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110 その錬金術師は明言する

 馬鹿母娘はこれから領主の元で直々に取り調べられる事になったようで、兵士達が引っ張って行った。

 何せ、ちょっと叩いてみたら、余罪がボロボロと出てきたらしいのだ。

 恐喝きょかつ窃盗せっとう売春ばいしゅん、更には殺人もほのめかしていたとかなんとか。


「――売春って、確か許可が降りない場所でやるのは禁止だったっけ?」


 聞いた話から、兵士達が都市に向けて戻る前にそう尋ねてみると、


「そうですね、性風俗はある程度取り締まっておかないと、性病の蔓延まんえんだけでなく、犯罪の温床にもなりますから。」


 兵士達の中でもとりわけ真面目な奴にそう答えられて、俺は少し首を傾げた。


「ふうん?そういうもん?」

「ええ、そういうものです。人攫ひとさらいが多発する原因にもなりますよ。」

「あ、成る程な。」


 おそらくだが、盗賊等の収入源となってしまう可能性を示唆しさしているのだろう。

 あちこちの村や町から若い娘を攫ってきて、風俗嬢として働かせるって方法くらいは、馬鹿でもその内考えつくだろうからな。故に、認可が無い場所と人物の春を売る行為を国は禁じているわけだ。

 この村に居着く前に、他の村でも同様の手口で何人かを破産に追い込んでいたらしく、母娘は兵士達に引きずられるようにして都市へ向けて連れて行かれた。


「うん、引っかかる方も引っかかる方だが、末恐ろしいとはこの事だな――。」


 そんな悪女と呼ぶに相応しい母娘の三人を見送って、俺は彼女達が住んでいた家の中を見渡す。

 ある程度仕分けがされた後だが、どうもメルシー以外の物も盗まれていたらしくて、気付いた村人が人を呼んで――という流れで、あっという間に村人総出での確認作業となってしまった。

 その中で、見覚えがある物を見つけて、俺は手に取って首を傾げる。どっかで見た包みだなぁと思いながら。


「処方薬――?あいつら、薬なんて飲んでたのか?」


 それにしては健康そうだったよなと、おかしいなんて首をひねっていると、


「それ、私のですー!」


 顔を真っ赤にして強奪していった一人の女性が、周囲の注目を集めながらも走り去って行った。


「――なんだったんだ、今の。」


 思わず呆然とする俺。

 見えたのは見覚えのある赤毛と、茶色の瞳。

 そんな彼女へと持ち去られたのは、三角に折り畳まれた紙包み。中身は、薄っすらと透けていて、黄色っぽかった気がする。


「うん?」


 どこかで見たような気がしたが、本来の持ち主に戻されたようなので、まぁ良いだろうと放置する事にした。

 そのまま、周囲を見渡して、湿布なんかも見つけた俺は、そっと溜息を吐き出していた。


「どんだけ盗み働いてたんだよ、あいつら……。」


 メルシーの家にあった救急箱も見つかったし、片端から『何でも』盗んでいたようだ。

 ここまでくるともう、呆れを通り越して変な笑いが浮かんでくる。

 そんな俺の傍では、


「あったー!」

「こっちにもあったー!」

「これ、母ちゃんが残してくれた髪飾りだ!こんなところに!」

「儂のステテコまであるぞい?何でこんなものを盗んでいるんじゃぁ?」

「お、俺のくわが、鍬がっ、こんなところにぃ!」


 といった、歓声やら戸惑いやらが響いてきて、騒々しくなっていく。

 一々何を見つけたか上に掲げて報告する辺り、村人達の間で先に取り決めでもしていたのかと、変な勘ぐりまで頭を過ったくらいには、いっそ異様な光景だった。


「うん、後は任せて良さそうだな――メルシー、そろそろ行こうか。」

「はいっ。」


 そんな中で弟子となったメルシーに声を掛ける。

 当人の持ち物以外は持ち出さないように伝えてあるが、この様子ではほとんど残らないだろう。

 まぁ、それならそれで、あの三人に賠償させる為の期間が長引くだけだ。別にこちらは困らないし、いっそ、死ぬまで働かせておくくらいがいいかもしれないなと思い直す。

 何せ、野に解き放とうものなら、それこそ同じ事を繰り返すだろうからな。その場合は場所を変えて、より悪質になるのは目に見えているので、長引いた方が世の為人の為だろう、きっと。


「じゃぁ、この子はうちで引き取るんで、何かあれば次に来た時にでも言って下さい。多分、一週間くらいしたらまた来ますので。」


 そう伝えると、一斉に声が返ってきた。


「おお、その子をよろしく頼むなぁ。」

「あんたに任せられるなら安心だ。」

「良かった良かった。」

「メルシーちゃん、幸せになるんだよ。」

「子供が出来たらお祝いに駆けつけるからね!」

「おいおい――。」


 一部を除いて、何故か結婚話みたいになってしまっていて、俺は呆れて返していた。


「養子として引き取るのに、その子供に手を出すわけないだろうがっ。」


 この突っ込みに、


「あら、そのくらいなら、将来を期待するんじゃなかったの?」

「さっき、そんな話をチラッとしてたわよね?」

「ねぇ?」


 などと返されてしまって、俺は思わず天を仰いでいた。

 からかってるのか本気なのか、見分けがつかないからこういう女性というのは質が悪いんだ。

 溜息を吐き出しつつも淡々と答える。


「あれはあくまで例え話だろ――こんな小さい子をそういう目で見れる程、俺は若くも節操無しでも無いよ。」


 そう告げると、


「あら、残念。」

「素敵な人に見初められて、ハッピーエンドかと思ったのに。」

「「ねぇ?」」


 これが物語なら、そういう事もあるだろう。それこそ、恋愛小説とかなら、だが。

 しかし、現実はそうじゃない。というか、普通に考えても無理がある。


 ――どこに、十歳も歳が離れた十代前半の子供に手を出す変態が居るっていうんだよ。


 そんな俺と理解が追いついていないのか、横でキョトンとしているメルシーを前にして、クスクスと笑いながらもやり取りをするのは、村の中では幾分若く見える女性達である。

 その近くには小さい子供がくっついていたりするので、おそらくは子持ちの既婚者達の集団なのだろう、きっと。

 そんな彼女達は、女性にありがちな、噂好きのオバちゃんと化しているらしかった。


「そういうのは、十代そこそこの無鉄砲さが抜けきれてない奴がやる事であって、責任ある大人がする事じゃないっての。勘弁してくれ。」


 そう言って両手を上げて降参して見せれば、


「まぁ、別に良いのに。」

「そうよ、ちゃんと責任持って最後まで添い遂げてくれれば、誰も文句は言わないわよ?」

「だから、それは責任ある大人の行動とは違うだろ――。」


 尚もくっつけようとしてか、言葉を重ねられてしまい、俺はげんなりしつつも返した。

 それでもキャッキャッと話に花を咲かせようとする女性陣は、止まらない。


「ぜひ、嫁に迎えるべきよ。」

「そうよ、メルシーなら器量良しなんだから、絶対良いお嫁さんになるわ。」

「まだまだ若いし、それこそ好きな色に染めれるじゃない?」


 そこに、


「ルークさん――お師匠様はモテるから、私みたいな子供は絶対相手にしないと思うよ?みんな。」


 好き勝手に喋る女性達はともかく、止せばいいのに、メルシーが口を挟んでしまった。


「あら。」

「諦めちゃうの?」

「勿体ないわよー?こんな優良物件。」

「おい――。」


 これに、止まらずに彼女は話し続けてしまう。


「都市に行ったらね、凄いんですよ?皆がブワーッって群がってきて、あっという間に囲まれちゃうから。私なんて、横に並ぶのも相応しくないって。何で一緒に居るんだって、怒られちゃうんですから。」

「「え?」」


 固まった女性陣を他所に、俺はメルシーを止めに入る。


「待て待て。あいつらの言う事は鵜呑みにするんじゃない。」

「でも――。」

「そこまでだ、ストーップ!」


 横で立て板に水とばかりに喋りだす様子に、慌てて背後からその口を塞ぐ。

 固まったままで、驚いたように目を丸くした女性達を前に、パチパチと目を瞬かせていた彼女は、気付いているのかいないのか、涙目だった。

 結構グサグサくるような言葉を投げられていたのは俺も知ってるので、自分の方を向かせて、その小さな背中をポンポンと叩いておく。


「少なくとも、横に並ぶのに相応しい相応しく無いって決めるのは、あいつらじゃないだろ?それを決めるのは俺だ。実際に俺がそう言ったならまだしも、あいつらの言葉を鵜呑みにして、勝手に思い込むんじゃないよ。」

「でも――。」

「でもも何も無い。お前は俺の弟子になるって決めたんだろうが。そして俺はそれを受け入れた。横は無理でも、後を着いてきて追い抜くなり並び立つなり努力は出来る。それが、弟子の特権だろうが。違うか?」

「――っ、は、はい。お師匠様っ。」

「分かればよろしい。」


 話から少しずれてはいるが、そもそも恋愛対象として見るには無理があるという話だ。

 メルシーがどういう感情持ってるにしても、今の状態だと気の迷いだとか、憧れだとか、あるいはそれこそ依存や愛情に飢えているだけって可能性もあるしな。下手に恋愛方面に話を持っていくものじゃない。初恋すら未だの可能性が高いのだから、勘違いしかねないだろう。

 そう思って思わず溜息を吐き出すと、


「ごめんなさいねぇ、ちょっと、無神経すぎたわ。」

「良かれと思ったんだけど、そうよね。メルシーにはまだ、早過ぎたわね。」

「もう少し様子を見てからにするべき話だったね。」


 オバちゃん化している女性達が、一部の年上の女性に嗜められて、謝罪の言葉を口にする。

 それに、


「ああ、分かってくれたならいいんだ。」


 俺は息を吐き出しながらも受け入れた。


「ほら、お前も変に思い込むな――周りがどう言おうと、お前は俺の弟子だろ?」

「はい。」


 宥めすかすと、ようやく納得がいったのか、幾分ホッとした様子で呟かれた。

 それに、周囲からやれやれと言わんばかりに揃って溜息を吐かれて、俺はそっと観察する。

 誰も彼もがその顔には気遣いの色が見られて、暖かい環境だなと思う。小さい子ですら、メルシーの所にやって来ては「大丈夫?」「痛いところ無い?」と尋ねているのだ。

 これだけでも、この村の住民の性質が分かるというもの。良い奴らばっかりだと思った。


(やっぱり、この村の人間は、性根は悪く無いみたいだな。)


 最初にメルシーを保護した際、彼女が身に付けていたかさ雪蓑ゆきみの、そして雪靴ゆきぐつは、村の老人達による手作りだった。

 その後も度々(たびたび)夕餉ゆうげに誘ってくれたり、食べ物を手渡してくれていたらしい。

 それで何とか食い繋いでいたようだが、あの馬鹿姉妹に連れ回されるようになってからは、それすらも邪魔をされていたようで、結果的にここまで急激にやせ細ったようだった。


「おし、戻ったら一緒に何か美味い物でも食うか。」

「はい!」


 そんな彼女を気遣って口を開けば、元気よく返事を返してくる。

 幾分自分を取り戻しつつあるのか、その表情は明るい。どうやら、落ち込んでいた気分も浮上したようだ。


「それじゃ、行ってきます!みんなっ。」


 そんなメルシーは、明るく口を開く。

 それに、村の人達が「達者でな」「何時でも戻っておいで」と、暖かな言葉を掛ける中を二人で、森にある自宅目指して歩き出した。


 光源氏計画ではありません。メルシーは純粋な後継者として、魔術師への道に迎え入れられているという話です。


 ここから先は長い上、本筋とは関係無いので、飛ばしちゃって下さい。

 最近思う作者の愚痴ですから、ええ。


 これがなろうにあるハーレム(っぽい)ものなら、それこそ「幼女最高!」になるんでしょうね、きっと。実際、なろうではそういう作品が多いですし、ファンタジーで探すと大量に引っかかります。イラたん。

 本当のファンタジーには恋愛もエロ要素もいりません。それは、別のジャンルになりますから、違うジャンルを混ぜようとしている事になります。故に、ファンタジーが読みたいって人からは嫌われるんだ。←ここ重要。

 ハーレムだって、いちゃいちゃするならそれもう恋愛ですから。性処理の道具として淡々としているなら、それはもう18禁方面になりますし、書く所自体を間違えているし、何してんのって言う。


 これを理解せずに、なろうではハーレム『もどき』を書く人が多い。そして、エタるわ乱立させるわやりたい放題で目に余る。

 なので、そろそろ聞きたいところです。


 一体、エロシーンの無い官能小説とか、どこに需要があるんですかねぇ?


 少なくとも私はいらないですね。だって、エロシーンのないエロゲーみたいなもんですもん。需要と供給にすらあっていないじゃん。ばっかじゃねぇの?と。それで「書籍化~」なんてのたまわれた日には、堪ったものじゃないと思うファンタジー好きの愚痴です。

 読みたくなったら18禁の方に堂々と行きますものー(実際に行ってる)。だって、大人ですし?エロを見たいと思っても、特に制限はありませんからね。

 18歳未満は妄想だけで楽しめるある意味唯一の年齢です。先に知っちゃうと、いろいろと勿体無いですし、異性に幻滅してしまうだけだから、やめとけと言いたいところですね。故に、健全な場所では求めるなよ。

 具体的に言うと、女性器は内蔵にも見えて、人によってはグロっていう注意案件ですよっと。


 そして、ジャンル違いを混ぜて、上手く話を書けるわけがないっていう。

 なろうに多くあるハーレムものって、ファンタジーとエロの二本立てですもの。そりゃ作風まで迷走して当然だわ。纏まらせるにも、難しくて出来なくなって当たり前です。

 そこに更に書いてる人の「見てみて!褒め称えて!」っていう承認欲求混ざってくるので、トリプルカオス。

 最早収拾がつかないって有様の作品が、なろうでは多く溢れているんです。


 ――本当に、どこに需要があるんですかね?これ。


 ちなみに、逆ハーレムものも、この傾向が強まってきています。正直、こっちもそろそろ鬱陶しくなってきたっていう。

 おかげで、本来の意味での貴族王族の義務的なハーレム(寵愛の奪い合いによる嫉妬合戦。大奥みたいなものと思うと良い)ものだけでなく、18禁ネタの奴隷ハーレムもどき(実際にはエロシーンの無い堪能小説もどき)も嫌いになりました。前は後者は違ってたのになぁ……。

 逆ハーレムも同様です。だって、同じような状況になってきてますからね。男も女も、結局のところは考えてるのは一緒って事なんだろう、きっと。


 まぁ、男女という性別以前に、同じ人間なわけですから、動物の本能でもある性欲が似通ってしまうのは、ある意味当然の流れかもしれません。


 その上で、言いたいのは一つ。


 承認欲求が強くて畑違いに安易に手を出すような作者は全員筆を折れ!


 ファンタジー好きからすると、最早冒涜されてる気分でムカつくっていうね!

 いっそのこと、まとめてハーレムって分野で隔離されてしまいやがれ!

 以上、愚痴でした。ちょっとすっきりー。


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