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思い出食堂  作者: イソジン
4/4

【佐々木】の場合

久しぶりに更新しました

9月2日。今日は二学期の始まりの日だ。

教職について3年。やっと担任としてクラスを任され、わからないながらも一学期を終えた。

生徒達とも年が近いおかげかすぐに打ち込むこともでき、中には尊敬してくれる子までできた。


しかし朝、二学期の始まった学校に到着して最初に飛び込んできた知らせはクラスの原さんが亡くなったと言うものだった。


彼女は飛び降りた。一学期の終わりには笑っていたのに。

彼女は尊敬してくれる生徒の一人だった。クラスでは学級代表を努め生徒達の中でも中心にいた。

あまりの衝撃に涙も声もでなかった。


すぐに行われた職員会議では悲しむ暇もなくすぐに今日は閉校にしようと決まりクラスを持っているものは教室に伝えに行くことになった。

教室に入るのはとても勇気が必要だったがどうにか中にはいると重い空気が流れていた。


「…えー。今日は閉校になりましたのですぐに下校してくだ…さい。それとマスコミも来てますので取材は受けないようにしてください。SNSで書き込むのも…」

どうにか重たい口を動かし伝える。

教室の後ろの原さんが座っていた席の近くから泣き声も聞こえる。

重い雰囲気の中、前から4番目の席に座っていて学級代表をやっている水谷くんが手を挙げた。

「先生。俺達も事情聴取とかってされるんでしょうか。」

「…今はまだなんにもわからない」

「…そうですか。」


私は場の雰囲気に耐えられなくなり教室を出て職員室に向かった。

30分後には下校が完了したようで職員室に先生がまた集められた。

悲しんでいる人がいる一方ほとんどは「でどうすんだ?いじめだったら」

「知らなかった。把握できなかったとしかいえないよな」

「佐々木先生。なんか知りませんか?」

と自分達には関係ない知らないといった様子だった。

「いえ…何も。気づいてあげられなかった…」

「それなら良いんです。とりあえずいじめは無かったって報告しますね。それで良いんですね?佐々木先生」

校長はそういう

「しかし…しっかり調査しないと…」

「そうですか。じゃそれは佐々木先生がお願いしますね。ではこれで、私は呼び出されたので席を外します」

彼らの中で彼女の死はあくまで他人事なのだ。

問い合わせの電話に対応しながらアンケートを作成。仕事を終え家路についたのは夜の12時だった。

「こんなときでもお腹は空くんだな…」

朝からなんも食べていなかったせいかずっとお腹がなっている。

コンビニでご飯を買おうと道を曲がるとそこには見慣れない定食屋さんがたっていた。

「思い出食堂?あったっけこんなの?」

不思議な出で立ちだが美味しそうな匂いにつられいつまにか店のなかに入っていた。

「いらっしゃいませ。1名様ですね?お好きに座ってください」

細身のおじいさんが指をたてながら聞いてくる。

「…あ、はい。」

薄暗い店内に客は自分一人だった。12時だし当たり前かもしれない。

「メニューはこれだけですか?」

「はい。それしか作っていません。」

「じゃあこれで」

「少々お持ちくださいませ…」


少しすると温かな匂いが漂い始めおじいさんが料理を持ってくる

「どうぞ」

「ありがとうございます。」

見たことある気がする料理だ。しかし、どこで見たか思い出せない。

「思い出せないですか?まぁそうでしょうね。彼女がだしたSOSに気づかず相談にも応じなかったんですから…それより冷める前に早く食べてください」

一口食べると記憶が蘇ってくる。

「え?あ、これ給食で食べたやつだ…確かあの日…」

おじいさんの言葉と料理の味である日を思い出した。


その日は確か一学期の終業式の2日前だった。

原さんに放課後話があるので教室に残ってくれないかと言われたのだった。

しかし、校長に呼び出され呼び出されたのも忘れてそのまま行かなかったのだった。

「完全に忘れてた…もしかしてあのとき私が忘れずに行っていたら…」

「彼女は生きていたと思いますか?」

「だって…」

「それは思い上がりですよ。きっとあなたの力じゃどうにもできなかったでしょう」

「何であなたはそんなこと知っているんですか!」

「フフ…なぜでしょうね。それよりやるべきことがあるのでは?」

「やるべきことって…原さんはもう死んで…」

「彼女の机を見に行ってみるといいでしょう。彼女が何で悩んでいたかわかると思いますよ。」

「机…」

「ほら早く。」


私は学校まで走った。門が閉まっていたが無理矢理入り教室まで急いだ。


教室に入り原さんの机を覗くとそこには日記が入っていた。今年のはじめからつけていたようだ

最初は普通の学校であったことを書いていた。授業がこうだったとか、友達とこんな話をしたとか。しかし6月になると内容が少しずつ変わってきた。

私のことを書くことが多くなったのだ。

佐々木先生と話した。佐々木先生が笑っていた。佐々木先生がほめてくれた。と至るところに私が出てくるのだ。さながら恋をしたかのように…

きっと書き始めた頃は無意識だったのだろうが自分でもそれに気づいたのだろう。苦悩が見えるようになっていた。

先生が好きなのかも知れない。女の人が好きなのかも知れない。親にも相談できない。と…

「誰にも相談できないで悩んでいたんだ…」

確かそれぐらいの時だ。生徒の前で自分の恋の話をしたのを思い出した。

彼女は自分の性のことに悩んでいながら答えもでないうちに失恋をしてしまったことに気づく。


そして終業式の3日前


明日先生に相談してみようと思う。恋は叶わなかったけど先生なら理解してくれるかもしれない


2日前


先生が来てくれなかった。忙しいのかな。親に相談してみよう。



そこから何日も記述はなく始業式の朝にかいたであろう弱々しい文字が一番最後のページに書いてあった。


親に相談してみたが理解してもらえなかったこと。病気扱いされたこと。自分でもどうしようもなくていっぱいいっぱいになったことそして絶望してしまったことがわかる遺書のようになっていた。


「ごめんなさい…私のせいだ…」



よろよろと学校をあとにする3時になっていた。さっきの日記は持ったままだ。

明日これを原さんの親に渡したあと私は先生をやめようと思った




性の話を少し入れたので苦情が出たら消しますね。

佐々木先生は【大谷】の場合に出てきた佐々木です。

あの会社に入る前に先生をしていました。

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