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ご飯を食べよう

隣の家を出て少女が向かったのは、井戸広場を横切った向こう側だった。

てっきり家に帰るのだとばかり思っていた俺は驚いた。

手を引かれるままについて行くと、少女キャラは食べ物のいい匂いが漂う、民家というには騒がしい建物の前で足を止めた。

俺の近所の家より立派な建物だ。

平屋だが、木の壁を足元の石を削った基礎が支え、ちゃんとした引き戸もついて、俺の家みたいな、外装ばかりが派手なハリボテとは違う、質素な外観ながらもしっかりした作りを感じさせる。


少女キャラは引き戸を開いて中へ入った。俺も後に続いて入る。


入ってびっくり。

ここ、居酒屋じゃん。

仕事終わりに一杯やる感じ?

そんなキャラだったの?

人は見た目によらないって言うけど、俺の思い込みだったとしても、このギャップは裏切りレベルじゃない?

子ども連れて入らないで欲しかったな、ぐすん。


俺が勝手に思い込んで事実に打ちのめされて沈んでいると、少女キャラはカウンターの中のオヤジに「いつものお願い」と言い、オヤジも心得たとばかりにすぐに支度を始めた。


しかも常連かよちくしょー。


と、思っていたのもつかの間。

少女キャラは俺を連れて店を出る。

店を出て、薄暗い裏口に回る。

何が何だかわからないままに少女キャラのそばで立ち尽くしていると、裏口のドアがそっと開いて、料理の盛られた皿が、店主の筋っぽい腕で突き出された。


「わあ!いつもありがとうリリおじさん!今日は一段と豪華だね!」


その料理を少女キャラはなんの躊躇いもなく受け取って、それどころかとても喜んでいる模様。

もしかしなくても、これは俺たちのということらしい。


「俺、金ない」


少女キャラに言って丁重にお断りしようとしたら、オヤジが拳骨を落とした。

痛くないけど、圧はかかるんだからね!

尻餅をついた俺の腹が悲しく鳴る。

何故、何故今なんだ。

俺は自分の腹を呪った。


少女キャラがけらけら楽しそうに笑って俺に手を差し伸べる。

うおお、まじで天使!


「リリおじさんの好意よ。残り物だから安心して」


少女キャラは俺の拳骨を落とされた頭を優しく撫でてくれる。

今朝姉キャラも同じようなことを言っていた。残り物を分け合うのがここの習慣なのかもしれない。

俺はありがたく、その料理をいただくことにした。

それにしても。


「…リリ?」


どう見ても、このオヤジそんな名前じゃないだろう。

俺の疑問が伝わったらしい。


「ウィリアムだ。リリって呼んだらはっ倒す」


オヤジが不機嫌な低い声でそう言った。

姉キャラでもなく、少女キャラでもなく、一番初めにゲットした名前は近所の居酒屋のオヤジの名前でした。


「いいじゃない、リリ!可愛らしいでしょう?」


なるほど、どこからもじったのかわからない愛称は少女キャラが付けたらしい。

可愛いい娘は許すけど野郎は許さないというわけだなるほど了解。


俺は絶対リリとは呼ばないようにしよう。

いや、呼びたくない。


オヤジのくれた肉料理は、食べている感覚はあるものの味に関してはチーズと大差なく、あまり感じられなかった。食感にはこだわっても味覚まで再現するのは難しかったのか詰めが甘いのか。


このゲーム、リアルなようでいて仮想感がところどころのぞいている。

技術がちぐはぐというか、それはできてこれは出来んのかいみたいなのが多々ある。


せめて、味覚は楽しめる設定にしてくれと料理をぱくつきながら思うのだった。

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