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思い出食堂  作者: イソジン
2/4

【大谷】の場合

第1話ででた武内の上司のパワハラ部長【大谷】の話です。

「こんな企画書で俺が判子を押すと思うのか?やり直しだ。わかったらさっさと行け」

使えない新人を怒鳴る。

「しかし部長…この前部長がこうしろって言ったんじゃ…」

「うるさいな。のろまが。早くやり直せっていってんだろ?今日中だからな?終わらなかったら残業サービスな」

「…はい。」

最近の若いもんはだめだ。どいつもこいつも使えない。出来が悪いしすぐやめる。この前だって誰だか覚えていないが能無しがやめた。


外で18時の鐘がなる。

「あ、時間だな。俺は帰るぞ。しっかり仕事しろよ」

パソコンを閉じ荷物をしまう。

すると一人の女が手に紙をもって走ってくる。

「あの、部長…これ目を通してもらえないでしょうか…」

「時間だっていってるだろ?他のやつに見てもらえよ。じゃあな」

「あ…」

確か佐々木って言ったかな?顔はかわいいがこいつもどんくさくて使い物にならない


会社をでて会社の経費でタクシーに乗る。

「お客さん。どこまで?」

「あー、この先の交差点を右に曲がった所にある居酒屋に下ろしてくれ」

「わかりました」

歩きでも15分ぐらいの距離だが部長の俺が歩いていいわけがない。会社の経費でタクシーに乗るのも当たり前だ。


「ここで大丈夫ですか?」

「あ、ここでいいよ。はい金。領収証」

「はい。ありがとうございました。」

2つ返事でよく外も見ないで降りたがどうやら違うお店の前のようだ。まぁ近くではあるからよしとしよう。

「…にしてもこんな店あったか?思い出食堂??聞いたことないな」

木で出来た外観に赤い看板。いつもの居酒屋に行くのも悪くないがたまには違う店にも入ってみることにした。


「いらっしゃい。お客様は1人ですね?」

「ああ、そうだ。」

「どこでもお座りください。」

「にしても湿気た店だな。あんたが1人でやってんのか?」

「そうでございます。あんまり客は来ないんですよ…フフ」

声のわりには年老いて見える。不自然に感じたが頼むことにした

「おい。メニュー」

「すいません。お客様…この店はメニューは1つしかないんです」

「ふーん。そういう店もあるって聞いたことがあるな。だったらさっさとだせ。」

横柄な態度をとっているが店主はビクともしない。

「かしこまりました…フフ」

そういうとゆっくりと裏に入っていく。



少しすると料理を運んでくる。

「おまちどうさまでした。思い出定食です。」

銀の皿の上にチョコのような黒い食べ物とコップのなかにきいろい水が入っている

「なんだこれは?ふざけてんのか?」

「いいから食べてみてください…」

「美味しくなかったら金払わないからな。どれっ」

「どうです?」

「すごい苦いな…でも。味わったことのある味だ…」

「コップのなかの水も飲んでみてください」

「…。懐かしいな…」

黒い食べ物からは苦さ、飲みものからは泥臭いようなしょっぱいような味がした。

「どうですか?思い出の味でしょう?」

「そうだな…。まだ新人社員だったとき味わった社会の苦さとか辛さとか泥臭さとか…流した汗のしょっぱさとか…そんな味がしたよ」

「最近は美味しい肉と同じ苦さでもビールの苦さしか味わってませんもんねお客様。ですからお客様には料理よりこちらの方が思い出として残っているかなと。」

「なんだろうな…。」

一口食べるごとに目から涙がこぼれ落ちた。



食べ終わる頃にはやることが決まっていた。

「ごちそうさま。いくらだ?」

「お気持ちで大丈夫ですよ。」

「そうか。じゃこれ」

財布に入っていたあるだけの金をだす。

「こんなにいいんですか?」

「ああ、いいんだ。それより俺は早くいかなければいけない。」

店をでて外で待つタクシーに目もくれず走った。


10分ぐらいたっただろうか。汗だくで俺は会社の前にいた。

中に入ると

「部長?帰ったんじゃ…」

「あ…しっかり残業してます…タイムカードももう押したので…」

企画書のやり直しをさせた部下が言う。

俺を見るなり静まり帰り怯えた目をしているみんなに、なぜ今まで気づくことが出来なかったのか。

「お前ら。もういい。帰っていい」

「クビ…ですか…」

佐々木が怯えた声でいう

「違う。後は俺がやっておく。今の時間までの残業もしっかりつけておく。すぐに帰れ」

「…ですが」

「いいんだ…。悪かった…」

「え…?」

「許してくれとは言えない…けど俺も努力するよ。一緒に苦労する。」


結局誰も帰らなかったがしっかりとした指示をだし自分も手伝うことで効率はかなりよくなり9時には仕事が片付いた



信頼なんか元々なかったから取り戻す何てことはないだろう。しかしこれから少しずつ作っていけたらなと思う。

「なぁみんな…その……呑みに行かないか?」

「いきましょう。部長!」




行きつけの居酒屋までの道でさっきのお店を探すがない。あるのは潰れた薬局だった。














彼はこのあと心を入れ替え、部下の信頼を得て行くのですが経費の乱用が会社の上層部で問題になりクビになります。

遅かれ速かれクビでしたが部下にどう思われながら会社を去るかは大きく違う道になりましたね。

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