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第四話 彼らは魔獣を狩る その1

 短めですし、正直説明ばかりですが一応、切りのいい形にできたので投稿します。

 せめて、七話までは早めに書き上げたいところです。


 結婚を決めてから一夜経ち、僕達は一先ずは冒険者ギルドの方にその報告に行くことにした。


 僕達レモングラス兄妹の両親は既にいないが、プリムラとグラウカさんの母親は生きている。

 本来、こういう大切なことはまず初めに家族に対して連絡なり相談なりするべきであり、そんな二人よりも先にギルドの方に結婚を報告するのは引け目があるが、致し方ない事だろう。


 僕達が四人で組んでいる冒険者パーティー『青い流星』は、別名を『英雄級』とも呼ばれる『特級』の階級に存在している。


 冒険者ギルドの階級と仕組みを説明すると、まず言わずもがな、一番上が『特級』。

 その下が、『高級』で、その下が『大級』。特級、高級、大級までの三つの階級の冒険者を『英雄級』と総称しており、このあたりの人間が主に冒険者として大成している階級になる。

 次に、『上級』・『中級』・『下級』の三つの階級が存在しており、こちらは『達人級』と呼ばれる。

 最後に、『低級』・『少級』・『初級』・『仮級』の四つの階級で、こちらは『闘士級』と呼ばれる。


 別に『特級冒険者』だからと言って、ごく一握りの存在であるとか、何百年に一人の逸材しかいない。とか、そう言う事は無い。


 大体数で把握すれば、冒険者の総数は概算になるが、ざっと五万人から六万人ほどで、その内でも『特級』と呼ばれるのは、二百から三百組ほどとなる。

 ざっと三百人から二百人に一人の倍率でしか存在していない計算だ。

 これを多いとみるか少ないとみるかは時と場合、そして人と場所を選ぶと思う。


 勿論、才能や能力の有無は存在するが、だからと言って特級冒険者に成り上がった人間が、全員そんな立志伝の大人物みたいな伝説的な能力を持った人ばかりという訳では無い。

 寧ろ、特級冒険者になる人は、主にギルドからの依頼の成功率を元にして、そこに現在の戦闘能力を始めとする実力に、魔術や神働術、其の他の能力を加味した能力。それを総合した評価によって、階級を少しづつ挙げていった人間が多い。


 とは言え、『英雄級』という別名は伊達ではなく、『魔王軍』との戦いで名を上げる者も多く、吟遊詩人の歌となって数十年にもわたってその武勲を愛されるものもいる。

 また、それ以外にもこの階級に存在する冒険者は、国からの依頼を受けて『魔王軍』との戦いで兵力の激減した国の治安維持を担当する者も多く、その際の報酬は破格であり、中には貴族位を受けて王侯貴族の女性と結ばれるものもいる。


 その為、「英雄級」は冒険者の夢や憧れであると同時に、国力の象徴でもあり、英雄級の冒険者の数が多いということは、それだけ戦争での働きや王都の治安維持が秀でているということの証明でもある。


 ただ、数百人規模で特級冒険者がいるということは、その質や能力、人柄だってピンからキリまで様々だ。


 例えば、僕なんかは魔術や武術の才能は無く、神様からの加護や異能と呼ばれる生まれながらの特殊能力なども持っていない人間だが、その分、情報収集や魔導具に魔導水薬ポーションの製作などでチームに貢献していると思う。


 僕自身の性格については、何分客観的な反応ができないので評価は差し控えるが、特級冒険者の中には、その地位や立場を利用して悪事や余り褒められない行動をとる者も多い。


 ただ、僕自身がそう言った行動をとったことは無いし、僕の知り得る限りでは僕のパーティーメンバーがそう言った行動を取ったり、そう言う形で怒りや恨みを買ったことは無い。

 とは言え、幾つか例外もあるし、絶対とは言えないけど。


 ともあれ、内実はともかくとして、それだけの評価を受けている冒険者が急に引退するとなると、冒険者を管理している組織である冒険者ギルドにも、更には、ギルドと協力関係にある国軍や騎士団の人間にも迷惑をかけることになるので、予め引退の話は通しておいてもらって、それから混乱を起こさない様にゆっくりとこの仕事を辞めるつもりだ。



★✰★✰★✰★✰


 

 一日も立たないうちに再び冒険者ギルドに戻ると、喧騒が一斉に耳に入ると同時に、僕達を睨みつける視線が突き刺さる。


 魔導水薬ポーション納品の時とは違い、表口から入った影響もあるのだろうが、今回は明らかに三人もの美少女を引き連れた冒険者パーティーであることが原因だろう。


 本当に田舎の方にある冒険者ギルドでは、宿屋や酒場を兼業することで生計を立てるギルドもあるらしいが、流石にある程度の大きさを持つ街では、冒険者ギルドは完全に冒険者に持ち込まれる依頼を冒険者に仲介するだけで経営を立てられる。


 それ自体は良い事であるのだが、兼業式のギルドだと良くも悪くもいろんな人間が出入りするので特定の人間が注目を集めることは少ないのだが、専業式のギルドだと僕の様に、悪い意味で目立つ人間が入ると一気に視線が突き刺さるようになるので、そこは少し困るところだ。


 ギルドの内部には、屈強な体格や歴戦の風格を漂わせる大勢の戦士たちがそこここに固まって依頼の内容やこれからの予定について話し合っていたが、僕達が入った途端にそれらが一斉にこちらを向いて、親の仇のような眼つきをするのだから困る。


 ひそひそ話には、「あいつが調子に乗っている小僧だ」とか、「永久雑用の癖に、特級かよ」と言った、余りいい感情の籠った言葉が無責任に放り投げられる。

 正直、僕のこと等どうでもいいのだけど。中には、アルバ達に対して、「夜の技に負けた」だの、「ガキみたいな顔をしてやり手」何だろうとか、あからさまに彼女たちを貶める言葉まで聞こえてくる。

 そう言う言葉の方が、僕としては心に突き刺さる。僕自身に対する罵倒よりも、家族への侮辱は遥かに僕の胸に突き刺さって、抉る様な痛みを心に与える。


 そんな僕達に対する誹謗中傷に対して、アルバとプリムラは周囲の冒険者を睨みつけることで黙らせ、グラウカさんは周囲の視線と言葉に委縮する僕に慰めの言葉を懸ける。


「大丈夫。安心して、私たちははそんなこと思っていませんから。それに、何よりもシトラスくんの頑張りも働きも、私達が一番知っていますから」


「…………大丈夫です。分かってますから。こういう事は気にした方が負けだって言うのは理解してますから」


 

 僕は、僕の事を慮ってくれるグラウカさんに言葉を返しながらも、そんな彼女たちを守ることができない僕自身に対して、怒りでこぶしを握り締める。


 いつもこうだ。

 冒険者ギルドに入ると、いつもこういう視線や罵倒が僕に叩きつけられ、その度に僕は彼女たちの後ろで守られることしかできない。

 僕には僕にしかできないことがある。その僕にしかできないことで彼女たちを守り、助けている。だから、気にすることは無い。

 頭では分かっているが、それでも自分の中に在る何かが、そんな自分自身を強く否定していて、それでも僕はその何かを口にすることができない。


 冒険者ギルドの受付嬢さんのアリアさんに僕達は、ギルドマスターのグラントさんに伝えることがあるということを告げると、少しの間席を外した後に、ギルドマスターの元に連れて行ってくれる。






 

 

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