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薄暗い部屋

目を開けると薄暗い部屋にいた。

とりあえず瞬きを繰り返す。

ぼんやりする頭が働かないのだが、どうやら二度目のアレである。

目が覚めたら訳分からない場所で訳分からないことになっているという、アレだ。

俺は確か、湯船で潰されて、騎士二人にさらわれて、変なおっさんに体見せろとか言われて、注射ぶすり、から記憶がない。

ここはどこだ。なんでこんなことになっているんだろう。


「お目覚めか」


知らない男が二人、目の前に立って…いや、両方見たことがある。前に懐中時計を売りに行った先で店まで案内してくれた男と、道で声を掛けてきたあのけーさつだ。

短い髪の毛でへらりとしている優男、という感じを受ける以外、薄暗くてよく見えない。



…というのはまあ置いておいて。



何故俺は鎖で両腕吊るされてるんだ?

てか、ここどう見ても…そういう(・・・・)プレイを楽しむために奴隷とか繋げておく部屋だよな。


石造りの壁の一面にだけ明り取りと換気のための細長い隙間が作られていて、鎖付きの枷がいろいろなところにぶら下がっている。足につけるものもあるらしい。目の前は鉄格子がはめられていて牢屋のようだ。


「お前、普段は無難に過ごしていたようだが。言え。誰の命令だった」


優男のように見えた、意外に口の悪い男が同じ顔のまま毒を吐く。優男が毒を吐くと、その顔とのギャップも相まってより恐ろしい。


「…なんの、はなし?」

「白々しいね。とぼけないでよ。シーザーの懐中時計を持ってたくせに。大型取引だから横取りしようとする組織も多い。抗争の火種になるんだよ。内部の治安が悪化するのはこっちとしても困るんだ。それに、抗争に乗じて重要参考人が始末されてしまう。」

「…そう。」

「君の属している組織、もしくは協力しているところがあるなら言え。これはお願いではない。立場を弁えるんだな。」


そんなこと言われても、なんの話しかちっともわからない。懐中時計はお金が欲しくてやったことだ。お金と、ちょっとした遊びのつもりだった。

ここは刺激が少なくて気が触れそうに退屈なのだ。


「…べつに。お金がほしくて、やっただけ」

「……」

「…スリ、とくい」

「シーザーが貧民街にいたと?冗談だろう」

「…と、いうより、大通りだから、人はいっぱいいた」

「あいつが貧民街にいく理由はなんだ…?それとも外か?」


少し考える素振りを見せる優男。

顎に手を当てて少し視線を下げる。


「他には?」

「…ほか?」

「お前、どう見たってカタギじゃないだろう。どこの殺し屋だって顔してる」


優男は和やかな顔のまま、どこから取り出したのか手のひらくらいの短剣を手にして、軽く振り上げた。

俺は目で追う。

短剣は顔の横に下ろされて硬い音をたてた。


「…すごいな。その歳でここまで訓練されているのか。見習いたいもんだ。」


男が抜き取った短剣には、どうやら俺のものらしい血がついていた。

刺されたのか?気が付かなかった。

骨に響かなかったということは多分位置から言って耳だろう。


「ふむ。これはどうだ?」


男が、今度は右手のひらを指し貫いた。

今度は少し衝撃がある。骨にあたるとごつりと体の中で音が鳴る。


「…眉ひとつ動かさないとは…」


優男じゃない方、真面目そうな男が顔をしかめる。驚いているのか、はたまた気味悪がっているのか。両方かもしれない。

反対に、優男の方はなぜだか笑みを深めて楽しそうにしている。


「お前みたいな気概のある奴、しばらく見てなかったからな。楽しみだ。」


悪い優男がにたりと笑って、


「お前なら、すぐには壊れないよね」


とか、耐久性に優れた製品みたいな言い方をされて不気味だなあとぼんやりしていると、優男さんがその顔にお似合いの優しいお兄ちゃんみたいな顔で微笑んだ。

無邪気な顔、怖すぎる。


ついでに、あの。

わかる人いたら、何がどうなっているのか教えてください。あ、無理ですか。

とりあえず寝よう。寝て忘れよう。

俺は目を閉じて知らんぷりを貫くことにした。

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