少女の名はキャロル
ウィリアムのジジイのところでお腹は膨れたので、お腹がいっぱいって幸せだなぁと浸っていたら、少女にガン見された。
え、なんかごめんなさい。だらしないところ見せて。常識外れだったのかな。
「レイヴンちゃん、今日は何だか生き生きしてるね」
「……生き生き?」
「そう、そういうところ。レイヴンちゃんは今まで一度も反応してくれたこと無かったでしょう?」
オイオイ、嘘だろ。
前の話があるのか。
「レイヴンちゃんが話せるなんて思わなかったの。イヴからそんな話も聞かなかったし」
「イヴ?」
「お姉ちゃんよ、レイヴンちゃんの。」
「…あんたは、何て言うんだ」
「やだ、知らなかったのか。私はキャロルよ。お隣で働いてるメイド。」
「イヴ…キャロル…」
俺は少女二人の名前を手に入れた!
口の中で何回か言ってみるとすぐに馴染んだ。イヴとキャロル。よし、覚えておこう。
「レイヴンちゃん…なんだか、よかったね。」
突然、キャロルが笑った。
意味がわからず、何の返事も返せずに見つめ返していたら、キャロルがぐしぐしと髪の毛を爆発させた。
突然の暴挙にしかし、悪い気はしない。
されるがままになっていたら、キャロルが何だか手が止まらなくなっちゃってと長々と撫で回したことを詫びてきた。
俺の髪の毛の安否については不明だ。
「よし、帰ろうか」
「…うん」
ジジイに皿を返して(「ごちそうさま」と言ったら目をむかれた)、キャロルと手を繋いで家に帰った。