下男見習いの食事事情
料理の名前は全てデタラメです。
なんか、料理を想像してそれっぽい音をあてています。
マリウスのペットになってから食事事情は劇的な変化を遂げた。
まず、何と言ってもスープの具材が大きい!
前は…思い出すと泣きそうなので省略。
それから食事に卵料理が出てくる!
重要かつ上質なタンパク源なので、パンと一緒に食べると結構最強のコンビネーションだ。家畜として買っている鶏…?もどきが毎日生んでくれるので買わなくて済むため毎日食卓にあがる。
卵、買うと高いらしい。
それから肉料理が出てくる!
俺は使用人以下のペットなので本来はニンゲンサマと同じものは食べられないのだが、まあ見ての通りニンゲンだし、ということでハムくらいは食べさせて貰っている。
でも三面鳥の香草焼きは食べさせて貰えた。マリウスが苦手なんだそうで。
それから意外なのがサラダ。
そういえば今まで生で野菜を食べたことがない。
マリウスの屋敷の庭の一角に温室があって、そこで年中葉物野菜を栽培しているため生で野菜を食べられる。食べる直前に摘み取ってくるのでとても新鮮だ。
それから魚料理!
高級食材だからほとんどないけれど、手に入るとマリウスが使用人に与えるので俺もおこぼれに与る。マリウスは魚が苦手らしい。
いやあいつほんっと好き嫌い多くない?
これだから食事に困ったことないやつは!
お坊ちゃんめ。
それからなんと、贅沢にもデザートやお菓子まであるのだ!
ま、俺は食べないけどね。
味がわからない俺が食べるのは申し訳ないので、美味しい美味しいと喜んで食べるベリルやオレンジさんに全部あげてしまう。
お菓子はマリウスも好きなようで、お菓子の時間は絶対にとる。
初めのうち、コックのアイザックさん(包丁が足に刺さった時おろおろしていたいい人だ)がくれる食事の半分も入らなかった。
アイザックさんが目の前で俺の食事を観察していたからである。
「へえ、道具を使いこなすのか!」とか「やっぱりヒトのマナーは教えないとだな」とか、色々呟きつつ俺の手が止まると「ん?食べていいんだよ。ごちごちゃごめんね。」と申し訳なさそうに笑うので食べづらいことこの上もない。
緊張で喉を通るものも通らない。
雀の涙ほどしか食べない俺を心配して、素材とか調味料とかを工夫してくれるが、何せ味がわからないので意味が無い。
結局、今まで食べさせて貰っていなかった合成獣くんは胃が小さいという結論に至ったようで、とにかく高タンパク高脂肪の食事を摂らされた。
最近では痩せぎすが華奢に変化して、多少見られるようになった気がする。
髪の毛の色艶も良くなった。
でも、それが気に入らないお人がひとり。
「えー!レイを太らせちゃ駄目!可哀想な感じが薄れちゃう!前はもっと、こう、ぐっとくるボロボロ具合だったのに…」
しょぼん、として俺に目をやったのは誰あろう、サドマリウスさんです。
いやこんなこと言うの他にいないでしょ。
文句を言われたアイザックさんは、目を泳がせながらもなんとか取り繕って、俺の食事を死守してくれた。
「マリウス様、あまりに痩せておりますとある日突然亡くなる、なんてこともありますから。少し細いくらいにはしておりませんと、体には良くありませんし…」
「それがいいのに」
「…いや、あの、保護しておられるという名目で、それはまずいかと。」
「…誰も気にしないでしょ」
「マリウス様。オッズ様の説得に、ひどく骨を折られましたでしょう?」
「それも、そうか…ううむ。仕方がない。でも、これ以上太らせちゃ駄目だからね」
「…はい。承知致しました。」
どうしてまともなことを言っているアイザックさんが怒られているみたいな構図になっているのか大変不可解だ。
そんな訳で俺の食事は相変わらず高カロリー食だ。
そんな俺の食事を見たベリルの感想がこちら。
「……うわ、家畜の餌?」
違います。
トト豆のパテです。
列記とした食べ物にそんなこと言うものじゃありません。