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ケーキ屋さんのお家拝見!

本当に美人さんの家は店から近かった。

店を出て左に進み、大通りをそれてちょこまかとした道へ入っていくとすぐに赤レンガ造りの箱型の家に着いた。

黄土色のドアとのコントラストでおもちゃのような可愛らしさがある。


中へ入ってみるとすぐ部屋で、もちろん靴を脱ぐことはない。靴のままリビングへずかずかと踏み込むのも慣れた。


「奥にシャワールームがあるの。そこで冷やしてからにしましょう」


バーのようなカウンターキッチンの前を過ぎて、右奥、狭い廊下に入っていく。

二つあるうちの一つの扉を開くとホテルにあるような立派なシャワーが備え付けられていた。


むむ、金持ちだな!


それにしても、服を脱がなくてよろしいので?てか、脱衣場はどこ?


俺を引っ張って服を着たまま入っていくので驚いていると、浴槽の手前で美人さんが俺に向き直ってベルトに手をかけた。




はい?

もしもし??

逆セクハラですか??





俺は当然外させまいとベルトのバックルを奪い返し、握り込む。


「お願い、見せて」


嫌です。

あんたも変態かい。


「ヤケドになっていたらいけないから、冷やしたいの。」


ああなんだ。そういう“見たい”ね。

いやでも、そこにアイザックさんいるし?出来れば同性でお願いしたいなーっていう。


「レイくん、嫌だろうけど、ごめんね」


美人さんはそう言いおいて、なんと無理やりバックルに手をかけ、ズボンを脱がしてしまう。


いやぁぁぁああぁあぁ!

そんな表情かおしないでぇぇええ!


俺は今日なぜ長ズボンを履かされたのだとオレンジさんを呪った。


あらわになった俺の脚に、美人さんは顔を歪めて唇を噛んだ。

俺の貧相な下半身に、欲情こそすれ、顔を顰められるとは思わなかったのでそれなりにショックは大きい。


もう。いいよ。

どうとでもしてくだせぇ。


美人さんは俺の脚に触れるか触れないか、ぎりぎりのところまで手を伸ばして這わせるような動きをしたが、結局拳を握って触れるまでしなかった。


そ、そんな汚い扱いしないで…っ。

俺の心もう粉々だから…っ。

美人さんに貧相な下半身を晒してることだけでもう十分死亡事項だから…っ。


「…しみるだろうけれど、水で洗ってキレイにしようね」


目が笑ってない美人さんがシャワーで俺の脚を流しながら、恐る恐る傷だらけの肌に触れて撫でる。

鞭の痕に触れる時、何故だか美人さんの方が痛がって顔を背けた。

まあそれが、普通の人の感覚だろうな。


さっきの表情が、傷だらけの肌を見たせいだと思い出すのに時差があるなんて、だいぶん俺の感覚は麻痺してきている。

まあサドマリウス様なんて変態さんと一緒に住んでいればそうもなりましょうて。


紅茶のヤケドは、温度が低かったのかなくて、美人さんは良かったわとほっとした表情を見せた。


キレイに洗い流した傷口に薬を塗りたくられて、その上包帯でぐるぐる巻にされてしまった。

ちょっと大げさ過ぎやしないだろうか。

動きづらいし。

ズボンを履き直して……

履き……

直して……


ちょんちょん


「ん?どうしたの?ボタンが閉められないの?どれ、見せてごらん」


なんたる不覚…!

恥ずかしいっ苦笑いしないでそんな微笑ましいもの見る表情かおしないで!


こんな美人さんでも、やっぱり奥さんなようです当たり前だけど。

美人さんの中で、俺の子ども扱いが決定した瞬間だった。

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