部屋を出よう2
今回は短いです。
牢屋を出て階段を上ると武器庫のような部屋だった。
ほこりを被った全身装甲や打撲用の長剣がたくさん並べられている。けれどどれも最近使った形跡がない。
そこから更に階段を上って、サドさんが木の天井を上に押し上げると、赤と金が派手な立派な部屋に出た。
暖炉の目の前の隠し階段らしい。
普段は絨毯で隠しているようだ。
見慣れない煌びやかな場所だからか、どうにも居心地の悪さが気になって足元から違和感が這い上がってきた。
そわそわして足を重ねて床につく面積を減らそうと試みた。
「ここは応接間だよ」
いや、応接間の下になんてもの作ったのこの人。
「ぼくの祖先がね、ここに捕虜の友達とか親とかを呼んで接待したらしいよ。まさか、足の下に自分らが血眼になって探している人がいるなんて、夢にも思わなかっただろうね。我が先祖ながら、いい趣味してるよ」
サドさんの先祖らしいサディストですね。
人の心の踏みにじり方をよくご存知でいらっしゃる。
「君は先に風呂に入ろうか。すごい匂うよ。まあ三年分の汚れが積もっているだろうからね。一回の入浴で落ちるかな?」
「……は?」
「風呂…嫌い?」
さんねん?
さんねんぶんのよごれ……ってえええええええええええええええええええ!?
「風呂嫌いなの?」
「……え…あ……いや…」
ああ、ぼくが無理やり入れたいなとか何とか言っているサドの言葉なんて耳に入らない。
嘘でしょ嘘でしょ嘘でしょ嘘でしょ!?
三年も経ってるの!?
いつ!?
いつそんな経ったの!?
「ようやくだよ。君を手に入れるのに三年もかかってしまった。特にあのオッズを誤魔化すのがなあ…でも、苦労するのは嫌いじゃないよ。その分愛着がわくからね。」
サドさんの笑顔が今回ばかりはどうしたことか、縋りたいような殴りたいような安心するような変わりないものに思えた。
浦島太郎の気持ちのほんのひと欠片がわかった気がする十歳の今日です。