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151 その錬金術師と飼育~養蜂編~

 ○○編は本筋には基本、影響しません。

 この為、本筋だけを追いたい方は飛ばしていただいて構いませんが、逆に生産を目当てに当作品へ来られた方には入手経路等で混乱する可能性がありますのであしからず。


 雀蜂ススメバチの多くが蜜蜂ミツバチを襲う事で知られているが、後者の蜜蜂には種類があるのをご存知だろうか。

 大抵、外来種に当たる西洋蜜蜂の多くが養蜂に使われるんだが、こいつらは雀蜂への対抗手段が無く、狙われると大抵巣ごと壊滅的な被害を受けやすい。

 かといって東洋蜜蜂トウヨウミツバチの類では雀蜂へ対抗は出来ても、今度は蜂蜜そのものが余り採れないという難点がある。


 つまりはどちらを養蜂に選ぶとしても、良し悪しがあるという事だ。


 蜜蜂は一度針を刺すと、内蔵が抜け落ちてしまって蜂自身が死に至るという難点もある上に、刺された対象に他の蜂が敵と見なして次々に襲いかかるなんて面倒もあるしな。

 はっきり言ってしまえば『飼う』のには向いていないと言える益虫だろう。

 それでも試行錯誤を繰り返した先人達のおかげで、彼らを極力刺激せずに、また守りながら数を増やして蜜を採取する手段は考案されたんだが、それでも市場に出回る数は少なかった。


「大体、準備が多過ぎるんだよな。蜂任せなところもあるし、難し過ぎるっての。」


 準備したのには防護服は勿論として、手袋、長靴、フードといっぱいだ。更には蜂が住み着く為の巣箱の作成と設置に、花畑の確保ととにかくやる事が目白押しだった。

 幸いながらも巣箱へは蜜蜂だと思われる蜂がもう出入りをし始めている。まだ遠目に見た限りだったが、おそらくは東洋蜜蜂だろう。西洋蜜蜂では雀蜂が住み着いた森の中では生き残れないはずだ。


「出来れば、このまま住み着いてもらって、再来年の春くらいには採取出来るようにしたいなぁ。」


 その為にはなるべく危険を排除しておかないとならないだろう。

 特に、雀蜂は人間にとっても危険が大きい。

 増えられても困るので、片端から駆除してしまいたかった。


「まずは、蜂を探すところから始めないとか。」


 雀蜂は蜂の中でも比較的大型の種が多いので、見つけやすいのが助かる。

 ただ、攻撃的な性質を持っているので、人間でも対処が困難な害虫だから注意が必要だ。

 何せ致死性の毒を持っている事が多いからな。巣を作る場所も軒の下とかで、人間の生活圏にも現れやすい為に危険度も高い。

 何よりも一度住み着かれると、家を齧って耐久性を損ねたりもするから、見つけ次第駆除するのが大抵は決まりだった。


「おう、飛んでる飛んでる。」


 そうして家を出て森を数分歩いただけで、早速一匹を見つけた。


「こっちに来いよ――【微風】。」


 風魔術で引き寄せてピンセットで地面に押さえつけ、胴体に藁半紙で作った紙縒こよりを取り付けて離す。

 これにビビったのか、紙縒を着けられたままで雀蜂はフラフラしながらも飛んで行った。


「よし。」


 それを追いかけ回して、巣まで案内させる。紙縒は森の中でより目立つように着けた印だ。目印になる。

 それを追って行くと、雀蜂の巣はリルクルが倒木させた一本の朽木の中へ出来ていたらしい。

 穴が空いた所から、何匹かの雀蜂が出入りを行なっていた。


「まずはここからだな――。」


 巣の殲滅方法は色々とあるが、別に原始的な方法を試す必要は無い。

 虫等の小さな生き物なら、氷魔術で一発だ。

 この為に、


「【凍結】。」


 唱えたこの魔術で、倒木ごと丸ごと巣を凍らせ駆除を終える。

 その内、外に出ている雀蜂達が戻って来るだろうが、そちらは放置だ。

 どうせ女王蜂以外は産卵しても雄しか産まないしな。対処するにしても時間が掛かり過ぎるし、それよりは他の巣を殲滅して回った方が良い。

 そうして、潰して回る事数時間。


「――今日はこのくらいで良いか。」


 大分陽が傾いて来たところで作業を止めた。

 雀蜂の移動範囲は大体2km。それを考えれば、少なくとも分峰ぶんほうが終わった後にまた潰せば、しばらくは安全だろう。

 どうせ外からまた入り込んでくるのだから、冬になったら家の周囲だけを中心に潰しておけば良いはずだ。


「こっちの蜂はどうかな?」


 そうして、蜂は蜂でも、益虫である蜜蜂の方を家の近くまで戻ってから、そっと覗いて確認してみる。

 巣箱は台の上へ重箱を重ねてあるが、天辺は屋根の状態にして風雨を防いだ為にそれなりの高さだ。

 その屋根を外してから、上から静かに中を覗き込む。

 中には、既に住み着いたらしい蜜蜂達で溢れ返っていた。


「種類はやっぱり東洋蜜蜂か――順調そうだな。」


 一際大きい個体が女王蜂だろう。その周囲を群れるようにして、働き蜂である少し小型の雌蜂達が忙しなく蠢いている。

 見た感じ、巣の形成が始まっているようなので、このまま放置して大丈夫そうだ。


「よし、これで蜂蜜の入手も出来るようになるな。」


 後はこの蜜蜂を大切にしておけば、多分大丈夫なはずだ。

 屋根をそっと戻しつつも、再来年の楽しみを心待ちにする俺。

 だが、それよりもリルクルが心待ちにしてしまい、何度も屋根の開け閉めをする為に騒動へと発展したのは、後日の事である。

 2018/12/23 加筆修正を加えました。


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