133 閑話 その錬金術師と魔物の変異種
※グロ注意。
人型のスライム(?)視点です。
飛ばしても本筋に影響は無い為、グロが苦手な方は飛ばして下さい。
いっぱいなかまがいたの。
みんなで、ごはんみつけて、たべて、ふえて、いっぱい、いっぱいいたの。
――でも、きづいたら、みんな、いなくなっちゃったんだ。
どこにいったのかな?
なんでいないのかな?
さがしても、さがしても、だれもみつからない。
おはなが、すきだったこも、
おみずが、すきだったこも、
うごくものなら、なんでも、すきだったこも、
あかいみずをながすのが、とくに、すきだったこも、
みんな、みんな、いないんだ。
さがして、さがして、ずっとさがしたけど。
みつからなのは、なんでかなぁ?
「――なんだ、スライムか。」
さがしていたら、あかいみずをながすの、みつけたよ。
「ゴブリンと同じくらいのやつだっけ?」
でも、それがすきだったこは、ここにはいないね?
「これだけ小さかったら、俺でも倒せるかな――?」
いないから、もっていったら、よろこぶかな?
どうかな?
ちがうかな?
まよっていたら、なにかが、すごくはやくおちてきたよ。
それがあたって。
゛ふたつになっちゃったよ。”
゛おもしろいね、おもしろいね。”
「げっ――剣が溶けた。」
゛ひとつだったのに、ふたつになったよ?”
゛すごいね、ふたつなのに、ひとつのときみたいに、かんがえられるよ。”
゛でも、べつべつで、うごけるよ。”
゛すごいね、すごいね。”
「あー、埋めるとかするべきだったのかなぁ。」
゛あかいみずをながすの、もっていくのに、けってい、だね。”
゛ふたつに、なったもんね、ひとつのときよりも、いろいろなこと、できるよね。”
゛だから――もっていこう。”
゛そうしたら、きっと、あかいみずながすのが、すきなこ、みつけられるもん。”
゛いいね、いいよね、そうしよう、そうしちゃおう。”
゛だから――。”
「ぐ――え、ぇ。」
゛――あかいみずながすの、いっしょにくるの。”
゛にげちゃだめなの、いっしょにくるの。”
゛もっと、もっと、ほかにも、もっていくの。”
゛おはなも、おみずも、もっていくの。”
゛いっぱい、いっぱいあれば、みんながきっとみつかるの。”
゛みつけたら、またいっしょにあそぶの。”
゛それまで、いっぱいもっていくの。”
゛ふたつになったからね、もてるものもふえたんだよ!”
゛――あれ?おいしいね?”
゛もっていくつもりが、たべちゃった。”
゛またあつめなきゃだね。”
゛おはなも、おみずも、またあつめなきゃだね。”
゛――あれ?”
゛また、食べちゃった。”
゛うまくいかないね。どうしようかな?”
゛それよりも、みんなをさがそうかな?”
゛――でも、みつからないんだよね。”
゛みんな、どこにいっちゃったのかな?”
゛さびしい、さびしい、さびしいよ――。”
゛ねぇ、さびしいさびしいさびしいさびしいさびしいさびしいさびしいさびしいさびしいさびしいさびしいさびしいさびしいさびしいさびしいさびしいさびしいさびしいさびしい――。”
゛……。”
゛――あの、いっぱいいしがつみあがってるなかは、まださがしてないよね?”
゛あそこにいるのかな?”
゛みんな、あそこにいるのかな?”
゛でも、はいれるところがないね。”
゛のぼっちゃおうか。”
゛きのぼりは、とくいだもん。”
゛はっぱのふり、とくいだったからね。きのはっぱのふりをよくしてたから、のぼるのはとくいになったんだよ。”
゛このくらい、へっちゃら、へっちゃら。”
゛うーんとのばして、びよーんってのぼるの。”
゛ほら、のぼれた。”
゛――あれ?”
゛ここには、あかいみずながすのが、たくさんだね?”
゛あかいみずながすのがすきだったこは、ここにいるのかな?”
゛……。”
゛うん、きっとそうだよ。”
゛あかいみずながすのが、すきなこだったもんね。”
゛ここであかいみずながすのいっぱいみつけて、ここでくらすことにしたんだね?”
゛まっててね、いまもっていくから。”
゛ここにいるんだもんね?”
゛もう、かくれんぼはあきたよ、ほかのあそびをしようよ。”
゛おにはあきたからヤダ。”
゛つぎは、あかいみずをながすのがすきなこが、おにになるんだからね?”
゛――でも、そのまえに。”
゛ぼくもあかいみずをながすの、たべちゃうんだからね?”
「――ヒッ!?」
゛おいしいよね、あかいみずをながすの。”
゛もっとたべるよ。”
゛たくさん食べるよ。”
゛赤い水を流すのが好きな子には、残してあげないんだから。”
゛そうしたら隠れんぼの意味、無くなっちゃうでしょ?”
゛どこにいるのかな?”
゛どこに隠れてるのかな?”
゛探すよ、探すしだすよ。”
゛それで――見つけ出してやるんだから。”
「ぎギュぇ。」
゛でも、赤い水を流すの美味しいね、止まらないね。”
゛いくらでも食べれちゃいそう。”
「――え?」
゛あ、あそこにもまだいるよ?”
゛あっちはもっと美味しそうだね。”
゛頂戴、頂戴。”
゛そのご飯、頂戴。”
「な!?【凍結】!」
゛――!?”
゛何これ?ジンジンするよ……?”
゛痛いよ、冷たいよ、硬いよ。”
゛何これ?”
「何だ、コイツ!?」
゛ご飯も気になるけど。”
゛こっちも気になるね?”
゛変だね、変だね?”
゛冷たくて動かないよ?”
゛固まってて動けないよ?”
゛ジンジンとしてて、痛くて痛くてたまらないよ。”
゛どうして?どうして?どうして?”
゛あ、ご飯――。”
「【凍結】しろよ!」
゛――ジンジン増した!ジンジン痛い!ジンジン怖い!”
゛何これ何これ何これ何これ!?”
゛動けない、動けない、動けないぃいいいい!”
「ピ、ぎぃ、ゃあっ。」
「さっさと死ね!【凍結】!」
゛ああアアア!もっとジンジンするようになった!”
゛何でジンジンするの!?何で動けないの!?何で――赤い水を流すの、食べるのを邪魔されるの!?
゛痛い、くやしい、食べたい、動きたい、欲しい、冷たい――”
゛ねぇ、そのご飯、頂戴ってばあああああああ!”
◇
「――ィイイイイイイイイイイイイイイイイ!」
「何なんだよ、コイツは!?」
狭い地下室。
所狭しと並ぶ薬品に、危険物取り扱い注意の文字が大きくペイントされた巨大な缶が置かれ、袋小路となった――そのはずの場所で。
思ってもいなかった反撃を喰らい、凍りつく事となった異形が、その活動を停止していた。
絶命した異形の姿形は、人に似ているものの、最早それとは違う『何か』だろう。
頭部は人間を精巧に模しており、大きく目を見開いている。
必死の形相を浮かべるのは、果たして異形の存在自身のものだったのか、それとも犠牲者となった者の最期の表情だったのか――何にしろ、見る者全てを凍りつかせる程の表情を浮かべており、その場で凍りついて固まってしまっていた。
その手には指先が無く、ただ真っ直ぐと伸ばされた状態で触手となり、最早人の原型すら腕から先は留めていない。
胸から先はグズグズに溶けきっており、肌色と赤い色が混ざり合い溶け合うかのようにして、霜越しに透けて見えていた。
見るからに異様。
異常な姿である『それ』は、犠牲者の血肉の破片を腹に抱えている。
ところどころ浮かぶ白いものは、骨だろうか。
まるで、たくさん生えた蛸のような触手の群れが、足代わりのようにしてその身を支えていて、ぎっしりと階段の上へと這っていた。
近付いて見てみれば、まるで衣服のように纏うかのようにして、たくさんの木の葉を浮かべているのが分かった事だろう。
人を擬態し、しかし、冒涜なまでの姿を晒す新種。
それは、見る者の息を詰まらせる程には凄惨極まりない。
だが、それよりも犠牲となった者の姿の方が、遥かに凄惨だった。
中途半端な姿で吐き出された遺体の方は、損傷は激しくて。
――その身の半分を削り取られて、皮を剥ぎ取られた上、紅い血溜まりの中に沈んでいる。
「うううえええっ。」
到底、人とは呼べない、悍ましい姿形となったその遺体を目にし、生理的な嫌悪感から部屋の片隅で吐く人物。
かろうじて、犠牲になるのを避けられた彼だが、まだ知らない。
――冒涜的なその姿が、まだ序章である事を。
スライムって、日本製のゲームだと大体雑魚扱いですが、洋げーだと結構強いんですよね。
無限に増殖するし、物理攻撃は効きにくいし、とにかく硬くてタフだし倒し辛い。しかも、毒持ちのケースもあって出会いたくない敵な事が多いです。
作中のスライムだとピンキリですが、進化していない最初は弱く、かわりに進化するにつれて強さと危険度が跳ね上がるものとして設定しています。
作中のスライムは人間を取り込んでしまってから血の味を覚えてしまい、更には狩りの効率をあげようとして人に擬態するのを覚えてしまったパターン。
放っとけば人の言葉すら口にするくらいには進化を遂げたかもしれない。
尚、ジェリー・マンから更に進化した種となりますが、名称は特に決まってません。




