EPISODE 1 - 5
「「アトラス」から?」
大きく分けて、仕事の受注方法は二通りあって、
一つはアトラスの仕事斡旋状にある掲示板を見て
自分のレベルにあった、仕事を受注する方法。
メリットは、自分にあった仕事を選べるので、危険が少ないこと。
デメリットは、支払額が少ない事と、良い仕事ほど誰かに取られやすい事だな。
二つ目は、アトラスから直接仕事が回されることで、
こっちらは、主に上位30名の中から選ばれる。
メリットは、成功報酬が多いこと。
デメリットは、厄介ごとが多いこと。
「それは、また………。面倒くさそうだな」
「まったくな………」
アトラスからの直接依頼なので、断れるに断れないのが
更にめんどくさいことこの上ない………。
ため息とともに、そう呟くとカイトの奴も同意してきた。
「まぁ何はともあれ、こんなご時世だ………。
仕事があるだけ、ありがたいと思わないとな」
「そうだな」
色々な思いを紅茶と一緒に飲み込む。
「兄さん、今回はどれくらいで帰ってこれそうですか?」
様子を見ていたルリが、今回の予定を尋ねてきた。
「そうだな………。今回はちょっと長いかもしれないな」
「そう……。ですか………」
「ごめんな、ルリちゃん。
でも、仕事の内容次第では、早く帰ってこれるからさ!」
「はい………」
明らかに、肩を落とすリル。
「よし!今回の仕事が終わったら、久しぶりに買い物に行くか!!」
「え!?」
殊更明るく言うと、ルリが驚いたように顔を上げる。
「何処に買い物に行くかな………」
何処に行こうか吟味していると、
ふっと、ルリの格好に目が映る。
「そう言えば、ルリは似たような恰好ばかりだな?」
「あ!その……。何と……、言いますか………」
ワタワタしながらも、その声は段々小さくなっていく。
「服は……、その………。これ以外ないですね………」
「え?!女性ものの服ってそんなに高かったのか!!」
ルリの発言に、驚いてるとカイトに頭をはたかれる。
「痛てぇな!何すんだこの野郎!!」
「バカか、お前は!!」
掴みかかろうとしたら、逆に掴み掛かられる。
「お前が今喰ってる、クッキーもそうだが、
普段食べてる料理の材料費は、
何処から出てると思ってるんだ!!」
「!?」
言われてみれば、そうだ………。
生活費の他に、お小遣いを渡しているのだが………。
ヒスイは、欲しい物があれば、それで遣り繰りしていたから
てっきりルリも、そうしてると思っていた………。
いや………。
ある意味、ルリも遣り繰りはしていた。
ヒスイ見たいに「自分の為」ではなく。
「皆の為」と言う、意味では………。
ルリにも欲しい物の一つや二つあっただろう………。
だけど、それらを我慢してまで、俺やヒスイの為に
美味い物を作っていてくれたんだな………。
「ごめんな、ルリ。全然気づけなくて………」
「いえ!そんな………。私がしたくてしてるんで」
優しい笑みを浮かべながら、更に付け加える。
「それに、兄さんやヒー君が「美味しい」って
言ってくれるのは、本当に嬉しんですよ」
「ルリちゃん………。良い女になったな」
カイトがルリの言葉に、若干涙ぐみながら
俺を掴んでた手を放す。
「よし!決めた!!」
「?」
ルリの方に近づきながら、その肩に手を乗せ宣言する。
「今回の仕事が終わったら、ルリの欲しい物を買いに行くか!!」
「え!?でも………。そんな悪いですよ!!」
「遠慮するな!これは、普段家のことをしてくれる
ルリへのご褒美なんだからな!!」
「ありがとうございます………。兄さん………」
「兄貴?俺の分は??」
「お前は黙ってろ」
横でヒスイが何か言ってたが、カイトに羽交い絞めにされて
ズルズル後ろに引きずられているのが、シュールすぎるな。
「アキト!そろそろ時間だ!!」
「あぁ!行くか!!」
カイトに返事を返し、ルリから離れる。
「じゃ、行ってくる!」
「気を付けてくださいね!兄さん!!」
「ちゃんと帰ってこいよ!兄貴!!」
カイトと一緒に、アトラス本社に向けて歩き出すと、
後ろから、二人の声が聞こえてきたので、手を上げて応える。
「今回は、どんだけ、やばい内容なんだろうな?」
「関係ないさ!いつも通り、きっちりこなして、無事に帰ってくるだけさ!!」
「そうだな」
道すがら、カイトと話しながら、今回の依頼が完了した後のことを考える。
ルリに、どんな服を買ってやろうとか………。
序にヒスイにも、新しい装備を揃えてやろうとか………。
まさか………。
この依頼を切っ掛けに、色々な出来事が巻き起こるなど………。
知るはずも無く、俺たちはアトラス本社に向かう………。
初めて小説っぽい物を執筆させていただいております。
色々と手さぐりでやらせて頂いておりますので
至らぬ所も多々あると思いますが、よろしくお願いいたします。