困ったなぁ――良い案が思いつかないや。)


 打破しようにも動いていないのもいるし、ここで留まり続けるには選択肢自体へ無理がある。

 もしかすると巡回型と待機型で別れていたりして、更にはそれらを統率する上位個体がどこかで沸いている可能性すらあるだろう。

 しかも、そんなゴーレムが、ここから先の階段までの道を占領するようにして存在しているように思える。

 この読みが当たっている場合は、どう考えても無事で済む気がしなかった。


(探索魔法には反応しないところを見ると、アンデッドみたいに何らかの方法で生者を見分けている可能性もある、か――?)


 もしそうだとすると、感知された時点で敵認定されるんだろうな。

 ――それは凄く嫌な予感しかしない。


(かと言って、アレを倒して行くのは確実に無理だし――自殺覚悟なら、まぁ、この『アホ』でも焚き付ければ何とかなるかもしれないけども。)


 ちらりと見るのは、その『アホ』こと火魔法使いの『アホード』だ。未だにクリームに夢中なんだが、何が彼をそうさせるのかはさっぱりだった。

 それはともかくとして、火属性は無駄に火力ばかりがある。その為に、攻撃力として見るなら確実に俺よりもこの『アホ』の方が上だろう。最悪、この『アホ』をけしかけておけば、時間稼ぎくらいにはなるかもしれないとは思う。

 ただ、それをやると他の魔物を引き寄せる可能性も高くて、最後の手段というか悪足掻きになりそうなのが何とも言えなかったが。


(うーん――ひとまずは、コイツを使うのは最悪な状況に陥った場合に限ってだな。それよりは、他の方法を模索するしかないか。)


 その方法が見つからないので、頭が痛いんだが。

 通り抜けるのはおそらく不可能だとしても、安全性を高める為の別の手段を講じないとならないが、それが中々見つからない。

 一応は土魔術で地上までの道を削るのも考えてみたものの、その前に俺の魔力が枯渇しかねないという問題があり、こちらは既に断念していた。

 何せ、ここを脱出出来たとしても、その『後』があるからな。満身創痍では意味が無い。


(地道に岩を削るのって、地味に魔力を使うんだよなぁ。)


 そういうわけで、ゴーレムを土魔術で削るのも当然却下になる。勿論、風魔術に至っては苦手なので既に論外だろう。

 大体、戦闘中に魔術を扱うにしても、火も土も風も俺は全く上手く使える気がしないしな。咄嗟に使うのが水か氷だし、特に氷で大抵の事は何とかしてきたので、癖がついているのもあってどうしようもなさそうだった。

 色々と考えた結果、問題を起こす『アホ』には言いつけておく事にしよう。そうしておかないと、確実にまた何かへ巻き込まれるのは目に見えている。それを防ぐ為にも、先に釘を差しておくのは当然の事だろう。


「――良いか、沸いている魔物はこの辺りに使われている、やけに密度の高い石の塊が身体だ。それを溶かすには大量の熱が必要になるし、炎を使えばそれこそ酸欠で俺達が先にくたばる。だから、極力戦闘を避けて進むのがベストだ。」


 この言葉に、


「そうなのか?こう、全部ドカーンってふっ飛ばせばいいんじゃねぇの?」

「お前なぁ――。」


 何も考えていない様子で返されて、俺は溜息を吐き出していた。

 こちらの言葉は話す側から右から左に受け流しているし、どうしようもない『アホ』だ。


「酸欠する可能性を頼むから考えてくれよ。狭い場所で火を熾せば酸素が無くなるのは分かりきった事だろうが。」

「えー。」


 不満げに言われて、イラッと来る。

 この状況を作り出したのはコイツで、それを打破しようと模索してるのが俺だというのに、足を引っ張りたいように見える言動は切実に止めて欲しい。

 最悪、見捨てて行こうかと思うくらいには苛立つ態度だ。


「俺にお前と心中の気は全く無ぇってのっ。窒息死したいなら自分だけでやってくれ!」

「へいへい。」


 これにも馬耳東風なんだろうな。

 溜息を吐きながら、地図を突き付けておいた。


「大体、落ちたのだって天井が脆くなってたからだろう――それなのに爆炎撒き散らすとか自殺志願者もいいところだぞ。天井が更に崩れて来て生き埋めになったらどうするんだ?確実に死ねるだけだろうが。」

「へーい。」


 俺の言葉に『アホード』がやはりいい加減な態度で返してくる。

 それに頭の痛みを堪えつつも、今どの辺りにいるのかを指し示して、道中のどの辺りへとゴーレムが沸いているかを教えておく。

 途中に居るゴーレムは全部で三体だ。大体三百から四百メートルに、一体いる感じで点在している。


「唯一見つけた地上への道には、現状土砂が流れ込んでいるからすぐには出られなくなっている。当然、それの掻き出し作業があるから、敵を引き連れたまま向かうのは悪手だ。最悪、逃げ場も無いままに殺されるし、覚えておけ。」

「ふむ――。」


 俺の言葉に地図を手に取り眺める『アホ』を放置して、この先の行動を頭の中で順序立てて行く。

 こういう行き止まりが多数存在する場所での戦闘においては、何に一番気を付けないとならないかというと逃走経路の確保だ。

 しかし、俺達はどっかの『アホ』のせいで崩れた天井から落ちて来たせいで、この逃走経路そのものが無いような状況にあった。怪我をしていなかったのが不幸中の幸いだろう。

 安全に見えるこの通路も、果たしてそうと言いきれるかは不安が残るし、出来るだけ早くここを抜けてしまいたいところだった。


「敵はゴーレムだが、そのゴーレム自体が古代文明時代の遺産の可能性もある。絶対に攻撃を仕掛けるんじゃないぞ――最悪、自爆されて全滅だって有り得るんだからな。」


 触らぬ神に祟り無し、だ。

 そう思って告げたんだが、


「んでも、敵はゴーレムなんだろ?素焼きにすればいいんじゃねぇの?」


 火を使うなと言ってる側から焼こうとするこの『アホ』に、俺は頭を抱え込んで怒鳴った。


「クレイ・ゴーレムと一緒にするなよなっ。相手はこの辺りの岩と同じ身体だぞ?焼いたところで無駄だっての!」

「えー。」

「えーじゃない!絶対に攻撃するなよ!?絶対だからな!?」

「ちぇっ――分かったよ……。」


 ブツブツと文句を垂れているが、ここまで来て余計な行動をされたら本当に堪ったものじゃない。

 ここにいるゴーレムが何に反応するかも定かじゃないし、どのくらいの強さを持つかも不明なのだ。

 せめて、対処しきれる範囲で目的地までは辿り着きたかった。


(それには――道が必要か。)


 少なくとも、黙って攻撃されていられる程、ゴーレムだって大人しくは無いだろう、きっと。

 幸いと言って良いのかは不明だが、そんなゴーレム達は天井付近に貼り付いていて、余り行動範囲が広いとは言えないという利点がある。

 冗談抜きに蜘蛛みたいな動きをしていて不気味な事この上無いんだが、動く範囲は狭いのでやり過ごしやすく、ここまでは好都合で助かったのだ。


 ただし、それはあくまで『ここまでは』が付く。


 ここから先には三体がほぼ等間隔で並んでおり、しかもそれを通り抜けないと階段のある地点まで辿り着けないという難点がある。

 途中で身を隠せる場所も無いし、力技でゴリ押しするしかないだろう。

 しかし、戦闘はおそらく一方的なものになる。火と氷じゃどう足掻いてもゴーレム相手には太刀打ち出来ないからな。

 この為に、道中に人一人が通れるくらいの道を確保するように水魔法で覆っていった。

 そこへ、


「それじゃ――まずは【凍結】。」


 氷の橋を築いた時同様に、多少応用しつつも水だった通路を凍らせて氷のトンネルを作っていく。

 念の為に氷は多少厚めに作り、空気を含ませて真っ白に作り上げておいた。

 気休めにしかならないだろうが、多少はマシだろう。

 その直後に再度探索魔法を使い、魔物達の様子を確認してから口を開く。


「――よし、特に気にしてる様子は無いな。」


 氷のトンネルはガン無視されている。

 天井をゆったりと動くくらいで、ゴーレム達にこれといった異変は見当たらなかった。ひとまずは安心して良いだろう。

 直後に休憩を切り上げて、狭い通路を抜ける。そのまま、作り上げた氷の通路へと出た。


「寒ぃな、おい。」

「文句言うな。何の対処も無しにゴーレムと相対なんて出来るわけもないんだから。」

「へーい。」


 愚痴愚痴と不満を垂れる『アホ』を連れて、氷のトンネルを通りつつ、まずは最初の一体が居る辺りをヒヤヒヤしつつも抜けようとする。

 瞬間、


「――走れ!」

 

 俺は声を掛けつつも駆け出して、上から勢いをつけて飛び降りて来たモノを間一髪で『アホ』を引き寄せ、やり過ごしていた。

 そのまま引きずりかけた状態で駆けていると、


「マジかよ!?追ってきてるぞ、アイツ!」


 後ろから声が飛んで来て、怒声を返す。


「良いから今は黙って走れよ!逃げる事だけに意識を向けてろ!」

「お、おおう!?」


 騒々しく鳴り出したのは、氷が砕ける澄んだ音色だ。そこに、時折ドコッという鈍い音が混ざってくる。

 ――どうやら氷で覆っていても大して意味は無かったらしい。

 視覚情報以外で、こちらを捕捉して確認し、追って来ているようだ。


「――ったく、これだから面倒なんだよ、無機物は!」


 悪態を吐きつつも身体能力を強化して駆けて行く。

 スライムで岩とか石を主食にしていて凍り難いのも苦手だが、それよりもでかくて完全に無機物であるゴーレムはもっと苦手だ。

 そのゴーレムが後ろから追いかけて来ているのを否応なく感じ取って逃げるしかない現状。

 背後では人の話を聞かない『アホ』が無駄に火魔法を使ったのか、一瞬だけ明るくなった。


「おい、こら!魔力の無駄遣いすんなあああ!」

「そう言ってもどうしようもないだろこれえええ!」


 共に叫びながら進むも、二体目もまたこちらに向けて飛び降りて来ようとしているのを見て、慌てて氷を強化する為に魔術を放つ。


「【凍結】!」


 一瞬にして二倍どころか三倍ちかい厚みになったが、代わりに通路の中がめっきり気温が下がって冷え込んでくる。

 これに、


「うへぇ!?更に寒くなった!?」


 後ろに続く『アホ』から非難の声が上がって来た。

 振り返る暇も無いままに、息の合間に言葉を投げ付ける。


「文句を言うなよ!押しつぶされるよりは、まだマシだろうが!」

「そうだけどよ!?もう少しなんかやりようはあるんじゃねぇの!?」

「あるなら最初に言え!」


 幸いながらも、脚力を強化すれば追いつかれるという事は無いようだ。

 ただ、三体目は問題だった。

 先の二体は同じ外見で、同じ大きさで、同じ攻撃を行なってきていたんだが、とりあえず今までは動き回る事の無かったゴーレムなので、基本的には待機型なのだ思えるんだが、こっちは――、


「降ってくるんじゃなくて待ち伏せかよ!?」


 元から動き回っていたタイプだ。加えて、先の二体よりも小柄で、動きが若干速い。

 現在は氷の上に既に待機していて、攻撃する瞬間を狙っているところなのだろう。

 そこを通ろうとしているので、このまま突っ切るわけにもいかなかった。


「くっそ!【凍結!】!」


 水魔法で一気に覆ってからの、氷漬けにしてやる。

 しかし、悲しいかな。相手が無機物だと、全くダメージにはならないのが氷属性の特徴だ。

 せいぜいが、動きが緩慢になるだけで終わってしまい、俺は絶叫する。


「突っ走れえええええ!」

「うおおおおおおおお!」


 後ろからすぐに雄叫びが聞こえて来たが、途中にあった通路へと何とか駆け込む。

 入った後は急ブレーキをかけて、すぐに縄を手繰り寄せてその先の『アホ』を引き寄せるようにし、反動を利用すると場所を入れ替えた。

 そうしてから、


「【凍結】!」


 水魔法で一気に入り口までを水没させ、凍らせてしまう。

 直後に響く音と緊迫感に焦りつつも【空間庫】の中からシャベルを取り出して『アホ』へと放り投げた。


「この先の土砂をお前は掻き出せ!人一人分が通れるだけの余裕があれば良い!」


 これに、


「お前は?お前はどうすんだ!?」


 同じく焦った声で『アホ』が聞いてくる。

 それを片手で押し出しながらも口を開いた。


「出来るだけ時間を稼ぐ!――だから早く行け!」

「――っ。」


 どうにも削られているのが氷だけじゃない気がする。

 氷ならガリガリとかじゃないか?なんでゴリゴリ音がしてるんだよ!?


(どう考えてもこれ、壁も削ってるよな!?)


 天井に貼り付いてたところからまさかとは思っていたが、どうやら足の部分は鋭くなっているらしい。

 そこだけ、岩とかじゃなくて金属なのかもしれないが、どのみち最悪な事だ。


(ああ、もう、何でこうも面倒事ばっかりが起こるんだよ!)


 しかも、ガチで生命の危険を感じる音色が響いている。

 近付いてくるその音に向けて、水魔法で先の通路を満たしつつも、魔力を練り上げていく。

 何せ通路はそれなりに広くて長かったからな。そこを水没させた後に凍らせようと思ったら、それなりに魔力が必要だし、ついでに凍らせる予定のゴーレム共も動けないくらいの圧は掛けておきたい。

 その為の作業をしていると、


「くそっ、分かった!無茶して死ぬんじゃ無ぇぞ!」


 思ったよりもまともな返事が返ってきて、軽口を返していた。


「そう思うなら大人しく護衛されてろよ、この『アホード』が!」


 アルフォード改めアホードと内心では呼んでいたが、もう直接言ってやりたいくらいには最悪な状況だ。

 何せこの状況をその『アホ』こと『アホード』が生み出したんだからな。それも「街道を進みたくない」なんて戯言を抜かしたせいで、だ。

 更にはその後の鬼ごっこで、古代遺跡へと落っこちたのである。本当に迷惑以外の何ものでもないだろう。


(――護衛対象がやらかした事で死ぬとか、絶っっっ対回避してやるうううう!)


 内心で絶叫しつつも、練り上げた魔術を解き放つ。

 これでもしも死んだら、元凶の『アホード』の枕元に立ってやろうと、この時密かに決意した俺だった。


 赤毛は攻撃魔法を唱えた!

 ゴーレムへダメージが通らない!

 主人公は逃げ出した!


 ゲーム風だと多分こんな感じ。

 落ちた先がどういう古代遺跡なのかについては、次話の閑話にて出てきます。多分、なんとなーくで察してる人もいそう。


 2018/12/28 加筆修正を加えました。なんか微妙だからまた修正加えると思います。流れは変わらないけども。


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