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大浴場に行こう4

入口と脱衣場は衝立ついたてで仕切られていた。籐かごのような材質の、何かのつるを編んで作られているらしいそれは、つやつやと光って少しのほつれもない。


つくづく、貧民街の連中が来るところじゃないな、なんて思う。


脱衣場には一人ひとりの服を入れる入れ物がコの字型に並べられていて、それらはどうやらふぁんふぁんと空気が掻き回される音を発しながら稼働する機械らしい。二段ある棚に並べられる程度には小さいのだが、そこから服を取り出して着ている人がいるので乾燥機か何かだろうかと見当をつけた。


「空いてないな…だからこの時期にくるの嫌なんだよ」


ギルが舌打ちをして、とりあえずと言った感じで見回すが空きはない。

俺はやっぱりここが怖くて、ギルにくっついてギルが見ているところをなぞって同じように見回す。

ギルの服、いい匂いがする……。


はっ


俺は変態か。


にしても、ギルの服はしっかりしていて清潔感がある。なまじギルは生育が良くてしっかりした体つきをしているし、ブサイクではない。

もしかしたら、女子にはモテるのかもしれない。

ギルがここと決めたらしいところへ向かうので俺もトコトコついて行った。


「この箱に服入れろ」


服を脱ぎながら、例の箱を顎で指してギルが言う。


「これ、なに」

「これは服を洗う装置だよ。知らねぇの?ああ、知らねぇか。お前んちビンボーだったな」


いちいち癪に障る奴だ。

特に返事もせずに上着に手をかける。

俺は襟元が伸びるのが嫌なたちなのでがばっと捲りあげるのが常なのだが、ついと捲った時に妙なものを見て慌てて下ろした。



……肌って紫色になることってあったっけ。



俺が今身につけているのは麻の服で染色はされてない。クリーム色のシンプルなTシャツに同じ生地のハーフパンツという出で立ち。

試しにズボンの中を覗いて見たらそこも紫の斑模様になっている。

キャロルとかイヴ姉が言っていた「前」とやらに何かがあるのだろうか。

もしかすると、その時に色移りするような服を着て、そのまま風呂に入らないでいたせいで落ちなくなってしまった……とか?


服の裾に手をかけて動かない俺をギルが睨む。


「おい。何してんだよ、早く脱げって」


ギルを見上げると、予想通りと言うかそれ以上に、綺麗に引き締まって健康的な肢体を見せつけられて尚更恥ずかしい。

俺、肋骨あばらぼね浮いてるし。

何か変なシミ着いてるし。


「……笑うなよ」

「は?何がだよ」


ギルのことだから一応、あらかじめ言っておく。多分笑うんだろうけど。

服脱いでも服着てんじゃーん!

とか言いそう。


俺は意を決して上着を脱いだ。


ギルは沈黙している。

どころか何の反応もない。

ちらりと伺うといつものように俺を見て突っ立っていたので、別に驚くべきことじゃなかったのかと、さっき言いおいた自分が恥ずかしくなった。

全部脱ぐと、紫色の肌がつなぎのようで恥ずかしい。混雑していて人に隠れられるのがせめてもの救い、と言ったところか。

ギルと同じ装置に服一式を放り込んでギルを見上げる。


「できた」

「……」

「ギル」

「…あ、おお。行くか。」


ギルがぼんやりしているなんて珍しい。

考え事をする脳が詰まっているとは思えないけど。


さすがにギルの腕を掴むのは気が引けたので隣を歩いていると案の定、ギルは俺をちらちらちらちら見ては目を逸らす。

何だよ、うっとうしい。

俺はギルを無視して、目の前の男たちの尻にぶつからないように前を見ていた。

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